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事業継承

総務省「就業構造基本調査」によると、個人事業主の平均年齢は、1979年には49.2歳であったのに対し、2002年には56.2歳となっています。 このことから、個人事業主や自営業主の高齢化が進んでいることが確認でき、日本の中小企業は後継者への事業継承が緊急の課題となっています。 また、個人事業主のほうが法人よりも、取引先や顧客との信頼関係で経営が成り立っていたり、土地、建物などの資産が事業主の個人所有になっていたりするなどの問題点が複雑にからみ合っているケースが多々あります。 今回は、事業継承を進める際の注意ポイントをまとめました。

個人事業主の事業承継方法

個人事業主のおこなう事業承継は、主に家族・親族に引き継ぐ贈与か相続、または他人に譲渡(売買)するM&Aに分けられます。 1.贈与 個人事業主が家族や親族などに生前贈与として事業譲渡をおこなうことが多いです。 贈与による事業継承には、子ども・兄弟などの家族・親族への「親族内事業承継」と従業員・知人など他人への「親族外事業承継」があります。 2.相続 経営者が亡くなり、相続で預貯金や不動産、機械設備、売掛金、商品といった相続財産を後継者が引き継ぐことです。 相続による事業承継で遺言がない場合、相続人の中から遺産分割協議によって事業継承者を決めます。 3.M&A 個人事業主が事業譲渡する対価として、金銭を受け取る方法で親族以外の他人に事業承継します。 M&Aは事業承継センターや取引銀行への相談、M&Aマッチングサイトなどで事業譲渡先を見つけることもあります。

個人事業主の事業承継の流れ

事業承継の流れを説明します。 ただし、事業譲渡手法や事業の引き継ぎ方の違いによって手順が異なりますので、基本的な流れとして理解してください。 1.後継者選び 事業承継をする際に、後継者を選ぶことは大変ですが、最も重要なことです。 一般的に、個人事業主の場合は、事業承継は家族・親族への譲渡が多いのですが、従業員など、他人への事業譲渡ももちろん可能です。 2.後継者との引き継ぎ 個人事業主は経営者の信頼や人間関係で事業が成り立っている場合が多いので、後継者と一緒に取引先へのあいさつなどもおこない、事業を順調に引き継げるようにサポートをすることが大事です。 また、顧客情報の引き渡しや店舗などの土地・建物も後継者に引き継ぐ場合は各種届出などの書類・手続きに漏れがないように注意しましょう。 3.個人事業主廃業・後継者開業 税務署に現事業主の廃業届出を提出します。現事業主は、これで個人事業主ではなくなります。 後継者は、個人事業主の開業届を出します。 現在の屋号を使いたい場合は、引き継ぎたい屋号を記載してください。 現在の屋号を引き続き使用することができます。 4.各種届出の整理 3.以外にも事業承継には数種類の届出が必要です。 A:所得税の青色申告の取りやめ届出書 青色申告をしていれば必要になります。 B:青色事業専従者給与に関する届出書 後継者の妻が事業を手伝う場合に給与などの対価をこの届出書で経費処理できる。

個人事業主の事業承継における注意点

個人事業主の事業承継手続きは法人より比較的に簡単におこなうことができますが、注意しないといけない点があります。 1.後継者の決定 個人事業主の事業継承は、高齢になり、体力的な問題を考え出す方が多いです。 しかし、取引先・顧客への後継者認知には時間が掛かることが多いので、自身の体調と相談しながら後継者の決定を早めに準備をするほうが良いでしょう。 2.事業承継に対する税金 A:贈与 贈与による事業承継には贈与税が発生します。 贈与税は、資産から債務を引いた額から、さらに110万円を引いた額にかかります。 □資産・・・不動産などの固定資産、預貯金、商品、機械類など □債務・・・借入金、未払金、買掛金など 贈与税 = (資産 - 責務) ー 110万 × 課税率 B:相続 相続によって事業承継する場合、相続が発生した時点を基準に評価額を査定し、後継者に課税されます。 評価額には、固定資産や棚卸資産など不確定な要素も含まれますので、課税額が膨らむこともあり注意が必要です。 C:M&A 売買・M&Aによる事業承継は「譲渡所得」に当たり、所得税がかかります。

