2023年(令和5年)10月1日から導入された「インボイス制度」は、消費税の納税・申告に関係する制度です。結論から言うと、所得税に関係する青色申告に対して、インボイス制度が直接的な影響を与えることはありません。
とはいえ個人事業主は「インボイスに対応する?しない?」という選択を迫られ、今後の事業方針や取引先との関係にも影響してくるでしょう。そこで本記事では、インボイス制度と青色申告の基礎知識から、個人事業主としてのインボイス制度に対する具体的な対応策までを徹底解説していきます。
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上場企業の経理や事業管理として、10年以上業務に従事しながら税理士資格取得を目指す。2022年に税理士資格を取得し、2023年税理士登録をおこない、4月に独立開業をする。税理士業務もさることながら、企業での業務改善や学生に対する租税教室など、幅広く業務に携わっている。
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個人事業主が知るべきインボイス制度と青色申告の基礎知識
「インボイス制度」とは、インボイス(適格請求書)を用いることで消費税の控除を適正化する仕組みです。事業者間の取引において、消費税率・消費税額を正しく計算することを目的に2023年(令和5年)10月1日から導入されました。
一方で、個人事業主にとって重要な「青色申告」は、所得税にかかわる税務処理を効率化させ、所得税緩和のメリットを受けるための制度です。インボイス制度と青色申告は、どちらも適切に対応することにより、経営を安定化させる鍵となります。
次の項目から、インボイス制度と青色申告、それぞれのポイントを詳しく解説していきましょう。
インボイス制度とは?個人事業主が押さえるべきポイント
まずはインボイス制度について、具体的な要件や登録のタイミングなど、個人事業主として押さえるべきポイントを解説していきます。
インボイス制度の基本情報と適格請求書の要件
インボイス制度の正式名称は「適格請求書等保存方式」です。8%と10%の消費税率が混在している中で、それぞれの税率と税額を明示し、事業者が正しく消費税を納めることを目的としています。
インボイス制度を利用するためには、インボイス(適格請求書)を発行する事業者として「適格請求書発行事業者」に登録をしなければなりません。登録は税務署への申請で行うことができ、登録番号が発行されます。
実際に発行するインボイス(適格請求書)には、以下の情報が記載されている必要があります。
インボイス(適格請求書)の様式には決まりがないため、どのようなフォーマットでも構いません。請求書・納品書・領収書など、どの名称の書類であっても、上記した情報が記載されていれば、インボイス(適格請求書)として認められます。

記載事項に漏れがないよう、取引先にインボイスを発行する前に必ず確認をおこなうようにしましょう。
インボイス制度が個人事業主に与える影響
では、インボイス制度の導入により、個人事業主にはどのような影響があるのでしょうか?以下で、具体的な影響をチェックしていきましょう。
免税事業者の不利な立場
インボイス制度の導入により、マイナスの影響を強く受けるのは、年間売上が1,000万円以下の免税事業者です。フリーランスやクリエイターなど個人事業主の多くが、免税事業者に当てはまるでしょう。
従来は「免税事業者」の名称どおり、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の場合は消費税の納税義務が免除されていましたが、適格請求書発行事業者として登録するためには「課税事業者」にならなければいけません。
「そもそもインボイスに登録しなければ今までどおりでは?」と思う個人事業主も多いかもしれません。しかし、免税事業者のままではインボイス(適格請求書)を発行できず、取引先が仕入税控除を受けられなくなります。
その結果として、取引先が課税事業者を優先する可能性が高まり、インボイスに登録しなければ取引の継続が出来なくなるリスクが出てくるのです。
課税事業者としての登録選択
前述のとおり、適格請求書を発行出来るのは、課税事業者のみです。これまで免税事業者だった個人事業主の多くが、「インボイスに登録するかどうか」すなわち「課税事業者になるかどうか」の選択を迫られます。
課税事業者になりインボイスに登録すると、消費税を納める義務が生じ、税負担が増える可能性があります。しかし、インボイス(適格請求書)を発行が出来れば、取引先が仕入税額控除を受けられるため、現状の取引継続にマイナスの影響を与えずに済むでしょう。課税事業者になるべきかどうかの判断は、取引先の状況や事業規模に大きく依存します。
