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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第94回・コロナ自粛はいつまで続くか

独立ノウハウ・お役立ち

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

これを書いている2021年2月5日の時点では、政府による緊急事態宣言が10都府県で発令中です。新型コロナウイルスによる自粛が続き、厳しい状況下で踏ん張っている読者の方も多いと思います。さて、ここで戦略思考トレーニングです。戦略思考的発想で考えてみると、ズバリ、新型コロナウイルスによるこのような状況は大体いつ頃まで続くと予測できるでしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

振り返ってみると、2020年は新型コロナウイルスに振り回された大変な年でした。一年を通じて経済も低調で、その結果、苦しい思いをした方も多かったでしょう。そして今年(2021年)に入っても引き続き、我々は新型コロナウイルスによっていろいろなものを制限され、自粛を余儀なくされています。

現在、10都府県で引き続き緊急事態宣言が発令中ですが、それが解除されたとしてもお店にはすぐに客足は戻らず、昨年と同じ状況がダラダラと続くのではないか…そんなふうに思っているかもしれません。

このあたりの話は、皆さんのビジネスに直結する非常に大事な話ですから、今回は「戦略思考」でもう少ししっかりと予測してみたいと思います。

それでは解説します!

今回のクイズは、新型コロナウイルスによる自粛で続く今の閉塞状況は一体いつになったら終わるのか、を考えるものです。

これを、右脳と左脳をフル回転させて「戦略思考」で考えていきましょう。

1つ目は、季節的な視点です。新型コロナウイルスは風邪と類似したウイルスであり、冬の寒い時期は感染しやすいが、暖かくなってくると感染が減る傾向にあることが既に分かっています。ですから、まずはざっくりと「暖かくなる頃」という予測ができます。

ウイルスの特性の話は、昨年の経験からも明らかで、昨年発令した緊急事態宣言が5月に入って段階的に解除されたことからもはっきりしています。暖かくなると感染者が減り、重症者や死亡者の数も減ってくる。これはいわば自然の摂理とも言えそうです。

2つ目は、ワクチンも含めた医療的な視点です。暖かくなって感染者数が減ってきたところに、ワクチンが登場する流れができるとどうなるでしょうか。かなりの数の人が心理的に安心できる環境が整うはずです。これが、2020年の夏との一番大きな違いになるでしょう。

そして3つ目が、ワクチンも含めた話で、社会として「集団免疫」ができあがってくることです。集団免疫とは、集団の中に免疫を持つ人が多くなると、免疫を持たない人に対する保護効果が生まれて感染の連鎖が断ち切られる可能性が高くなることです。

我々が新型コロナウイルスと対峙して1年半近く経ちますが、過去のパンデミックのケースを見ると、3年目は劇的に被害が少なくなる傾向にあります。集団免疫の話と歴史的な裏付けから、次の冬、すなわち今年から来年にかけての寒い時期は新型コロナウイルスによる死者数は劇的に少なくなることが予測できます。

これらを踏まえると、目安として考えられるのは「5月」ないしは「6月」です。ズバリ、このコロナ禍はあと数カ月で終わります。

いつものクイズに比べて今回はかなり真面目に戦略思考の話をしてきましたが、目の前の情報や歴史的な事実・経験を踏まえると、これが答えだと考えられます。

となると、実は今が最後の「頑張りどころ」とも言えます。「いつまで続くのか、終わりが見えない」という閉塞した状況下では何かと絶望的に考えがちですが、あと少しの辛抱です。

緊急事態宣言を解除に導く「2つの数字」とは?

さて、せっかくですから足元の緊急事態宣言がいつまで続くのかについても、戦略思考で考えてみましょう。ここでは東京を例に説明してみます。今のところは3月7日までの延長が発表されていますが、そこで解除にならなかった場合はどうなるかということです。

これについては、見ておくべきは「2つの数字」だけです。

1つ目は「実効再生産数」です。

これは1人の感染者が平均して何人に直接感染させるかを表した数字です。今年の1月頭に東京都で感染者数が2500人を超えた頃は、この数字は1.5程度まで跳ね上がっていました。つまり、1人が感染するとその人が1.5人に増やすということですから、感染者数はどんどん増えていきます。

この数字が1を切れば、単純計算で感染者数は減っていくことになります。昨年、緊急事態宣言が解除された頃は0.54でした。これを踏まえて、多くの専門家が「0.6程度」という数字を1つの目安にするのがいいと言っています。

2つ目が、人との接触率を表す数字で、分かりやすいのが「外出率」です。

参考にできるのが、Googleが定期的に発表している、地域・場所ごとの移動する人の変化をまとめた「コミュニティモビリティレポート」です。

私が注目しているのが、「東京都」における「職場」まで出勤している人の数の変動値です。1月末時点で、新型コロナウイルス拡大前の基準値と比べてマイナス29%、つまり3割ほど減っていました。昨年の緊急事態宣言が解除された時にこの数字がどのくらいだったかというと「マイナス43%」でした。

ですから、「実効再生産数 0.6」「東京都の職場への外出率 マイナス43%」という2つの数字の達成が見えてきたら、そこから解除まで2週間程度というのが現実的なところかもしれません。そうなった時に、事業についてのいろいろな判断を少しずつしていけば良いのではないでしょうか。

今年の春まで何とか頑張りきろう!

残念なことに、コロナ禍が落ち着いたとしても、魔法のようにきれいに元に戻るわけではありません。経済が戻るのにはどうしても時間がかかります。これは次の機会に取り上げようと思いますが、業界ごとにタイムラグが生じ、すぐには好転しない場合もあります。

ただ、少しでも先の状況が読めるようになってくれば、先回りして事業の計画を立てることもできるようになります。今回はあくまで戦略思考に基づいた私の予測ではありますが、少なくとも今年の春までなんとか頑張りきれば、今の状況は劇的に変わるかもしれないということを想定してみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「5月または6月」でした。いろいろな数字や事実(ファクト)をもとに、柔軟な発想で物事を考える「戦略思考」をトレーニングで鍛えて、皆さんのビジネスで生かしてくださいね。

構成:志村 江

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PROFILE
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

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