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紆余曲折したからこそ、開業への想いと夫婦の絆が強くなる 年間密着取材Ⅱ ~橋爪夫妻編 総集編~

紆余曲折したからこそ、開業への想いと夫婦の絆が強くなる 年間密着取材Ⅱ ~橋爪夫妻編 総集編~

「独立・開業」を目標に実際に起業活動を進めている方の年間密着取材、第2シーズン。開業までのプロセスや想いを中心に、苦労話や失敗談まで、リアルな姿を追いかけるドキュメンタリー。山梨県でゼリーショップ開業準備中の橋爪夫妻の1年を振り返ります。

橋爪夫妻プロフィール
ご主人の卓さんは、山梨県出身の33歳。東京の大学を卒業後、都内の新聞社に就職。その後、保育園の管理事務職に就く。体調を崩した祖父を想い山梨県へUターンするも、勤めていた保育園から、新規園の立ち上げスタッフにと声がかかり再度、東京へ。新規園が軌道に乗ったのを見届けたのち退職。2016年に山梨県へ移住し地元企業に勤めるが17年3月末に退職し、現在は開業準備に専念。奥さまの麗子さんは神奈川県出身の44歳。大学卒業後は、大手学習塾、塾経営など教育業界や企業に勤務し、保育園管理事務職に。現在は長野県内の教育機関で働く。山梨県産のフルーツを用いたゼリーを主力商品としたショップの開業を予定している。賃貸の店舗物件を探していたものの、希望に合うものになかなか出合えず、土地を購入することに。

Uターン、家業の継承、6次産業のスタート、そして夫婦で独立開業…。大きな決断と実行力が必要なものばかり。しかし、橋爪夫妻はこれら全てに挑戦します。
2016年4月に卓さんの地元である山梨県へUターンし、地元で働きながら開業準備を開始します。

卓さんは、地元に戻ってきたことをきっかけに、実家が営むフルーツ農家の状況を間近で見たり、親との会話の中で、「ずっと昔から繋いできたものを自分の代でなくしたくない!」と農家を継ぐことを決意します。農業だけでは生計が立たないので、畑で育った新鮮なフルーツを使用し、添加物不使用のゼリーやジャムなどをインターネットで販売する6次産業を開始することを考えました。2016年夏頃だったそうです。

塾の開業経験がある麗子さんは、この話を初めて聞いたとき「生活ができるかどうか、すごく不安でした。いい加減な気持ちでは開業は絶対に成功するものではないし、やるならきちんと計画を立てていかないと、ズルズル間延びしてしまう」と伝え、本当に開業したいのか卓さんに何度も確認したそうです。そして、卓さんの決意は固いと感じた麗子さんは、「事業が軌道に乗るまでは私も働き続けたら良いし、軌道に乗ったら私も手伝えば、なんとかなるか!」と、17年4月開業を目指すことになりました。

何でも夫婦で相談し、1つずつ決めては振り返って確認をするスタイルで準備を開始。まず、17年1月、合同会社まちづくり甲府の企画する「まちなか空き物件見学会」に参加し、開業のイロハや助成金について学ぶとともに、甲府市中心街の空き物件も紹介してもらいました。この説明会兼物件見学会に参加したことで、開業イメージは、より具体的になったそうです。お客さまと顔を合わせた接客ができることに惹かれ、店舗型経営と無店舗型経営の双方のメリット・デメリットを出して検討した結果、出店することになり、地元・北杜市で店舗物件探しを始めます。甲府市でないのは、販売予定のフルーツゼリーは山梨県産の素材にこだわったものなので、自然のイメージが強い地元・北杜市に出店したほうがお店のコンセプトに合うからでした。

お店探しと並行して卓さんが商品開発を進めます。山梨県産のフルーツ、南アルプスの水、無添加の素材にこだわり、分量、見た目などを丁寧にノートにまとめていったといいます。困ったときには、デパートで商品開発に関わっていた方を商工会で紹介してもらい、相談に乗ってもらったり、試食をしてもらった方々からの感想をもとにフルーツごとに使用する甘味料を変えるなど、日々改良を進めます。器はイメージに近いサンプルを取り寄せ、容器のラベル制作は麗子さんの親戚であるデザイナーに、ホームページの製作はご主人の友人へ依頼することに決めました。

着々と準備を進めていく中で、思いの外、難航したのが物件探しです。土地柄、賃貸物件が少ないということもあり、希望の条件に合うものがなかなか見つかりません。地元の企業に就職した時点では、17年4月に開業予定だったため3月末に退職を決めていた卓さんに焦りの色が。しかし、「知人やパッケージ業者の方、『まちなか空き物件見学会』以来お世話になっている山梨中央銀行の方などが、親身に相談に乗ってくれるので不安はありません。ほかにも、夫婦ともに以前の職場の同僚や現在の同僚にも、物件のことやホームページ、商品開発の相談に乗っていただいているので心強いです」と周囲の存在が支えになっていたようです。

