10月1日から「インボイス制度」がスタートしました!
国税庁:インボイス特設ページ
インボイス制度のスタートを機に「消費税課税事業者」になった方は、消費税の確定申告が必要です!
今回の「所得税」の確定申告は3月15日まで、「消費税」の確定申告は4月1日です!
特にこれまで免税事業者だった方は、今回初めて消費税を納付することになります。
「消費税の納税額はいくらになるの?」「いつまで払えばいいの?」「所得税の確定申告との違いは?」「消費税の計算方式は3つあると聞くけどどれを選択すれば良い?」
今回の記事では、そんな個人事業主で初めて消費税の確定申告をする方向けに、こちらの疑問にお応えします!
「消費税」申告の基礎知識
今回の消費税課税期間は令和5年10月1日〜12月31日の3か月間!
今まで「免税事業者」だった方の中には、インボイス制度のスタートを機に(令和5年10月1日より)「インボイス発行事業者」となり、消費税の「課税事業者」となった方も多いかと思います。
その場合、今回の確定申告では、令和5年10月1日〜12月31日が課税期間となります!
※令和5年1月〜9月30日の期間は、消費税が課税されません!
その前提で下記解説を進めます!
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_kakushin.htm
「消費税」の申告期限は令和6年4月1日(月)!
「所得税」の確定申告書の提出及び納期限:令和6年3月15日(金)
消費税と所得税の提出期限等が違いますので、間違わないようにしましょう!
「所得税」の申告期限に併せて「消費税」の計算をするのがおすすめ!
「消費税」の納税額や還付金額は、「所得税」の事業所得の計算にも影響があります!
消費税の還付の金額⇒事業所得の計算上「総収入金額」に算入
そのため、「消費税」の申告期限は4月1日ですが、実務上は「所得税」の申告期限に併せて3月15日までに計算することが望ましいです!
消費税の計算方法は3つ!(原則課税・簡易課税・2割特例)
消費税の計算方法は3つあります。
それぞれの詳細は次章で解説していきます!
どの計算式で計算するか(それぞれの計算方式の適用要件は何か、自社はどの計算方式を採用するか)確認しましょう!
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm
「原則課税(本則課税・一般課税)」
・売手から受け取った消費税から、実際に支払った消費税を控除して納税額を算定する計算方式。
「簡易課税」
・売手から受け取った消費税額に一定の割合(みなし仕入率)を乗じて納税額を計算する方式。
・売手から受け取った消費税額がわかれば簡単に消費税を計算できる方式。
・基準期間(※個人事業主であるフリーランスの方は前々年)の課税売上高が5,000万円以下であれば適用可能。
・簡易課税を選択するには、事前に税務署へ届出が必要です。
「2割特例」
・売手から受け取った消費税額に一定の割合(売上税額の8割)を乗じて納税額を計算する方式。
・簡易課税と計算方式が似ていて、売手からの受け取った消費税額がわかれば簡単に消費税を計算可能。
・3つの計算式により納税額が変わります!
・3つの計算式がそれぞれ使えるか判定してみましょう(次章で紹介)
・2割特例が使える場合、多くの方は2割特例を適用した方が有利になる可能性が高いです!
・「原則課税」が有利となる可能性が高いケース:売上に対する経費の割合が高い場合や、赤字の場合、大きな設備投資等がある場合
国税庁が出している「確定申告の手引き」では、計算式からe-Taxの入力まで詳しく記載されています。初めての確定申告の方は必見です!
消費税の納付方法は7つ!
※「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」はe-Taxにより提出できます
2.ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)
3.インターネットバンキングやATMで納付
4.クレジットカードで納付
5.スマートフォンのアプリで納付 ※納付できる金額は30万円以下となります。
6.QRコードによりコンビニエンスストアで納付
7.金融機関又は税務署の窓口で現金納付
ケーススタディ:「消費税」納税額計算 <2割特例編>
ここからは、3つの計算式について解説していきます。
2割特例の納税額計算方法
2割特例の消費税計算方法は、3つの計算方式の中で一番シンプルです!
2割特例とは:インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者となった事業者の方について、消費税の申告に必要な仕入控除税額の金額を、 特別控除税額(課税標準である金額の合計額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額の100分の80に相当する金額)とすることができる特例です。
次の計算式で概算で消費税額が求められます!
概算計算式:税込売上高×約1.8%=消費税の納税額
税込売上高さえ分かれば、簡単に納税額の計算が可能な方法です!
納税額が実際どれくらいになるか、売上高ごとに例を見ていきましょう!
1,000万円×1.8%=約18万円が納税額
例)税込売上高500万円の場合
500万円×1.8%=約9万円が納税額
例)税込売上高300万円の場合
300万円×1.8%=約5万円が納税額
2割特例適用できる方(対象者)
・インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者となった事業者の方
※基準期間(2年前)の課税売上高が1千万円を超えている方など、事業者の登録と関係なく課税事業者となる方は適用できません
・インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者となった事業者の方であれば、「簡易課税の選択届出」を事前にしている方でも適用可能
・事前の届出は不要
申告書作成に必要な準備は?
STEP1 所得税の事業所得の計算でいつもどおり、売上金額(雑収入を含む)を計算していきましょう!
STEP2 この売上金額のうち、「課税対象となる売上」を分ける必要があります!
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/01/shinkokusho/pdf/r05/10.pdf
所得税の計算では「売上(収入)金額」となっていても、消費税の計算では「非課税」や「不課税」「免税」となる売上金額は、消費税の課税計算の対象から外す必要があります。
そのため、STEP2では売上取引を「免税取引」「非課税取引」「不課税取引」等に区分します。
下記は、実際のe-Taxでの消費税申告書作成画面となります。
そもそも「免税取引」「非課税取引」「不課税取引」とはなにか、専門的でかなりわかりにくいと思います。下図を参考に判定してみましょう!