インボイス制度対応の注意点
個人事業主がインボイス制度に対応する際には、以下の点に注意する必要があります。
登録のタイミング
インボイス発行事業者の登録は任意です。しかし、取引先との関係性を考慮し、早めの登録を検討したり、期限に応じた登録が必要となったりするケースが考えられます。取引先から「〇月分よりインボイスの登録をお願いします」と打診されることも多く、登録しないままでは取引機会を失う、あるいは取引金額を消費税分減額されるなどの可能性もあるため、登録期限を守ることが重要です。
業務負担の増加への対応
インボイス制度に対応した適格請求書の発行や保管など、業務負担を増加させる可能性があります。青色申告における帳簿作成とあわせて、クラウド会計ソフトや税理士のサポートを活用することで効率化を図りましょう。インボイス制度は個人事業主に大きな変化をもたらしますが、適切な対応を取ることでリスクを最小化し、事業者間の取引を円滑に進めることが出来るでしょう。
次からは、青色申告についての詳しい解説と、そのメリットについてお伝えしていきます。
青色申告とは?個人事業主向けに解説
所得税の確定申告には「青色申告」と「白色申告」があり、個人事業主はどちらかを選ぶことが出来ます。手続きが簡単な方法は白色申告ですが、「青色申告にした方がメリットが多い」と聞くことも多いですよね。まずは青色申告の概要について、どんなメリットがあるのかを具体的に知っていきましょう。
青色申告と白色申告の違い
青色申告が10万円または65万円(一定の場合は、55万円。以下同じ)の特別控除など税務上の特典を受けられる制度であるのに対し、白色申告に特典はほとんどありません。具体的には以下のような違いがあります。
税務署への申請
青色申告を行うには、事前に税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。基本的には、事業を開始してから2ヶ月以内(または青色申告を開始したい年度の3月15日まで)の申請書提出が必要です。白色申告には、特別必要な手続きはありません。
控除額の違い
青色申告では、10万円または65万円(55万円)の特別控除を受けることが出来ます。単式簿記による帳簿の場合には10万円、複式簿記による記帳の場合には65万円(55万円)となります。一方、白色申告では控除はありません。
赤字を翌年以降に繰越で控除を受けられる
青色申告では、赤字を最長3年間繰り越して翌年以降の所得から差し引くことが出来ます。白色申告の場合には、変動所得や被災事業用資金の損失に限り赤字繰越が認められていますが、その他の赤字については繰越できません。

開業時など多額の経費がかかり赤字となる場合、翌年以降に赤字を繰越することができるため、大きなメリットとなります。
帳簿作成の義務
青色申告では、複式簿記に基づいた帳簿作成とその保存が必要です。これに対し、白色申告では単式簿記が認められており、管理は比較的簡易です。業務上の手間自体は増えるため、青色申告のデメリットと捉えられがちですが、帳簿の正確性が増すことで、金融機関からの融資審査などでも評価が高まります。
インボイス制度と青色申告の直接的な関係はない
青色申告は、所得税の申告方法です。一方、インボイス制度は、消費税額・消費税率を正しく計算するための仕組みです。これまで免税事業者だった個人事業主がインボイス制度に登録するためには、課税事業者となる必要があります。その点において、「消費税の確定申告が必要になる」という影響は受けるでしょう。しかし青色申告とインボイス制度は、直接的なかかわりを持ちません。
とはいえインボイス制度では、適格請求書の保存が求められ、これを適切に処理するためには、帳簿の整備が欠かせません。青色申告は正式な簿記による記帳が必要となるため、一般的には複式簿記を用います。この複式簿記と、インボイス制度で求められる取引内容の詳細な記録は相性が良く、帳簿作成の整合性を取れるようになる・必要な情報をスムーズに揃えられることがメリットです。
個人事業主が青色申告を選ぶべき理由
個人事業主にとってのインボイス制度導入は、これまで以上に帳簿や請求書の保存が重要になるという変化もあります。青色申告は、それらの要件を満たす仕組みがすでに整っており、特別控除のメリットもあることから、個人事業主には有利な選択と言えるでしょう。適格請求書発行事業者として登録し、インボイス制度に対応する場合も、青色申告を利用すれば税務管理の一貫性が保たれます。
課税事業者・免税事業者、個人事業主がどちらかを選択するときのポイント
