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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第107回・こんなところにもDX

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起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

さまざまな分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでいます。「ドローン」「カメラ」「人工知能」の3つを組み合わせて、ある農業のベンチャー企業が画期的なDXを進めようと計画しているそうですが、さて、その企業はこの組み合わせで何をしようとしているのでしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、「デジタル技術を活用して、人々の生活やビジネスを変革させること」です。

今回取り上げるのは、「ドローン」「カメラ」「人工知能」という3つ最新の技術を使って、デジタル化が遅れている業界の1つといわれる「農業」に新しい風を吹き込もうとする取り組みです。

それでは解説します!

農業は手作業でしないといけないことが多く、デジタル化が難しい業界の1つだといわれます。そんな中でも、「デジタル化が遅れていたからこそ、進めがいがある」として、あらゆる人たちがいろいろなチャレンジをし、新しい技術が持ち込まれ始めています。

さて、今回取り上げたのは、特に人の手で行わないとできなかったことを、DXで画期的に楽にしたという事例です。

それが、ドローンによる低農薬農法です。最近は表示ルールが変更され、農作物の販売の際には無農薬や低農薬といった表記はしてはいけない(「特別栽培農産物」としてどの程度農薬を節減したか法律に従っての表記が義務づけられている)のですが、簡単にいうと「畑のあちこちにドローンを飛ばして農作物をカメラで写して画像認識し、害虫被害にあっている部分を探し出してピンポイントに農薬を噴射する(それにより害虫被害を最小限でくい止める)」という作業です。

従来は「人の目」で農作物を1つずつチェックし、「人の手」で霧吹きなどを使って部分的に農薬散布を行っていました。その方が、使用する農薬の量を圧倒的に減らせるからです。

しかし、そう広くない畑であっても、ものすごく時間も手間もかかる作業であることは想像に難くないでしょう。また、人的コストが増え、農作物の値段が上がってしまうといった影響もあるそうです。

そうした大変な作業を、ドローンとカメラと人工知能を使うことで代替できるわけです。人間がやるのと同じことがデジタル技術の活用で簡単にできるようになるというわけで、この技術はそう遠くない未来に間違いなく実用化されるだろうといわれています。

カメラを活用したDXの事例が増えている

こうしたカメラを使ったDXの事例は、実はたくさんあります。

例えば、橋や高速道路などの保全においてドローンを活用する動きは、結構前から進んでいます。カメラを積んだドローンを飛ばして高いところや見えにくい部分なども隅々までチェックし、保全が必要な箇所を突き止めるのです。

従来は、人をロープで吊るして目視で点検したりしていました。特に最近は耐震の問題もあるため、すごく重要な作業となっていますが、そこにドローンと画像解析の技術がフル活用されているというわけですね。

他にも、カメラと人工知能をつなぐといろいろできそうだということで、ショッピングセンターが在庫管理のために活用している事例もあります。

ショッピングモールは敷地が広いため、お掃除ロボットを活用するケースが多いのですが、それにカメラを搭載するわけです。スーパーマーケットをイメージすると分かりやすいですが、ロボットが通路を掃除している時に同時に棚をカメラで写し、欠品箇所がないかを感知するのです。

基本的にはどこのお店でも在庫管理はしていますが、多くのお店ではPOSを使って管理しているため、例えば万引きされてしまったものや、本来とは違う場所に戻されてしまった商品などについては、正確に把握できないという課題があるのです。そのための棚卸を結構な時間をかけて定期的にやるという「小売業あるある」もあるくらいですが、そんな大変で面倒な作業を、毎晩ロボットが掃除のついでにやってくれるというわけですね。

また、海外の事例としては、アマゾンが運営する無人の食料品店「Amazon Go」も、カメラと人工知能を活用することで無人店舗を実現しています。

お店の天井にはたくさんの監視カメラがあり、そのカメラがお客さまが袋に入れた商品を画像認識して、同時に金額をチャージし、お店を出る際にまとめてオンライン決済を行うという仕組みの店舗なので、レジが不要です。ある意味で、カメラを使った最先端の事例の1つといえるかもしれません。

高性能のカメラやドローンが安く買える時代に

こうしたカメラを使ったDXが増えている背景には、「たくさんのカメラを使ってもコストがかかりにくくなっている」ということがあると思います。つまり、カメラにしても、ドローンにしても、価格がすごく下がってきているのです。

しかも、スマホでもドライブレコーダーでも、高性能のカメラがとても安く手に入るようになりました。「アイデア1つで面白いことができる時代」になっているからこそ、みなさんのビジネスでも、何か工夫したり、新しいことを考えてみたりすると面白いかもしれませんね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「低農薬農法」でした。人工知能が人の仕事を奪うという話がありましたが、大事なのは「使い方」であり、便利にできるものはとことん便利にするために活用すればいいと思いますが、どうでしょうか?

構成:志村 江

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PROFILE
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

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