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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第9回・ソフトバンクの「SUPER FRIDAY」

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第9回・ソフトバンクの「SUPER FRIDAY」

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

Q.ソフトバンクが、2016年10月から不定期で「SUPER FRIDAY」というキャンペーンを始めました。同社のスマートフォンを使っているユーザーが、毎週金曜日に特典を受けられるということで、大きな話題となっています。さて、とあるインタビュー記事で、このキャンペーンを企画した同社の部長さんは、実施したことで何が一番よかったと言っているでしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

ソフトバンクが不定期で実施している「SUPER FRIDAY」。ソフトバンクのスマートフォンを使っているユーザーが対象で、毎週金曜日に必ず特典がもらえるという、斬新なキャンペーンです。

吉野家の牛丼、サーティワンのアイスクリーム、ミスタードーナツのドーナツ、ファミリーマートのチキン、セブン-イレブンのアイスやコーヒーといった商品が無料でもらえるとあって、多くのソフトバンクユーザーがお店に殺到したのは言うまでもありません。

過去にあったいろいろなキャンペーンと比べてみても、思い切ったアプローチで始まった施策であることは間違いなく、インパクトは相当なものでした。実際に他の携帯電話会社も、後追いで似たようなサービスを始めています。

それでは解説します!

2016年10月は吉野家(金曜日ごとに牛丼並1杯)、11月はサーティワン(同レギュラーシングルコーン1つ)、12月はミスタードーナツ(同ドーナツ2個)で実施されましたが、この3カ月間でキャンペーンを利用して商品の提供を受けた人は全国で1200万人と発表されています。

1回の商品の価格を300円と考えて単純計算すると、実に36億円がソフトバンク利用者に還元されたということになります。

ソフトバンクと各パートナー企業の間でどのような費用分担になっているのかは公開されていませんが、いずれにしても「パートナー企業と合同で36億円のキャンペーンをした」ということで間違いないでしょう。

私の見解では、このキャンペーンは新規客を集客する広告宣伝よりも「既存ユーザーに対する販促」に力を入れたというふうに捉えています。というのも、とあるインタビュー記事で同社の部長さんが、「SUPER FRIDAY」の実施を受けて「これほどまでに『ソフトバンクでよかった』と感謝されたことはなかった」とコメントしていたのです。

ソフトバンクも含め、日本の携帯電話会社のほとんどは、これまでは「集客」に力を入れる傾向にありました。「他社でなくうちと契約してね」というメッセージを前面に出し、乗り換えを推奨する様々なキャンペーンを打つなど、利用者を増やすためにあの手この手を考えていたように思えます。

しかし、「SUPER FRIDAY」はソフトバンクユーザーという「既存顧客」に向けたものでした。「ソフトバンクでよかった」という反応が、それを物語っています。

そういう意味で、このキャンペーンは「顧客還元の象徴」のように見えて、非常に興味深いものでした。

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開業後の集客も大事だが、顧客還元も必要!

さて、独立開業して新しいビジネスを始めようと考えている人のほとんどは、「どうやってお客を集めるか」を第一に考えます。「集客コスト」にいかにお金を使うかは、経営者として最初に直面する1つの課題でもあります。

そしてそれは、ある程度基盤が固まるまでは仕方がない話です。お客さんがいなければ、事業が成り立たず、続けていくこともできないからです。

ただ、ある程度の集客によってお客さんがついたら、どこかのタイミングで、そのお客さんたちに喜んでもらうための投資に切り替えなければならないでしょう。それをしないと、「お客を獲った・獲られた」ということをずっと気にし続けることになり、事業を前に進める力が削がれる可能性があるからです。

自分だけが嬉しいのではなく、お客や、パートナー企業・関連会社、仲間など、みんなが喜ぶ方法を考えていくということが、ある程度、集客ができたところで重要になってくる、というわけですね。

そして、この「SUPER FRIDAY」というキャンペーンは、そのことに気付かせてくれる1つのきっかけのようにも思えるのです。

マーケティングを取り入れたキャンペーンの例

ソフトバンクでもう1つ思い浮かぶものがあります。同社のスマートフォンを使っていると、ヤフーショッピングで買い物をする際に、他のキャンペーンとあわせて最大でポイントが20倍になるというキャンペーンです。

これは、マーケティング調査によってソフトバンクユーザーがあまりヤフーショッピングを利用していないというところから生まれたキャンペーンのようですが、結果的にヤフーショッピングは大幅に売り上げを伸ばしており、ソフトバンクも、ソフトバンクユーザーも、ヤフーも、みんなが嬉しいキャンペーンになっているわけですね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「ソフトバンクでよかったと感謝されたこと」でした。ソフトバンクのスマートフォンを使っている方はご存じだと思いますが、「SUPER FRIDAY」は2017年も続いており、6月末時点で2017年8月&10月の実施も決まっているとのこと。追随する他社の取り組みとあわせて、目が離せませんね。


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プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズアタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。

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