まとめ

個人経営の事業では事業主が債務を個人保証している場合が多いので、この債務保証が事業継承の大きな妨げになっています。 銀行などとの交渉をおこない、負の部分は引き継ぐ前に整理するのが理想ですが、資産・負債を明確にし後継者に説明して理解を得ることが事業承継の第一歩と言えるでしょう。 事業承継の手続きは個人でも可能ですが、事業の状況によって提出書類が異なったり、税制面の知識が必要だったりと専門知識が必要です。 しっかりと手続きするためにも、税理士や弁護士といった専門家に相談し、計画的に事業承継の準備をしましょう。
PROFILE

善木 誠

岡山県岡山市在住でビジネスコンサルタント(株式会社スコーレメディア代表)として小規模事業者向けの経営コンサルタントをしています。 [資格]働き方改革マスター、個人情報保護審査員、経営士
先代の後を継ぐ。 実家が自営業の方は、いずれ継ぐか否かの大きな決断をすることになるでしょう。 一方で実家の家業ではなく、自分が本当にやりたいと思っている仕事に就きたい場合は、その板挟みになることも。 今回は、大阪は港区弁天町「寿司茶屋すし活」で、2代目を務める川口元気さんのインタビュー後編です。 前編では、寿司屋の2代目として働く傍ら、高校で英語教員としての顔を持つ川口さんの、教育への思いを伺いました。 後編では、そもそもなぜ寿司職人の道1本ではなく、教員とのパラレルキャリアを選んだのか、そして自らが「家業を継ぐ」ことについてお聞きします。 偉大な先代である父の後を継ぐ、2代目の覚悟と役割とは、一体何でしょうか?
<プロフィール> 川口元気(かわぐち・げんき)38歳 寿司茶屋すし活 2代目/高校英語教員 実家は国内外問わず人気を博す「寿司茶屋すし活(以下、すし活)」。 初代である父と共に、「すし活」の人気を支えている。 大学卒業後から家業を継ぎながらも、ツアーコンダクターや家庭教師派遣業務にも携わり、常にパラレルキャリアを実践する。 現在は寿司職人と同時に、大阪の私立高校で英語教員としても働いている。(現在は育児休暇中) 世界1周旅行やツアーコンダクターの経験から得た幅広い知見で、独自の英語教育を展開する。
※以前アントレnet Magazineでは「寿司茶屋すし活」の大将で、世界的に有名な寿司職人である、川口正弘さんにお話を伺いました。 「寿司茶屋すし活」大将、川口正弘さんの記事はコチラから! 世界一なんて、他人が決めた物差しでしかない。世界一の寿司職人が目指す、更なる“高み”