【国税庁】簡易課税用 消費税の確定申告手引き P47 消費税課税取引の判定表
実際に申告書を作るには?
・消費税及び地方消費税の確定申告書第一表(一般用又は簡易課税用)※及び第二表
・〔付表6〕 税率別消費税額計算表
2割特例を適用する場合、
第一表については、「簡易課税制度」を選択されている事業者は「簡易課税用」を利用する。
同制度を選択されていない事業者は「一般用」を利用する。
こちらの申告書を作成する必要があります。
国税庁の確定申告書作成コーナーより、申告書を作成するのがおすすめです!
また、会計ソフトによっては、申告書作成までできるものがあります。
そちらを活用するのも良いと思います!
ケーススタディ「消費税」納税額計算 <簡易課税編>
簡易課税の納税額計算方法
簡易課税とは、売手から受け取った消費税額に一定の割合(みなし仕入率)を乗じて納税額を計算する方式です!
事例)売上高1,100万円(業種:小売業)とした場合の納税額
売手から年間1,100万円(内、100万円が消費税額)受け取り⇒課税売上に係る消費税額100万円
課税売上に係る100万円-(100万円×小売業等のみなし仕入れ率80%)=20万円
※「みなし仕入率」は下図のように、第業種ごとに1種〜第6種に区分されています。
小売業等は第2種、みなし仕入率80%となります。
もし小売業等でなく、他の事業区分だった場合、納税額はいくらになるでしょうか?
結論、下記の消費税額になります。
卸売業(第1種)のみなし仕入率は90%で一番高いので、消費税の納税額が少なくなります。
一方、不動産業(第6種)のみなし仕入率は40%で一番低いので、消費税の納税額が多くなります。
簡易課税の適用できる方(対象者)
・基準期間(※個人事業主であるフリーランスの方は前々年)の課税売上高が5,000万円以下であれば適用可能。
・簡易課税を選択するには、事前に税務署へ届出が必要です!
※届出期限にご注意下さい!
申告書作成に必要な準備は?
「2割特例」と必要な準備は共通します。
まずは、課税売上高の計算準備をしましょう。
「簡易課税」の場合、さらに売上の取引ごとに事業区分の判定が必要になります。
事業区分の判定は下記のフローチャートを参考に判定してみましょう。
複数の事業を行っている事業者の方は、計算式がさらに複雑になります(簡易課税の中でもさらに、控除対象仕入税額を計算する方法が複数あり)。
ここでは割愛しますが、対象の方は、手引きのP23の計算方法をご確認下さい。
ケーススタディ「消費税」納税額計算 <原則課税編>
原則課税(一般課税・本則課税)の納税額計算方法
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi_kojin/r05/pdf/01-dl.pdf
原則(本則・一般)課税は、売手から受け取った消費税から、実際に支払った消費税を控除して納税額を算定する計算方式です。
どの事業者も適用可能な計算方式です。
「2割特例」や「簡易課税」の適用要件を満たさない方は、原則課税(一般課税・本則課税)が強制適用となります。
申告書作成に必要な準備は?
2割特例と共通しているのが、「課税売上に係る消費税額」を計算するための準備です。
2割特例や簡易課税にはない準備が「課税仕入れ等に係る消費税額=仕入税額」を計算する作業です。これが煩雑で大変です!
「課税売上にかかる消費税額」を計算するためにも、下図のように売上金額の中で「非課税」「免税」「不課税」となるものを分ける必要があるとお伝えしました。
課税仕入れ等にかかる消費税額でも同様に、経費の取引ごとに課税取引になるものと、課税取引とならないもの(「非課税」「免税」「不課税」)を分ける必要があります!
さらに、その作業の中で仕入先がインボイス登録事業者か否かも分ける必要があります!
国税庁のシートを使って事業所得の決算額から、課税取引と課税取引にならないものを区分していきましょう。
もしくは、会計ソフトを活用して、取引ごとに区分して集計していくことがおすすめです!
今回のまとめ
インボイス制度のスタートを機に、今まで免税事業者で有った方も、インボイス発行事業者となったことにより、消費税の納税義務者となり初めての「消費税」の確定申告。
初めての消費税の確定申告をする方向けに、消費税の基礎から、3つの消費税の計算方式をお届けしました。
特に大事な点は、どの方法を採用するにしても、消費税の計算基礎は「所得税」の事業所得の計算にあります!
青色申告の方は「青色申告決算書」、白色申告の方は「収支内訳書」の準備を例年どおり進めましょう!
そして、消費税の3つの消費税計算方式(原則課税、簡易課税、2割特例)のどれを採用するか、確認しましょう。
どの方式を使うかで手間暇や納税額が変わっていきます!
2割特例の方や簡易課税の方は、納税額の計算や申告書作成の準備は比較的楽なのがメリットです。
原則課税(本則・一般)を採用する方は、それなりの時間がかかることを覚悟しておきましょう。
納税額がどれくらいになりそうか、気になる方は納税予想を計算してみましょう!
売上金額がわかれば、2割特例や簡易課税の方は比較的簡単に納税予測が立てられます。
今回は、ポイントをしぼってお伝えしましたので、詳細は3つの計算方式ごとの、国税庁の「確定申告」の手引きを参照してください。
申告・納税のスケジュールを確認し、慌てないように準備しましょう!
文=齋藤 雄史
編集=内藤 祐介
齋藤雄史さん
税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。
高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。
合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。
ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。
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