スタイルのある生き方へシフトしたいビジネスパーソンのためのニュース・コラムサイト。
検索
独立の専門家に聞く

仕組みを知っていると所得税がお得になる? 知らないと損する税金の秘密を税理士が解説!

仕組みを知っていると所得税がお得になる? 知らないと損する税金の秘密を税理士が解説!

確定申告のシーズンも終盤に差し掛かり一息ついている方も、最後の追い込みをかけている方もいることでしょう。

「税額の計算はだれがやっても同じでしょ?」
「税金の勉強はした方が良いのはわかっている。けれどもどこから手を付けたら良いのか…」
「そもそも税金の仕組みを知っていることのメリットが体感できない」

独立・起業の「お金」に関する悩みを、税理士の齋藤雄史先生に解説していただく「税理士が教えるお金と起業」シリーズ。

今回は齋藤先生に、税金の仕組みを知っているとこんなにお得?知っておくべき税金の世界に解説していただきました。

知らないと納税額に差が出る? 所得税の仕組みを解説!

会社員の方の場合、毎月お給料から所得税が源泉徴収されているため「納税額はコントロールできない」と考えている方も多いのではないでしょうか。

しかし国税庁の「申告納税制度」という項目では、以下のように記載されています。

国の税金は、納税者の一人一人が、自ら税務署へ所得等の申告を行うことにより税額が確定し、この確定した税額を自ら納付する申告納税制度を採用しています。これに対して、行政機関の処分により税額を確定する方法を賦課課税制度といい、地方税ではこの方法が一般的です

引用:申告納税制度

税金の中には、自動車税や固定資産税のように「賦課課税制度」に基づき、納税通知書が届き、ただそれを支払うだけの種類のものもあります。

しかし、個人が国へ支払う所得税は「申告納税制度」に基づき自ら申告を行うことにより税額が確定されます。

税務調査があるのは、この自発的な申告をしていることの裏返しでもあり、適正に申告されているか国側がチェックする必要があるためなんですね。

もう一点、所得税の仕組みで抑えておきたいのは「超過累進課税」という制度です。
所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、5%から45%の7段階に区分されています。

国税庁:所得税の税率

そして、間違いやすいのですが所得税は課税される所得全体に該当する税率を乗じるのではありません。区分から超過した金額だけに対応した税率を乗じる「超過累進課税制度」が採用されています。

所得が高くなる程、適用される税率が高くなるので自分がどこの区分の所得金額に該当し、適用される税率を抑えておくことが大事になってきます。

知らないと納税額に差が出る? 知っておきたい7つの例

今回は個人が支払う所得税が「申告納税制度」を採用しており、税金の支払う額をコントロールできる可能性あるという事を知って頂くためのいくつか例示をします。

気になる項目がありましたら、税理士に相談してみましょう。

①青色申告特別控除

対象:個人事業主の方、不動産所得がある方

「個人事業主なら青色申告をした方がお得だよ」という話を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。青色申告特別控除を受けるためには、

・一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しく期限内申告している人

・原則としてその年の3月15日までに、「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出している

ことが主な条件です。条件を満たすと、青色申告者としてさまざまな特典を受けることができます。その特典1つが「青色申告特別控除」。ざっくり説明すると、下記の特別控除を受けることができます。

(最大)65万円(青色申告控除額)×税率

ここでも「超過累進課税」によって所得が高い程、税率は高くなります。

つまり所得が高く、高い税率が適用される方が、青色申告特別控除における特典の恩恵も大きくなるということです。

②医療費控除を使っていますか?

自分や家族の医療費を年間10万円以上支払った場合(総所得200万円未満の方の場合、10万円以上の医療費の支払いがなくても総所得の5%まで)医療費控除を適用できます。医療費には、保険診療の窓口負担金や病院までの交通費などを含めることができます。

ただし、年末調整で医療費控除を適用できないため、「確定申告」にて医療費控除の適用を申請する必要があります。

確定申告が面倒だと思ってやっていない方も多くいらっしゃると思います。ぜひ一度確定申告を挑戦してみましょう。

またここでも「超過累進課税」によって、所得の高い年に医療費を支払った方が控除の金額の恩恵が大きくなります。

さらに、医療費については個人分だけではなく、生計を一にしている家族分も合算することが可能となっています。

そのため家族単位でみると、所得が高い人が生計を一にしている家族の医療費を負担することで、より多くの控除を受けることも可能となるのです。

参考:医療費を支払ったとき(医療費控除)

③夫婦でふるさと納税をするなら、所得税率が高い方でするとよりお得?