免税事業者となっている個人事業主が、インボイス制度を受けて「課税事業者になるべきかどうか」で迷うケースは少なくありません。課税事業者になるかどうかの見極めポイントを押さえていきましょう。
取引先に課税事業者が多いなら登録した方が円滑
課税事業者または免税事業者の選択は任意ですが、取引先に課税事業者が多い場合には、インボイス対応を求められるケースも増えます。免税事業者のままでは、個人事業主にとって取引が不利になるリスクがあるため、早めの登録を行い、取引を円滑に進めることも重要です。
すでに課税事業者である個人事業主は、インボイス登録を行うのが一般的です。しかし、インボイス登録自体も任意のため、未登録のまま事業を継続しても、法律違反とはなりません。
この場合において重要なポイントは、インボイス登録のタイミングです。課税期間の開始日前に登録を済ませると、その時点から課税事業者としての義務が発生します。

個人の消費税の課税期間は1月1日から12月31日ですが、年の途中でインボイス登録をした場合、登録日から12月31日までが課税期間となります。
免税事業者同士の取引なら現状のままでも問題はない
取引先(買手側)が一般消費者で免税事業者同士となる場合には、そもそも取引先からインボイスを求められることもありません。そのため個人事業主の免税事業者として、インボイスに対応しなくても大きな影響はないでしょう。
ただし、将来的に取引先が課税事業者となる可能性や、今後の主要な取引先に課税事業者が加わる可能性については、考えておくべきポイントです。今すぐの変更や登録は必要なくても、事業環境の変化に対応できる知識は付けておきましょう。
インボイス(適格請求書発行事業者)に登録した個人事業主がやるべき2つのポイント
では、インボイスに登録し「適格請求書発行事業者」となった個人事業主が、確認しておくべきことはなんでしょうか?インボイス制度を正しく適切に運用していくためにも、以下2つのポイントは押さえておきましょう。
取引先の 適格請求書の確認
取引先が売手側である場合には、買手側として受け取る請求書や領収書が「適格請求書」として認められるものかどうかを確認しなければなりません。インボイス制度では、適格請求書以外の請求書では仕入税額控除が認められないため、帳簿管理に大きく影響します。今後新たに取引を開始するのであれば、インボイスに登録しているかどうか、あるいは登録可能かどうかの確認も必要となるでしょう。
負担軽減の経過措置
制度導入に伴い、課税事業者の負担軽減を目的とした経過措置が設けられています。この期間中は適格請求書以外の請求書でも、一定割合で仕入税額控除を受けることが可能です。以下がそのスケジュールです。
<2023年(令和5年)10月1日~2026年(令和8年)9月30日>
仕入税額相当額の 80% を控除可能
<2026年(令和8年)10月1日~2029年(令和11年)9月30日>
仕入税額相当額の 50% を控除可能
免税事業者との取引でも完全に仕入税額控除がなくなるわけではなく、段階的に割合が変更されることになります。課税対象取引額の8割まで控除が認められるのは、2026年(令和8年)までという点に注意しましょう。
適格請求書の保存準備を整える
適格請求書は、発行側・受領側ともに一定期間保存することが法律で義務付けられています。フリーランスなどの個人事業主は単独で管理するケースも多いため、適切な保存準備を整えておきましょう。
<保存期間>
請求書の交付日または提供日の属する課税期間末日の翌日から7年間保管すること
<保管場所>
納税地、または取引を行う事務所・事業所の所在地に保管すること
電子帳簿保存法への対応
電子データでやり取りした適格請求書については、「電子帳簿保存法」に基づいて保存しなければなりません。クラウドストレージや専用の帳簿管理システムを導入し、データの保管体制を整備しておくことをおすすめします。
インボイス制度や電子帳簿保存法へ対応に伴い、保存方法の見直しをすることも一つです。「紙の請求書を正しくファイリングする」「電子請求書を分類・検索しやすいフォルダ構成」などを確認し、データのバックアップも含めて適切な管理方法を採用しましょう。
個人事業主が知っておきたいインボイス制度の2割特例
インボイス制度の導入に伴い設けられた制度のうち、個人事業主が知っておくべきは、「2割特例」です。免税事業者から課税事業者になる個人事業主にとって大きなメリットがあるため、しっかりと確認しておきましょう。
免税事業者から課税事業者への転換を支援
インボイス制度の導入に伴い、これまでの免税事業者が課税事業者になると、納税負担が重くのしかかります。その負担を軽減させるためにに出来たのが、「売上に係る消費税額」のうち2割だけを納めれば良い仕組みである「2割特例」です。