卓さんが退職するまでに物件が見つかることはなく、退職後は農場のアルバイトや実家の農業の手伝いなどをしながら開業準備を進めます。農業を引き継ぐ際には、法人を立ち上げ、部門別の事業とする考えもあり、その時に役立つよう農業経営も学んでいるといいます。このころ、「賃貸の場合は借りた後に工事費がかかるものが多く、いっそのこと購入した方がいいのでは」と考え、賃貸ではなく3年~5年分の賃料と同じくらいの価格帯で店舗購入する方向へと転換します。これに伴い開業目標も17年6月中に。不動産屋だけでなく銀行の方からの紹介も受けながら、1カ月で20件もの店舗物件を内見し、購入候補を6つに絞りました。

17年6月下旬からは北杜市の商工会が主催する創業塾に、そして7月からは山梨中央銀行の創業・第二創業者向けの勉強会に参加し始めた卓さん。経営やマーケティングなどについて基礎知識を学ぶことができ、また人脈形成にも一役買ったといいます。開業を決意してから事業計画書を作成し、方向性が変わる都度、修正を加えていましたが、勉強会で事業計画書を作成したことで、立案時に観光客に関する調査書など“より多くのデータを見る”習慣がついたといいます。また、山梨中央銀行の勉強会で発表した事業計画書は約30名の中から最優秀賞を受賞し、次の大会に進むことにもなりました。
なかなか「ここだ!」という店舗用の購入物件に出合えないので、希望に合う土地を購入して卓さんがログハウスキットで店舗を作ることを決意。オープンは18年の春を目指すことにしました。もし、冬に開業した場合でもオープンするまでの家賃など経費がかかりません。オープンするまでは準備期間とし体制を整えて観光客が増え始める春を迎えたいといいます。

そして、ついに気に入った土地と出合います。それまでは、素材にこだわった商品に合わせ、自然に囲まれたところに店舗を構えるイメージでした。しかし、自然に囲まれた土地にこだわり過ぎず、人の往来があって集客のしやすい場所も視野に入れ始めたときに出合ったそうです。相談をしていたご両親や銀行の方も「ここならいいんじゃない!」と言ってくれたのが後押しになったといいます。

購入を決めてからも、その土地が市の条例地域に該当するため、まちづくり条例や景観条例などの条件を満たすかどうかの確認作業があり、融資の件も含めて銀行や不動産屋と1つひとつ相談しながら進めているので、契約まで予想以上に時間がかかっています。しかし、ここまで来ればあと一歩。DIY予定のログハウスも、ログハウスのキットを扱う業者の方に在庫を確認したり、見積もりを依頼したりと着々と準備を進めています。

紆余曲折あった開業準備ですが、卓さんが辛い時期を乗り越えられたのは周囲の方々の協力と、何より麗子さんの応援があったからだといいます。夫婦円満に開業準備を進める秘訣についてお伺いしたところ、卓さんは「何でも得た情報を共有しながら進めていくのが一番だと感じています。忙しいと、ついつい後回しにしがちですが、夫婦だからと言い訳して話をしないのでは、2人で始めた意味がありません。経営者としても失格ですよね」と教えてくれました。麗子さんも「開業準備では、ささいなことでも2人で話し合うようにしていますし、物件探しはもちろん、説明会や打ち合わせなど可能な限り何でも一緒に参加するようにしています」と言います。夫婦で開業する方はぜひ参考にしてみてください。

最後に、「記事が世に出たことで、『よしやるぞ!!』と毎回気持ちを高めることが出来ましたし、業者や銀行など関係各所と打ち合わせをする際は、創業への本気度が伝わりました」と感想を述べてくださいました。

夫妻の夢であるゼリーショップは18年春にオープン予定。橋爪夫妻の挑戦は、まだまだ続きます。

年間密着取材を終えて

夫婦二人三脚で開業準備を進めてきた橋爪夫妻。想像以上に物件探しに時間がかかり、当初の開業予定が1年、後ろ倒しになってしまいましたが、その間に商品開発を終えたり、創業塾や勉強会で知識を蓄え事業計画書を練り直したり、農家経営を学んだりと「今できること」を1つずつ、着実に取り組んでいらっしゃいました。

店舗が決まるまでにかかった時間は開業への想いや、夫婦の絆をより一層深めたのではないでしょうか。取材は今回で終わりとなりますが、オープンした暁には足を運んで、こだわりのお店でこだわりのゼリーに舌鼓を打ちたいと思います。今から楽しみです!

更新日:2017/12/22
文:篠原舞 撮影:佐藤なかや、中村公泰

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