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所得税・住民税も軽減される! 災害や盗難時に使える「雑損控除」について税理士が解説!

所得税・住民税も軽減される! 災害や盗難時に使える「雑損控除」について税理士が解説!

能登半島地震の被災者に対する、税制面や補助金等の支援策が次々に発表されております。

また今回の地震を通して、災害時における「税制面」の支援策が気になった方も多いと思います。

自宅や家財道具等の災害や盗難にあったときに税制面の支援の一つが「雑損控除」という制度です。

「雑損控除」を使うことによって、所得税・住民税の負担が軽減されます。

特に、石川地域の方は、今回の確定申告(令和5年)から前倒しで使える事が政府より発表されています。

国税庁:令和6年能登半島地震により被害を受けた方へ_雑損控除等の特例措置について

そもそも「雑損控除」は、実際どのくらい税金が軽減されるのでしょうか。

また、「雑損控除」が対象とならない方にも個人事業主向けの災害減免法に基づく減免措置も前倒しで適用される予定です。

こちらも「所得税」が減免となる可能性がある制度ですので併せて確認しておきましょう。

今回は「雑損控除」と「災害減免法に基づく減免措置」についてわかりやすく解説していきます!

雑損控除について

【雑損控除とは】

「災害」または「盗難」もしくは「横領」によって、「雑損控除の対象になる資産の要件」にあてはまる資産について損害を受けた場合等には、一定の金額の所得控除を受けることができます。

国税庁:災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)

<税理士の一言解説>
・「災害」は震災や風水害、冷害や雪害などの自然災害が含まれます。
・「詐欺」や「恐喝」は対象外です。
・「所得控除」の制度です。超過累進課税の制度下では、所得税率が高い人ほど(高所得の人ほど)所得控除による減税効果が高くなります。

超過累進課税の復習はこちらの記事を参照ください。

仕組みを知っていると所得税がお得になる? 知らないと損する税金の秘密を税理士が解説!

【雑損控除の対象になる資産の要件とは?】

損害を受けた資産が次のいずれにも当てはまること。

(1)資産の所有者が次のいずれかであること。
イ 納税者
ロ 納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額等が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)の方

(2)棚卸資産もしくは事業用固定資産等または「生活に通常必要でない資産」のいずれにも該当しない資産であること。

<◎税理士の一言解説>
・棚卸資産や事業用固定資産は対象外です。しかし、事業所得等の計算上、必要経費として算入できる可能性があります。事業を営んでいる方は、必要経費にならないかを検討してみましょう!
・「生活に通常必要でない資産」とは、貴金属、貴石、書画、骨とう等(1個又は1組の価額が30万円を超えるものに限る)等です。これらは対象外です。

【税金軽減の効果】

ステップ1 まずは「雑損控除」の金額を求めます。

「雑損控除」の金額は、次の(1)と(2)のうちいずれか多い方の金額です。

(1) (損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
(2) (災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円

(注1)「損害金額」とは、損害を受けた時の直前におけるその資産の時価を基にして計算した損害の額です。
(注2)「災害等関連支出の金額」とは、次のような支出をいいます。
① 災害により滅失した住宅、家財などを取壊しまたは除去するために支出した金額など
② 盗難や横領により損害を受けた資産の原状回復のための支出など
(注3)「保険金等の額」とは、災害などに関して受け取った保険金や損害賠償金などの金額をいいます。
保険金等の額は、まず、損害金額から差し引き、保険金等の額が損害金額を超える場合には、災害等関連支出の金額から差し引きます。
(注4)「災害関連支出の金額」とは、上記(注2)①の金額をいいます。

<◎税理士の一言解説>
・2つの計算式があり、多い方の金額を雑損控除の金額とします。
ざっくりいうと、
(1)の方法は、被害にあった家や家財の損失額と撤去費用をもとにした計算方法です。
(2)の方法は、被害にあった家の家財の撤去費用を使った計算方法です。

住宅や家財、車両の損害額の計算方法は、こちらも参考にしましょう!

国税庁:雑損控除の適用における「損失額の合理的な計算方法」

ステップ2 確定申告で「雑損控除」は「所得控除」として計算します。

東京税理士会:所得税の計算方法

「総所得金額」や「課税総所得金額」等、似たような言葉がでてくるのでわかりにくいかと思います。

所得税の計算方法は上記の表をみて整理してみましょう!