例えば税込売上が110万円の場合、消費税10万円の2割、2万円を納付すればよいということになります。
2割特例は期間限定の制度
2割特例は納税額を大幅に軽減できるため、課税事業者への移行を後押ししてくれるでしょう。ただし、2割特例は期間限定の制度です。2023年(令和5年)10月1日から2026年(令和8年)9月30日までの各課税期間に限り適用となります。個人事業主は、2割特例が適用期間終了後の税負担を見据えた事業計画を立てておくことが重要です。
なお、2割特例を適用させるために特別な手続きは不要です。消費税申告時に2割特例を利用する旨を記載すれば適用となります。

ただし、経費が多く、多額の赤字がある場合は、2割特例を使用せず、原則課税とした場合の方が還付を受けることができる可能性があります。
個人事業主がインボイス制度の対応でよく陥るミスとその回避策
個人事業主にとってのインボイス制度は、登録や特例の活用など、事業運営における細かい作業に影響を与えます。そこでここからは、個人事業主が陥りやすいいくつかのミスを紹介し、回避策も解説していきましょう。ありがちなミスを事前に把握しておくことで、効率的かつ安定した事業運営が出来るようになります。
適格請求書発行事業者への登録を忘れる
個人事業主の中には、インボイス制度があることについては知っていても、適格請求書発行事業者への登録を忘れるケースがあります。取引先が課税事業者の場合、仕入税額控除を受けられず、取引関係の悪化や契約解消のリスクがあるミスです。また、取引先が免税事業者から課税事業者に変更になった場合にも、スムーズな対応が求められるでしょう。
帳簿や請求書の管理不備
インボイスに対応した適格請求書の保存義務を怠ったり、帳簿が整備されていなかったりなどの管理不備により、税務調査で指摘を受けるケースもあります。インボイス制度では、保存が適切でないと仕入税額控除が認められない場合があるため注意が必要です。
2割特例など制度内容の誤解
前述したとおり、2割特例には利用できる条件や定められている適用期限があります。たとえば、事業年度が消費税の課税事業者である場合には2割特例は適用されません。2割特例が適用できる事業年度の確認など、条件を満たした上での申告を行いましょう。また、本来は2割特例が適用されるにもかかわらず、申告しなかったために制度を利用できないケースにも注意が必要です。

例えば、前々年の課税売上高が1,000万円を超えている場合などは、2割特例を使用することはできません。
消費税の納税資金不足
特に毎月、毎年の売上に変動が起こりやすい個人事業主の場合、消費税のための資金管理が出来ずに納付期間に間に合わないケースもあります。これまで免税事業者だった個人事業主の場合には、課税事業者になったあとの納税額が予想以上に大きくなってしまうこともあります。
個人事業主が青色申告を活用しつつインボイス制度に対応するための具体的な方法
インボイス制度への対応は、初期準備が重要です。適格請求書発行事業者への登録、帳簿管理の見直し、青色申告との連携を図ることで、制度対応をスムーズに進め、事業運営を効率化しましょう。ここからは、個人事業主が青色申告を活用しつつインボイス制度に対応するための具体的な方法を解説していきます。
適格請求書発行事業者の登録方法
インボイス制度に対応するためには、まず「適格請求書発行事業者」として登録する必要があります。
適格請求書発行事業者の登録には、e-Taxもしくは書面申請の方法があります。どちらも登録番号発行までには約1ヶ月程度かかり、記載漏れなどがあると発行が遅れてしまいます。登録は随時可能ですが、早めに手続きを進めるのが得策です。

e-Tax申請の方が書面申請よりも早く登録番号を取得することができます。急ぎの場合は、e-Tax申請をおこないましょう。
e-Tax(パソコンまたはスマートフォンで申請する場合)に必要なもの
上記2つを準備し、パソコンならe-Taxにアクセス、スマートフォンならe-Taxにマイナンバーカードでログインして手続きを進めてください。
個人事業主が書面で登録申請するときに必要なもの
「適格請求書発行事業者の登録申請書」は、税務署の窓口・国税庁のWebサイトから入手できます。申請書には、事業者名・住所・法人番号(または個人番号)・消費税の課税事業者であることなどを記入します。記入した申請書は、管轄税務署のインボイス登録センターに送付します。税務署の窓口で直接提出は出来ませんので、ご注意ください。また、個人事業主は、マイナンバーカード等本人確認書類の写しの添付も必要です。
デジタルツールの活用もおすすめ!