ふるさと納税とは、生まれた故郷や応援したい自治体に寄附ができる制度です。

基本的に、寄附金のうち2,000円を超える部分については所得税の還付、住民税の控除が受けられます。

またここでも「超過累進課税」によって、所得の高い方が受けられる控除の金額が大きくなります。

つまり、夫婦でどちらかが納税する場合、所得が高い人が納税することで、控除額が大きくなり税率が高い分だけ優遇される額が大きくなります。

④家族の中でもっとも所得が高い人に生命保険控除をするとお得に?

生命保険料に加入すると生命保険控除が受けることができ、節税になるということは多くの方が知っていることでしょう。

しかし、控除対象となるのは自分の保険だけではありません。

お子さんや配偶者の名義の保険を自分が払っていたらそれも控除の対象に含める事ができます。

国税庁:妻名義の生命保険料控除証明書に基づく生命保険料控除

⑤共働きの夫婦の方、どちらに扶養控除をつけていますか?

高校生以上のこどもを扶養している場合には、所得税と住民税を計算する時に、扶養控除を受けることができるため、税金が安くなります。

しかし共働き夫婦の場合には、収入の高い方に扶養控除を受けるようにしましょう。例によって、所得税は所得が高くなると、税率も高くなるからです。

なお、一定の場合、親を扶養に入れることもできます。夫婦で扶養している親族がいる場合はどちらに扶養控除をつけるか一度検討してみましょう。

国税庁:扶養控除

⑥不動産投資を始めて節税?

不動産投資による所得は、「不動産所得」として申告することになります。

不動産所得が赤字(損失)になった場合には、給与所得など他の所得と損益通算することができます。

※ただし、海外不動産の取り扱いについては最新の税制情報を入手しましょう。

多くの場合、不動産投資を始めた初年度は不動産取得税等の負担により赤字となるケースが多いかと思います。

その場合、赤字になった部分は給与所得と合算することができるため、その年の所得税の負担を抑えることができる可能性があります。

⑦国民年金の追納・前納を利用する

国民年金は、前年の追納分や前納分も確定申告で控除(社会保険料控除)を受けることが可能です。

所得が高くなる見込みの年(=税率が高くなる年)に前納するとその分控除を多く受けることができる可能性があります。

例年より所得が高くなる見込みがあれば前納を検討してみる価値がありそうです。

13月(つき)以上の前納により納めた国民年金保険料について、社会保険料控除の適用を受ける場合は、以下の方法のいずれか1つを選択していただくことになります。

日本年金機構:令和元年の社会保険料(国民年金保険料)控除証明書の発行について

まずは税金に興味を持つことを!知っているか知らないかで差がでることも!

今回大事なことは、個人が支払うべき所得税の額は国がすべて勝手に決めているわけでもなく、自分でコントロール可能な部分があるということです。

それは税金の仕組みを知っていないとコントロールすることができず、また自分で情報を取りにいくしかないということです。

だからと言って、税金の仕組みを勉強を一からするのは大変です。

今回はいくつもある知っておいて得な税金の知識についてほんの一例を紹介しました。

「申告納税制度」と「超過累進課税制度」の2点をおさえておくだけでも、今までとは違った視点で税金の事を考えられるようになったのではないでしょうか。

まずは気になった箇所がありましたらを税理士に相談してみましょう!

 

文=齋藤 雄史
編集=内藤 祐介

<プロフィール>
齋藤雄史さん
税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。

アントレ 独立、開業、起業をご検討のみなさまへ

アントレは、これから独立を目指している方に、フランチャイズや代理店の募集情報をはじめ、
さまざまな情報と機会を提供する日本最大級の独立・開業・起業・フランチャイズ・代理店募集情報サイトです。