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知らないと実質増税の可能性? 買手としての「インボイス制度」対応方法を税理士が解説!

知らないと実質増税の可能性? 買手としての「インボイス制度」対応方法を税理士が解説!

いよいよ10月1日から「インボイス制度」がスタートしました。

国税庁:インボイス特設ページ

消費税に関する制度改正であるインボイス制度。

特に今まで免税事業者だった方は、インボイス制度開始と共にインボイス登録事業者になることで消費税の課税事業者となり、実質増税されることになったという人も多いのではないでしょうか。

インボイス制度の反対署名は54万筆が集まったり、インボイスセンターの電話が中々通じない事態が発生したりと、反響が大きいようです。

さらには、国税庁の“インボイス制度に関するQ&Aコーナー”ではその数が130個もあり、制度開始後も増え続ける事態に。

インボイス制度は自社(あるいはご自身)が「売手」の時だけでなく、「買手」としても正しい準備をしないと、さらなる増税になってしまう可能性もあることをご存知でしょうか?

そこで今回は、フリーランスの方が「買手」としての立場で必要な、インボイス対応方法の本質に絞ってお届けします。

・手書きの領収書でも大丈夫?
・カード明細だけではNGで、領収書等が必要?
・取引相手(売手)がインボイス登録事業者でないけど大丈夫?

インボイスは「売手」との立場と「買手」の立場でそれぞれ対応が必要です。
知らず知らずのうちに損をしないよう、準備をしていきましょう!

※前回は、すべての事業者向けにインボイス制度導入準備全般についてお届けしました。
網羅的なことを知りたい方は、こちらの記事で復習していきましょう。
これだけ知っていれば大丈夫! インボイス制度の導入準備について税理士が解説!

自社は対応が必要か不要か、パターン別に確認!

売手」として必要なインボイス対応は、主に買手に対しての登録番号や消費税率等が記載された「適格請求書=インボイス」の発行・交付等です。

適格請求書(インボイス)とは、そもそも何のことだったか、もう一度下図を見て確認しましょう!


国税庁:適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き

なお、上記赤文字部分(登録番号、適用税率、税率ごとの消費税額等)の記載がない請求書や領収書は「インボイス」と認められません。

※必要な事項が記載された書類であれば請求書、領収書、納品書といった名称を問わず、手書きであってもインボイスに該当します

「売手」としてインボイス登録事業者となった場合はこの対応が必須です。

一方、「売手」として登録事業者ではない方にとっては、登録番号を保持していないため、当然こうした記載への対応は不要でした。

それでは「買手」としてのインボイス対応は、どんなことが必要なのでしょうか?

実は、そもそも「買手」としての準備が必要な方と不要な方がそれぞれいます。

そこで、次の6つのパターンに分けて整理していきましょう。

※このパターンは執筆者が説明を簡易にするためにオリジナルで作成したもので、国税庁等が公表している正式なものではありません。

自社がどのパターンにあたるか確認しましょう。

自社がどのパターンになるかの確認方法

<ステップ1>

まずは自社(あるいは個人事業主の場合はご自身)が「適格請求書(インボイス)発行事業者」か否か確認しましょう。

※適格請求書発行事業者は登録制になっているため、自ら登録しない限りは登録事業者になりません。 

国税庁:[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)

<ステップ2>

自社の消費税における計算方式(税務ポジション)を確認します。

適格請求書(インボイス)発行事業者である課税事業者は、さらに原則課税、簡易課税、2割特例の3種類の計算方式に分かれ、それぞれの方式に則って消費税を納税します。

※インボイス未登録事業者でありながら、消費税を納めなければならない課税事業者は、原則課税と簡易課税の2つから選択します。
(2割特例は適用できません)
免税事業者である場合は、そもそも消費税を支払う必要はありません。

<注意!>

先にお伝えすると、この税務ポジションの確認は、事業者のそれぞれの状況によって異なり、3種類の計算方法のうちどの方法が適用可能かを一言で表すことはとても難しい、というのが正直なところです。

自社がどの税務ポジションを取るべきか迷った際は、インボイスセンターや税理士に相談することをおすすめします。

買手としてインボイス対応が必要となるのは「原則課税」の計算方式を適用する場合のみ

ここから先は、自社がインボイスの登録事業者か未登録事業者であるか、そして消費税の計算方式が原則課税か簡易課税か2割特例か、判別できた方へ向けて、それぞれのタイプ別のインボイス対応方法をお伝えします。

<結論>

・消費税の計算方式で「原則課税」を選択している方(上表で①、⑤の方)
 ⇒「買手」の立場でのインボイス対応が必要です!
次章で対応方法についてみていきましょう!
・それ以外の方(上表で②③④⑥の方)、つまり「簡易課税」「2割特例」「免税事業者」の方
 ⇒「買手」の立場でのインボイス対応は不要です!

