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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第135回・半年後のコスト

独立ノウハウ・お役立ち

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

食料品や日用品、エネルギー価格などの値上げラッシュが続いています。さて、今回のクイズは直感でお答えください。あなたはラーメン店を経営しているとして、半年後にあたる2023年4月頃のお店の「コスト」はどうなっていると思いますか?

増えているでしょうか。減っているでしょうか。今と同じくらいで変わってないでしょうか。

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

2022年に入り、食料品やエネルギー価格などの値上げが立て続けに起こっています。

特にこの10月には今年最大といわれる約6700品目が値上がりしました。9月末に慌てて量販店やスーパーなどに買い物に走った人も多かったのではないでしょうか。

こうした値上げラッシュを引き起こす原因は大きく分けて3つ考えられます。

1つ目は急激な円安。
2つ目は原油高。
そして3つ目が、小麦高です。

今回のクイズは、「この先もこうした値上げが続くのか、どうなのか」というところを読み解くことができれば、自ずと答えが見えてくるはずです。

それでは解説します!

ではさっそく、値上げを引き起こしている3つの要因それぞれが、今後どのように推移しそうかを考えてみましょう。

まずは円安ですが、今年10月20日には32年ぶりの円安水準となる1ドル=150円台をつけました。昨年末からの下落幅は大きく、まだまだ底が見えない状態が続きそうです。

続いて原油高ですが、ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、一時は1バレル(約159リットル)あたり100ドルを超え、今年6月には120ドルという非常に高い値をつけました。しかし、その後は少しずつ下落し、ウクライナ侵攻の前の水準に近づきつつあります。

それを受け、アメリカではガソリンの価格が落ち着き始めました。1ガロン(約3.8リットル)あたり5ドル以上で推移していた時期もありましたが、3ドル台にまで下がってきています。この流れは間違いなく日本にも波及します。つまり、国内でもあと数カ月もすればガソリンの価格は下がってくると考えられます。

最後に小麦高です。小麦というものは価格が管理されている製品で、政府が一度まとめて買い上げて、価格を決め、その価格で業者に卸す仕組みが取られています。

ここ1年ほどで小麦の価格が急激に上がっているのはご存知の通り。国際小麦価格を見ても、今年2月に390ドル50セント、5月には522ドル29セントまで上がっており、この流れでいくと10月には同様に30%近く上がってもおかしくありませんでした。

しかし、岸田総理は10月以降の輸入小麦価格を据え置くことを発表しています。ウクライナが小麦などの輸出を再開したこともあり、明るい兆しが見え始めています。

原油と小麦の値上げのピークはすでに超えた!?

これらの状況から分かることは、3つの要因のうち、「原油」「小麦」についてはすでに値上げのピークは超えている可能性があるということです。

ガソリンの価格はタイムラグがあるためまだまだ高い印象ですが、原油高が下がるということは、電気代もガス代もこれ以上、上がるとは考えにくい状況でしょう。

また、小麦の価格が下がってくれば、原材料費の値上がりは避けられます。場合によっては、ウクライナ侵攻前の水準にまで下がる可能性もありそうです。

となると問題は円安だけで、これについては先行き不透明です。

……というのが、みなさんのこれからの経営環境なのです。

必要以上の価格転嫁はしなくてもいい状況が見込める

この1年は特に、あらゆる業種においてコストが上がり続け、非常に苦しい状況だったと思われます。しかし、この先の数カ月から半年くらいを想定すると、コストが上がる要因は転換してきたといえそうです。

つまり、「兆し」が見え始めたのと同時に、必要以上の価格転嫁はしなくてもいい状況になっていく、といえるかもしれません。

もちろんまだまだ予断は許さないですが、こうやって取り巻く状況をチェックして先を見越しておくことは、戦略思考トレーニング的には非常に大切なことです。ぜひ参考にしてください。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「コストは2022年10月よりも下がる方向にある」でした。値上げラッシュは家計に直撃します。少しでも賢く生活していきたいものですね。

構成:志村 江

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PROFILE
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

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