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事業買収に伴うリスクやリスクマネジメント方法について

事業買収に伴うリスクやリスクマネジメント方法について

事業買収はM&A(企業の買収や合併を行うこと)の手法の一つであり、買い手企業が売り手企業から事業を買い取ることを意味します。

逆に売り手企業からみると、買い手企業に事業を売却することになります。

事業買収は、事業規模や商圏の拡大、新規事業や多角化経営を推進する目的などで行われ、買い手企業にとって数々のメリットがある一方でリスクも存在します。

今回はリスクの部分にスポットライトを当て、解説しながら、リスク回避法(リスクマネジメント)について説明します。

事業買収のリスクを考慮しないと?

買い手企業は事業買収するにあたって、メリットばかりではなくリスクを洗い出す必要があります。

リスクの洗い出しは多方面から行います。

もし、リスクを考慮せずに事業買収を進めると、買収後に諸問題が発生した場合の対応や賠償問題についての締結ができないため、多額の損失を出すといったトラブルに見舞われる可能性があります。

それでは、具体的にどのような種類のリスクがあるのでしょうか。買い手側、売り手側の双方からみていきましょう。

事業買収をする際の(買い手側の)リスク

買い手企業の財務リスク

売り手企業に貸借対照表などへ計上されていない簿外債務があり、その簿外債務の存在を知らずに買収するとその分の債務を背負うことになります。

また、買収の際に、のれん代(「売り手企業の純資産額」-「売却価額」の差額)が計上される場合、会計上、のれん代は毎年減価償却することになりますが、のれん代以上の収益が出せないと利益を圧迫する要因となってしまいます。

買い手企業の経営リスク

売り手企業が労働関係の法律を遵守していないなど労務管理に問題がある場合、労使間のトラブルに発展する、隠れ債務が存在していた、という可能性もあるでしょう。

例えば、残業代の未払いがあり、買収後に従業員が会社に対して支払いを一斉に請求したら会社として応じる義務があります。

買い手企業の人材リスク

売り手側と買い手側の経営者同士の合意でM&Aを実行しても、従業員が納得していないと、買収後の待遇や雇用条件の変更に対する不満などが原因で優秀な人材が退職し、買い手企業が期待していた事業への相乗効果を生みだせないことがあります。

事業売却をする際の(売り手側の)リスク

売り手企業の財務リスク

売り手企業が事業売却前に納品した製品に対して顧客から賠償を請求された場合、原因が“製品”か“買収後のメンテナンス”かの点で買い手企業と対立し、時には売却価額を上回る賠償問題に発展する可能性があります。

また、時間が経ってから偶発債務の存在が明らかになった場合、事前に買い手企業に発生のリスクを提示していないと、事実を隠して企業を売却したとみなされ損害賠償を請求されることもあるでしょう。

売り手企業の経営リスク

従業員に対する雇用契約の未締結、残業代の未払い、有給休暇の未消化といった労務管理上の問題があることが買い手企業に発覚した場合、たとえ経営者が認識していなかったとしても、承知の上で売却を行ったと買い手企業からみなされる可能性が高いでしょう。

売り手企業の人材リスク

売り手企業の従業員が買い手企業の従業員となった場合、待遇が悪くなったり雇用が継続できなくなることも考えられます。

また、従業員から売却への理解が得られないと、社内の重要な社員や役員が退職する事態も想定されるでしょう。

買い手企業が人材の流出により買収の効果が期待できないと判断した場合、M&Aが破談となる可能性があります。

事業買収のリスクマネジメント

事業買収を成功させるには、売り手企業の正確な経営実態を把握することが大切であり、そのためにデューデリジェンスを行います。

デューデリジェンスとは、売り手企業の経営環境や事業内容などを企業分析することです。

これにより、企業経営を正確に把握できます。

デューデリジェンスの主要項目は事業・財務・税務・法務・人事・ITの6分野がありますが、すべてを均等に行う必要はなく、買い手企業と売り手企業の状況によって調査内容の比重は変わります。

デューデリジェンスは一般的に、買い手企業が公認会計士や監査法人などの専門家に依頼して行われ、調査の時期は基本合意契約が締結された後で、かつ、最終条件交渉に移る前です。

まとめ

事業買収は、メリットだけではなくリスクも十分に考慮した上で行うことが大切です。

特に、小規模会社や個人事業同士で行われるM&Aの場合、規模が小さいため会社や個人間で独自に進めてしまうこともあります。

しかし、万一トラブルになった場合、専門的知識が必要な場面があるかも知れません。

リスクヘッジのためにはあらかじめ専門家に相談し、案件を依頼することをおすすめします。

PROFILE

FP・社会保険労務士 木村政美

2004年に、行政書士・社会保険労務士・FP事務所の「きむらオフィス」を開業。2017年より、ダイヤモンドオンラインにてコラム連載を持つ。年金や個人のマネープランの相談・講習、企業向けのメンタルヘルス研修など幅広い分野で活動している。

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近藤 卓さん(45歳)

(同)ターンムファーム/大阪市都島区
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