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大手の元会社員が50代で起業。丸澤武さんが日本茶の魅力を広める事業を始めた理由

大手の元会社員が50代で起業。丸澤武さんが日本茶の魅力を広める事業を始めた理由

大企業に限らず、一般企業にもかなり浸透してきた早期退職制度。

退職金の割増支給など労働者のメリットも多いこの制度を活用して、セカンドキャリアで独立・起業を考える人もいるのではないでしょうか。

今回お話を伺った丸澤武さんは、トヨタ自動車株式会社を早期退職後、54歳で起業。現在は狭山茶をはじめとする日本茶の販売や、お茶の魅力を広めるための事業を行っています。

丸澤さんはなぜ、全くの異業種での起業をしたのでしょうか。その理由は、丸澤さんのこれまでのキャリアと強い信念、目的意識にありました。

<プロフィール>
丸澤武さん
DPS株式会社 代表取締役/さやまちゃ塾 塾長

大学を卒業後、トヨタ自動車株式会社に入社。主に海外向けの事業推進に関わる領域を担当する。54歳の時に同社を早期退職し、DPS株式会社を設立。狭山茶の販売、小売、卸売業を開業する。また、お茶作りを1日体験できる教室「さやまちゃ塾」もオープンさせる。

日本を元気にできるような事業を作りたい。トヨタを早期退職し、日本茶を事業にした理由

――まずは丸澤さんの現在の事業について、教えてください。

丸澤さん
主に狭山茶(※)を中心とした、日本茶の小売、卸売といった販売を行っています。

また狭山茶を生産する農家・農園とタイアップし、お茶摘み体験や工場見学をしたり、お茶の淹れ方を学んだりする体験教室「さやまちゃ塾」も運営しています。

※埼玉県西部、東京都西多摩地域を中心に生産されている日本茶。宇治茶(京都府)、静岡茶(静岡県)と並び、「日本三大銘茶」と称される。

――元々お茶や食品関係のお仕事をされていたのでしょうか?

丸澤さん
いえ、食品関係の業界での就業経験はありません。前職はトヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)で働いており、主に海外向けの事業推進に関わる領域を担当していました。

54歳でトヨタを早期退職した後、現在の事業へとシフトしていったんです。

――会社を退職し、セカンドキャリアとして起業されたのですね。なぜこれまでのキャリアとは全く異なる領域での起業を考えたのでしょうか?

丸澤さん
会社員時代の経験が大きかったですね。仕事柄、頻繁に海外へ出向いて仕事をしたり、海外に住んでいたりした時期もありました。

長く日本から離れて生活された方ならお分かりいただけるかと思いますが、だんだんと「海外から見た日本」という視点に立って、ものが見えるようになるんです。

――丸澤さんから見た、日本はどう映ったのでしょうか?

丸澤さん
ここ数十年、他の諸外国に比べて元気がなくなってしまったな、という印象なのが正直なところでした。バブル期の頃までは日本も活気があったのですが……それ以降は経済成長は横ばいになり、それに呼応するかのように国全体の雰囲気も停滞気味になってしまっています。

いつからか「会社を辞め、セカンドキャリアを考えるなら、日本を元気にできるような仕事がしたい」と思うようになっていったんです。そして現在の日本茶の事業の構想が出来上がっていきました。

日本茶の魅力をもっと広く伝え、文化を絶やさないためにできることをしたい

――「日本を元気にする」という目的を実現するための手段はたくさんあるかと思います。なぜ日本茶の事業を選んだのでしょうか?

丸澤さん
自分で事業を立ち上げるなら、商材は「日本ならではのもの」を扱いたいなとずっと考えていました。

また、住まいが埼玉県の所沢市なので、私にとって狭山茶は比較的身近な存在だったんです。それで日本茶に興味を持つようになり、勉強をしてみると、様々な課題が見つかりました。

――どのような課題ですか?

丸澤さん
端的に言えば、私たち日本人のお茶に対する認識と、お茶農家が利益を上げにくい構造です。

多くの人にとってお茶とは「ペットボトルで購入し喉を潤すための手段」と考えているケースが圧倒的に多いのが現状です。気軽に買えて飲めるのがペットボトルのお茶の良さですが、農家の皆さんが手間暇をかけて作ってくださる茶葉と比べてしまうと正直、その味やクオリティは全く異なります。

丸澤さん
しかし、残念ながら現状ではお茶(茶葉)が多くの人に届く機会が少ないので、そうなると当然、農家さんが利益を上げにくくなってしまいます。

そこでお茶の流通、販売を促進させるとともに、たくさんの人に日本茶そのものへの興味を持っていただけるような事業を作ってみようと考えました。

――狭山茶をはじめとする日本茶に対する課題感や危機意識が、丸澤さんを動かす原動力になっているんですね。

丸澤さん
独立・起業をするからには、やはり自分の思いや信念に沿って、理想を実現できるような事業を立ち上げたいじゃないですか。会社を退職してセカンドキャリアを考えるなら、なおさらその信念がないと、目的がぼやけてしまうんじゃないかと思います。

それにお茶って、本当に奥深いものなんです。茶葉を摘んで、自分でお茶を淹れて飲む。その行為自体がやってみるととても楽しいんですよ。そういった、日本人がずっと大切にしてきた文化や風習を絶やしてはいけないなと改めて思います。

日本茶をもっとたくさんの人に知ってもらって、飲んでいただける。私の事業がそんな一助になれればと思います。

前向きな目的と信念を掲げて。独立・起業に必要なこと

――丸澤さんの今後の展望について、お聞かせください。

丸澤さん
お茶の魅力をたくさんの人に知ってもらうための施策を行っていきたいですね。

そのための1つとして、ワインで言うところのワイナリーツアー(※)ならぬ「チャ(茶)イナリーツアー」を企画しようと考えています。

お茶摘みや加工、試飲など、これまで以上にバラエティに富んだ企画を考えて実践できたらいいですね。また、お茶を題材にしたコンテンツ、例えば小説や映画などの制作にも挑戦してみたいなと思っています。

※ワインの試飲や工場見学ができ、ワインにまつわる名所をめぐるツアー

――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

丸澤さん
独立・起業をするなら、自分の「目的」を言語化、明確化できるといいと思います。私の場合は「お茶で日本を元気にしたい」という信念のもと、起業をしたというお話をさせていただきました。

反対に「現状の会社に満足がいっていないからやめる」といったネガティブな要因で、独立・起業を始めるのはおすすめしません。独立・起業はあくまで目的のための手段に過ぎません。逆に目的さえブレていなければ、その目的を実現する手段は、ある程度自由度があってもいいのではないかと思います。

ぜひご自身らしい前向きな目的を持って、独立・起業に挑戦してみてください。

取材・文=内藤 祐介

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