ただし、注意点があります。
どの計算方式を適用しても、これまで通り「売手」から商品の購入やサービス提供を受けたときに「領収書」や「請求書」等を残しておく必要があることは変わりません。

買手の対応:売手から「インボイス」が交付されているか確認しよう!

「売手」が適格請求書発行事業者である場合、登録番号等が必要情報がきちんと記載された「適格請求書」が交付しているかを、確認しましょう。

これが最も大切です!

<もし取引をした際に、売手からインボイスの交付を受けなかった場合はどうなる?>

「適格請求書」を交付しない「売手」と取引をした場合、(仮にその事業者が消費税課税事業者として消費税を納めていたとしても)仕入税額控除(※)が受けられなくなり、「買手」が消費税分を実質負担しないといけません。

つまり、事実上の増税となりますので、ご注意ください。

また、売手が「適格請求書発行事業者」でない場合は、そもそも売手はインボイスを発行できません。

この場合も同様に「買手」が消費税分を実質負担しなければなりませんので、ご注意ください。

※消費税の納付税額は「売上」にかかる消費税と「仕入等」にかかる消費税を差し引いて計算される。この仕入等にかかる消費税のこと。

例外①:「インボイス」がなくても帳簿等の保存のみで良い場合

売手から「インボイス」をもらわなくても、仕入税額控除が認められる場合があります。

特に多いものを一部紹介します。

・従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当に係る課税仕入れ

また、もう一つ大きな例外があります。

・【少額特例】一回の取引の仕入金額(税込)が1万円未満である場合

この場合も、「インボイス」がなくても、帳簿の保存のみで問題ありません。

※ただし、次の方は注意してください。

・年間の課税売上が1億円を超える事業者の方
・前年の半年間で課税売上が5千万円を超えるような事業者の方
 ⇒この例外が対象外となる可能性があり=原則通りインボイスが必要となる可能性あり。

上記に該当しそうな方は、判定は間違いやすいので正確な判定は税理士に相談するとよいです。


https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf

例外②:3万円未満の公共交通機関や自販機による商品の販売はインボイスがなくてもOK

例外①と同じように、3万円未満の公共交通機関(バスや電車等)は買手において、インボイスの交付を受けることが困難な一定の取引は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。


日本税理士連合会:https://www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/invoice/

注意!:クレカ明細では仕入税額控除が認められない?

クレジットカードで支払ったけど、「レシート」や「領収書」、「請求書」(登録番号等記載のないレシートや領収書)をもらっていない場合はどうすればよいでしょうか?

結論、クレジットカード明細は、インボイスの登録番号や区分ごとの税率等の記載がないため、インボイスと認められません!

※今までは、下記のように3万円未満の取引等で合った場合、一定の記載を買手が記載することで仕入税額控除がOKとなる例外がありました。今後NGとなります。

原則通り、インボイスの要件を満たす領収書やレシート等をもらいましょう!


国税庁:適格請求書等保存方式の概要

今回のまとめ

インボイス対応は「買手」としての立場と「売手」としての立場でそれぞれ準備が必要です。

今回は、フリーランスの方が「買手」として必要なインボイスへの対応方法を紹介しました!

・そもそも「買手」としてのインボイス対応が必要な方と不要な方がいること
・その判定は、事業者であるあなたが、どの税務ポジションか(免税事業者か、あるいは課税事業者の場合はどの消費税計算方式を採用しているか)によって変わってきます。

【結論】

自社がインボイス登録をしているか否かに関わらず、自社の消費税計算方式で「本則課税=原則課税」を採用している場合のみ、「買手」としてのインボイスの対応準備が必要。

【注意点】

「2割特例」が適用可能な事業者の方
申告時にどちらの計算方式を採用するかを決めることが可能です。
つまり、申告するまで「2割特例」を取るか「原則課税」となるか分からない方は、登録番号等記載のある領収書やレシートを保存しておいた方が無難です。

【「買手」としての準備】

・売手より「インボイス」の交付を受けたか取引の都度、確認して下さい!

※「適格請求書発行事業者」のみ「インボイス」が発行できます。売手が「適格請求書発行事業者」かそうではないか確認しておくと良いでしょう!

インボイスの交付がなくても良い例外をお伝えしました。

・1回の取引の仕入金額(税込)が1万円未満である場合
・3万円未満の公共交通機関を利用した場合

しかし、原則は登録番号等記載のある領収書やレシートを、保存することが大切です。

買手としての準備不足・知識不足は、実質消費税の増税となる可能性があります。しっかり準備をしていきましょう!

また、今回はあくまで「買手」のインボイス対応の解説に終始するために、3つの消費税の計算方式については省略しました。

次回はこの3つの消費税の計算方式をテーマに、解説していきます!

文=齋藤 雄史
編集=内藤 祐介

<プロフィール>
齋藤雄史さん
税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。

高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。

合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。

ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。

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