雑損控除は「所得控除額」に含まれます。

<◎税理士の一言解説>

「総所得金額」から雑損控除等の「所得控除額」を差し引きます(=課税総所得金額と言います)。

「課税総所得金額」に税率をかけると、所得税額が計算されます(納める税額はさらにそこから住宅ローン控除等の税額控除を引いたあとの金額=申告納税額)

適用される税率は、下記の表をご覧下さい(課税所得の額によって、5%~45%の7段階に区分されます)

ざっくり、税金の軽減効果を知りたい場合は、雑損控除の金額×税率で計算すると良いでしょう。

例)雑損失50万円、課税総所得金額300万円の場合(適用税率10%)
雑損失50万円×税率10%=5万円 所得税が軽減される

【申請方法:確定申告が必要!】

確定申告書に「雑損控除」に関する事項を記載する必要があります。

また確定申告の際、災害等に関連したやむを得ない支出の金額の領収証等を添付する必要があります。

必要書類はこちらをご覧ください!


国税庁:国税庁:令和6年能登半島地震により被害を受けた方へ_雑損控除等の特例措置について

【3年間(最大5年)損失が繰り越せる可能性あり】

損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後3年間(東日本大震災又は令和5年4月1日以後に発生する特定非常災害により生じた損失額については、5年間)に繰り越して、各年の所得金額から控除することができます(雑損控除は他の所得控除に先だって控除することとなっています)。

(注)「特定非常災害」とは、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第2条第1項の規定により特定非常災害として指定された非常災害をいいます。

令和6年能登半島自身による災害は「特定非常災害」に指定されたため、最大5年間繰り越せる可能性があります。
https://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/kinkyu01_000360.html

・特例(前倒し措置)について
<令和6年ではなく、令和5年分の所得計算での「雑損控除」対象可能に>

令和6年能登半島地震災害では、令和5年分の所得において、その損失の金額を「雑損控除」対象と
することができます。
<申告期限延長> ・石川県・富山県に納税地を有する方は自動的に申告期限が延長されます。 ・それ以外の地域に納税地を有する方であっても申請により、申告等の期限延長可能。

災害減免法に基づく減免措置

「災害」によって受けた住宅や家財の損害金額(保険金などにより補てんされる金額を除きます。)がその時価の2分の1以上で、かつ、災害にあった年の所得金額の合計額が1,000万円以下のときにおいて、その災害による損失額について「雑損控除」の適用を受けない場合は、災害減免法によりその年の所得税が次のように軽減されるかまたは免除されます。

国税庁:No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除

<◎税理士の一言解説>
・雑損控除との選択適用となります。
・雑損控除では、「盗難」「横領」も対象でしたが、こちらでは「災害」に限定されます。
・所得金額が1,000万円を超えるときは適用不可です。
・所得金額が500万円以下の場合には、所得税が全額免除で0円となります。

今回のまとめ

今回は、災害時等に使える所得税等の減税となる制度についてお届けしました。

①「所得税法」による雑損控除の方法、
②「災害減免法」による税金の軽減免除による方法
この2つのどちらか有利な方法を選び確定申告をすることによって、「所得税」の全部又は一部を軽減することができます!

両者の違いについては、下記の表をご覧下さい。


国税庁:雑損控除と災害減免法による軽減免除の違い

どちらが有利かは、国税庁の作成コーナーで有利な方法を自動で判定し計算できます。

また、「所得税法」による雑損控除の方法は、確定申告をすることで「住民税」においてもその内容が反映され、軽減できる場合があります。

②住民税における「災害減免法」による軽減免除等は、各市町村に確認してみましょう。
今回は「所得税」や「住民税」の減免のお話をお届けしましたが、対象の方は「固定資産税」や「事業税」等の減免制度もぜひご確認下さい。

ご自身で申告準備をされる方もいると思いますが、税理士に依頼することも検討してみて下さい。

損害額の算定等難しいなと思った方は多くいると思いますが、そんな時はプロに任せると安心です。

被害を受けた方で、確定申告で適用可能性が有りそうな方は、慌てずに準備しましょう!

文=齋藤 雄史
編集=内藤 祐介

<プロフィール>
齋藤雄史さん
税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。

高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。

合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。

ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。

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