自分の「やりたい」を尊重する。寿司職人が、パラレルキャリアを選び続ける理由

ー前編では、まず元気さんの寿司職人と教員の二足のわらじについて伺いました。そもそもなぜ、寿司職人と教員のパラレルキャリアを歩もうと考えたのでしょうか?
元気さん 自分の興味の幅が広いからですかね(笑)。 幼い頃から父の背中を見ていて、寿司には興味はありましたし、一方で前編でお話したように、外国語にも興味がありました。 だから寿司職人だけでなく、自分が好きな外国語の勉強を生かせる英語教員や、バーの経営者、ツアーコンダクター、塾の講師など、その時に自分が興味を持った仕事に就きました。 せっかくやりたいことがあるのに、1つの仕事だけに囚われて、他のやりたいこと(仕事)を諦めてしまうのはもったいないなと思ったんです。
ー複数の仕事をこなそうとすると、時間の制約や業務量など、大変なことが多いと思います。元気さんはどのようにして複数の仕事をこなしているのでしょうか?
元気さん 今は育児休暇中なので少し異なりますが、僕の場合はシンプルに、仕事を曜日で分けていました。 月火水は英語教員、木金土は寿司屋で働く、といった具合に。 ちなみに二足のわらじ生活そのものは、今に始まったことではありません。 大学卒業後から、バーの経営をやっていた時もツアーコンダクターをやっていた時も、曜日で分けて複数の仕事をしてきました。
ー常にご自身がやりたいことを実践し続けるために、様々な工夫をされているのですね。
元気さん そうですね。 僕は自分の仕事を、 ①やらなければならないこと ②やりたいこと ③できること の3種類に分けています。 僕の場合は、①が家業である寿司屋、②は教員(その都度変わる)、③がツアーコンダクター、寿司屋といったところでしょうか。 ポイントは、②の「やりたいこと」を大切にするということです。
<元気さんが教室長を務める、知窓学舎大阪サテライト教室> ーそれはどういうことでしょうか?
元気さん ③の「できること」というのは、すなわちその仕事で、しっかりお金を稼ぐことができる、という意味です。 生計を立てられる仕事の種類が増えれば、どれかの仕事を急にできなくなってしまったり、あるいは仕事がなくなってしまっても、致命的なダメージを受ける可能性は低くなります。 他の仕事である程度収入のカバーができますからね。 先程もお話した通りポイントは、②の「やりたいこと」を尊重すること。 なぜなら②の「やりたいこと」をやった結果、いずれ③の「できること」、すなわちお金を稼ぐ仕事へ変わっていくからです。 「好きこそものの上手なれ」ということわざにあるように、自分が「やりたい」と思っていることになら熱心に打ち込むことができますし、好きではない仕事をするより、上達が早くなります。 自分が「できること」(お金を稼げる仕事)を増やすためにも、自分にとってやりたいことを常に尊重するのは大切なことだと思っています。