インボイス対応では帳簿管理が複雑化するため、クラウド会計ソフトや電子請求書発行サービスを利用すると業務負担を軽減できます。青色申告用のデータも簡単に出力可能なため、税務申告の手間を大幅に削減できます。
青色申告と組み合わせたインボイス制度対応法
青色申告とインボイス制度を組み合わせることで、税務処理の効率化と負担軽減を図ることができます。
青色申告特別控除の活用をする
インボイス制度では帳簿管理が必須ですが、青色申告で求められる複式簿記を活用すれば、特別控除を受けながらインボイス対応の要件を同時に満たすことが可能です。
税務管理の一元化をする
青色申告で使用している帳簿を基に、インボイス制度に対応するデータを一元管理することで、重複業務を削減します。
専門家の活用も検討する
税理士や会計士と連携することで、インボイス制度と青色申告を統合的に対応できます。制度対応に不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
個人事業主がインボイス制度・青色申告に対応する際によくある質問
最後に、個人事業主がインボイス制度や青色申告に対応する際によくある疑問をまとめました。
Q:個人事業主でもインボイス制度に対応しなくてもいいの?
インボイス制度への対応は任意のため、法律上の問題はありません。しかし、取引先(買手側)からの依頼が減る・減額されるなどのリスクがあります。とはいえ、免税事業者だった個人事業主がインボイス制度に対応するためには、課税事業者になる必要があります。手取り収入に影響する点には考慮が必要です。
Q:個人事業主がインボイス制度に対応した場合、確定申告は白色申告・青色申告どっちがいい?
確定申告とインボイス制度は、直接的な関係がありません。そのため白色申告にするか青色申告にするかについても、インボイス制度への対応に関係なく選択可能です。個人事業主にとっては、10万円・65万円(55万円)の控除を受けられる青色申告の方がメリットが多い選択肢です。
Q:個人事業主がインボイス登録するならタイミングはいつが最適?
登録のタイミングは、事業の性質や取引先の状況によって異なります。取引先に課税事業者が多い場合には、早めの対応が求められるため、すぐにでも申請を行った方が、取引状況にマイナスな影響が及びません。一方で、主な取引先が一般消費者や免税事業者である場合、急ぎで登録申請を進める必要はないと言えるでしょう。ただし、登録申請は課税期間開始日の15日前の日までに行う必要があることには注意してください。個人事業主の場合、課税期間は通常1月1日から始まるため、遅くとも前年の12月17日までに手続きを完了させるようにしましょう。

ただし、令和5年10月1日~令和11年9月30日までの日の属する課税期間の場合、経過措置により、年の途中からインボイス登録をすることができます。
Q:開業届を出す前にインボイス登録はできる?
開業届と消費税の納付には直接的な関係がありません。そのため、開業届を出さないまま活動している個人事業主でも、インボイス登録自体は可能です。なお、開業届は出し忘れても罰則はありませんが、原則としては事業開始から1か月以内に出すことが義務とされています。出し忘れている個人事業主の方は、早めに対応しておきましょう。
まとめ
インボイス制度と青色申告は、個人事業主にとって重要な仕組みです。それぞれの要件やメリットを正しく理解し、対応することで税務リスクを軽減し、効率的な事業運営が可能になります。
インボイス制度とは、インボイス(適格請求書)を用いることで消費税の控除を適正化する仕組みです。適格請求書発行事業者への登録や帳簿管理の徹底が求められます。
一方で青色申告は、所得税を申告するための方法です。白色申告と比べ、特別控除や経費計上の柔軟性などのメリットが多く、節税として活用することも出来るでしょう。
制度対応には事前の準備と計画が必要不可欠です。適切な手続きや管理体制を整え、安心して事業を進めていきましょう。
この記事を監修した人
監修者プロフィール
上場企業の経理や事業管理として、10年以上業務に従事しながら税理士資格取得を目指す。2022年に税理士資格を取得し、2023年税理士登録をおこない、4月に独立開業をする。税理士業務もさることながら、企業での業務改善や学生に対する租税教室など、幅広く業務に携わっている。