先代と自分を比べる必要はない。「資本主義より“幸せ主義”」を支える、2代目の役割

ー①の「やらなければならないこと」についてですが、やはり寿司屋は「家業だからやらなければならない」ということでしょうか?
元気さん 一応便宜上、①を家業である寿司屋の仕事について書きましたが、正直「やらなければならない」というほど、肩肘を張っているわけではないですけどね(笑)。 あくまで自分のやりたいことの1つでもあるので、そういった意味では②と③にも当てはまるんですが、やはり寿司屋に関しては、自分の生い立ちや境遇も関係してくるものですから。
ーこどもの頃から寿司屋を継ぐことを考えていたのですか?
元気さん そうですね。こどもの頃は「自分もいずれ寿司職人になるのかなあ」くらいに、漠然としていましたけど(笑)。 一方で「絶対に店を継がなければいけない」という意識はなかったです。先代である父からも、継ぐことを強制されたわけではありませんし。
ーしかし、大学を卒業してすぐ寿司職人の道を進むことになるんですよね。
元気さん はい。ターニングポイントになったのは、自分が外国に行った時でした。 就職を考える時期になって、いよいよ寿司職人になることが現実味を帯びてきた時、急に逃げ出したくなったことがあるんです。
ーやはり、先代の背中の大きさでしょうか?
元気さん そうですね(笑)。 「寿司職人になること」が現実味を帯び始めた途端、寿司に関して世界一と言われる程、圧倒的なスキルを持つ父の後を継ぐことに、かなりのプレッシャーを感じるようになったんです。 「2代目になって味が落ちた」と言われるのは、やっぱり怖いなあと。 そこで一度家を出て、外国へ逃亡してみました(笑)。 逆説的ですが、実はそこで寿司職人になる決心が固まったんです。
ーなぜでしょう?
元気さん 外国に行くと、日本の文化についてめちゃめちゃ聞かれるんですよ。ましてや日本が好きな方と会話する時はなおさらです。 周知の通り、日本の「寿司」という食文化は外国でも圧倒的な人気を誇ります。それこそ「すし活」にも、日本だけでなく海外からも多くのお客さまがいらっしゃいますし、海外メディアからの取材も多く受けてきました。 外国の人は僕の実家が寿司屋だと知ると、目をキラキラさせていろんなことを聞いてきてくれました。 そこで思ったんです。 そんな世界が注目する寿司文化というステージで仕事ができるなんて、冷静に考えたらなかなか経験できることじゃないですし、寿司を通して日本の文化をもっと世界へ発信していきたいなと。
ー日本を離れてみて改めて、自分のルーツを知ったんですね。
元気さん はい。 こうして寿司屋で働くことを決めたのですが、ただ漠然と寿司屋で仕事をするのではなく、もっと僕にしかできない役割を考えながら仕事をしようと思ったんです。
ー元気さんにしかできない役割とは、具体的にはどのようなことですか?
元気さん 例えば、食材の仕入れやその仕込みといった下準備、父と一緒にお客さまの接客、海外からのお客さまへの対応、お金周りを始めとする、店に関するその他の業務などですね。 もちろん僕自身も寿司を握ることはありますが、やはり「父の握る寿司のレベル」には及びません。 しかし父が握るその寿司は、僕が仕入れたもので、父が握れるように仕込んだものなんです。 父のような寿司が握れずとも、その父を支えることはできます。 父が店作りで大切にしている「資本主義より“幸せ主義”」という理想を叶えるには、きちんと現実をしっかりと見た上でサポートする人間が必要ですから。 ※資本主義より“幸せ主義”とは、利益重視ではなく、少数のお客さまの満足度を最大限に高める経営スタイルのこと。 https://entrenet.jp/magazine/10895/
ー寿司屋にとって「寿司を握る」という役割と同じかそれ以上に、寿司を「握る前」と「握った後」は大切ですからね。
元気さん そうなんです。 無理に先代と自分を比べる必要なんてないんですよ。僕は僕のやり方で「すし活」を盛り上げていければいい。 「すし活」に来てくださるお客さまは、そのお客さまにとって特別な日に来てくださることが多いです。 そんな特別な時間を、最高のおもてなしでお出迎えしたい。僕も父も、そこにかける想いは同じです。 見ている方向が同じなら、後は役割分担をするだけ。父は父の、僕は僕の得意なことをやっていければと思います。

「自分の代で、家業を畳む覚悟があるか?」― “家業を継ぐ者”としての責任

ー現在は先代と共にお店を営まれていますが、いずれは先代も引退される日が訪れると思います。その時、元気さんは「すし活」をどうしていこうとお考えですか?
元気さん 具体的には考えていませんが、その時の自分の中の「最善のやり方」でお店を継ごうと思っています。 例えばスポーツのチームでも、同じですよね。ある選手が引退したら、その時に在籍している選手で最善の布陣を組んで試合に臨む。 うちの店にも限らず、どんな会社でもそうですが、先代と同じことをやる必要はないんですよ。 経営者なら、その「最善」考えていくことが大切だと思います。
ーでは最後に、家業を継ぐかどうか迷っている人へアドバイスをいただけますか?
元気さん 人によって様々な事情があるとは思いますが、僕はやっぱり、自分がその家業を楽しめないのなら、無理に継ぐ必要はないと思います。 家業を継ぐことは、正直そんな簡単なことではないからです。
ー家業を続けるにはそれ相応の覚悟が必要、ということでしょうか?
元気さん そうですね。 どんな家業にも歴史があるわけですが、僕は自分の店を、自分で終わらせてもいいくらいの気持ちで日々働いています。 自分が楽しいと思えない、つまり本気になれない仕事をダラダラと続けるくらいなら、いっそ店を畳んでしまった方がいい。 それはここまで家業として続けてきてくれた、先代たちへの敬意だと思いますし、仕事をする上での最低限の礼儀だと思っています。 逆に、自分が継がせる立場になった時、こどもが僕と同じかそれ以上にこの仕事を楽しめないなら、無理に継がせようとは思っていません。 そうなった時に自らの手で店を畳む覚悟を持っているからこそ、毎日の仕事に悔いが残らないように楽しんで続けていきたいですね。
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