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結局、経費ってどこまでOKなの? 経費に関する疑問を、税理士が解説!

結局、経費ってどこまでOKなの? 経費に関する疑問を、税理士が解説!

副業を解禁する企業も増え、会社員の傍ら、個人事業主として活動する方も増えているかと思います。

また、ウーバーイーツの配達員やYouTuberなど、働き方も多様化してきています。

そんな時代の中で、私が税理士として個人事業主の方から受ける相談で最も多いのが、"どこまで経費として認められるの?”といった内容の相談です。

例をあげると、こういった質問です。

自宅兼事務所の家賃は何%まで経費計上できますか?

取引先の人と一緒に映画を見に行ったけど、経費計上できますか?

車を買いたいのだけど、全額経費にできる?

この場合、実際に税理士や税務署の人はどのように「必要経費」を判断しているのか、気になっている方も多いでしょう。

結論から申し上げると、以下の3つのステップを踏まえて考えて判断してみましょう!

<経費判断の枠組み>
(ステップ1)
「大原則」に照らす(所得税法や裁判所の裁判例、国税庁が発表している指針=基本通達などに事実を当てはめて検討する)
  ⇩
(ステップ2)
過去の事例に照らす(過去の税務調査事例や、裁決事例、税務雑誌等を参考にする)
  ⇩
(ステップ3)
一般常識に照らす

※実際の検討・思考フローは、先に一般常識から結論を考えて、その結論にあうような法律的な根拠や、過去の似たような事例を探るということもあります。

「大原則」を理解するメリットは、

・経費になるか否かある程度予測ができるようになる!
・税務調査が来ても経費となる根拠を堂々と説明ができるようになることです!

そこで今回、個人事業主の方が絶対に押さえておくべき、必要経費の「大原則」について、事例も交えてお伝えします!

経費計上できるか迷ったとき、まず最初にここに立ち返って下さい!

【経費計上の大原則】〜なぜあの人は経費にできて、私はできないの編~

個人事業主の方(事業所得がある方)が、ある支出を経費計上できるか迷ったとき、何を拠り所に判断すれば良いのでしょうか。

ネットで調べる、知人の個人事業主に聞く、税理士に聞く。という方もいるでしょう。

実は必要経費の考え方について「所得税」という法律にその答えが書いてあります!

事業所得を計算する上で、必要経費に算入できる金額は、次の金額です。

(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額

(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

国税庁:No.2210 やさしい必要経費の知識

法律を読むには文言の解釈が必要です。
しかし、この文言をみても何が必要経費かを解釈するのが難しいです。

「〇〇は経費とする」「〇〇は経費とならない」というような法律の作りにはなっていません。

しかし、ここの文章に大事なポイントが隠れています!

「その総収入金額を得るために直接要した費用の額」とあります。

つまり、

・収入を得るための活動と直接な因果の関連性があり、客観的にみて必要な支出は必要経費としてOK
・業務関連性がない経費は必要経費としてNG

ということです。

これが全く同じ日に同じものを買っても、「あの人は経費として認められるのに、私は経費として認められない!」ということが起きる理由です!

(例)飲食店を営むAさんがお店で提供するためにスーパーで食材を仕入れたとします。その仕入にかかった支出は、お店で顧客に提供する料理として売上を得るために関連性があると言えます。そのため、「必要経費」として認められます。

美容室を営むBさんがAさんと同じスーパーで同じ食材を買ったとしましょう。Bさんの場合は、「必要経費」として認められる可能性は低いでしょう。

なぜなら、Bさんが食材を買ってもBさんが営む美容室の売上に関連がありません。また、印刷業の売上に直接貢献することは考えにくく、単なる消費行為とされるためです。

ただ、Bさんの美容室のお得意様を自宅に呼んで接待するための料理を作るために食材を買った場合はどうでしょう。

その場合は、Bさんとお得意様の関係を良好なものにし、売上獲得に貢献する可能性があるため、必要経費として認められる可能性があります。

<この章のまとめ>

・必要経費について、法律(所得税法)に定められています。
・法律(所得税法)では必要経費の内容について、個別に定められている訳ではありません。総括的に、こういうものが必要経費だよ、というような定め方がされています。
・それゆえ、必要経費か必要経費でないか判断に迷うという訳ですね。
・個人事業主が必要か否か迷ったときに最初に判断する大原則は、収入を得るための活動と直接な因果の関連性があり、客観的にみて必要な支出は必要経費としてOKということです。

【経費計上の大原則】~経費にならないものを知っておく編!~

経費とは何か、というアプローチは逆に経費にならないものは何か、ということを理解しておくと、さらに「必要経費」の考え方が深まります。

必要経費にならないものは、国税庁の「やさしい必要経費」で列挙されています。こちらをみていきましょう!

国税庁:No.2210 やさしい必要経費の知識

(2)必要経費になるものとならないものの例

イ 生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃などは×
これは、土地や家屋に限らずその他の資産を借りた場合も同様です。ただし、例えば子が生計を一にする父から業務のために借りた土地・建物に課される固定資産税等の費用は、子が営む業務の必要経費になります。

ロ 生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金(青色事業専従者給与は除きます。)は×

(注)青色申告者でない人についての事業専従者控除の金額が、必要経費とみなされます。

解説:生計を一にする配偶者や親や子供などの親族に払う給与賃金も、青色専従者給与としての要件を満たせば、必要経費として認められる可能性があります。青色申告でない白色申告の方も、一定の要件を満たせば必要経費とみなされます。

ハ  業務用資産の購入のための借入金など、業務のための借入金の利息は必要経費になります。

ニ 業務用資産の取壊し、除却、滅失の損失および業務用資産の修繕に要した費用は、一定の場合を除き必要経費になります。

ホ 事業税は全額必要経費になりますが、固定資産税は業務用の部分に限って必要経費になります。

ヘ 所得税や住民税は×
解説:税の仕組みとして、税引前の所得から納付するという制度になっているため、必要経費になりません。消費税や印紙税、事業税など、必要経費としての要件を満たせれば、必要経費に入れてOKです。

ト 罰金、科料および過料などは×

チ 公務員に対する賄賂などは×
解説:違法な支出を必要経費として認めていないのは、違法行為を助長することになるためです。

<この章のまとめ>

(必要経費OKなもの)
 ・親族に対する給与は一定の場合
 ・業務用資産の購入のための借入金など、業務のための借入金の利息
 ・事業税、消費税、固定資産税(業務用の部分に限る)

(必要経費NGなもの)
 ・生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃
 ・所得税、住民税
 ・罰金、過料
 ・賄賂など

解説では、それぞれ経費になる理屈、ならない理屈を記載しました。理屈を知っておくと思い出しやすくなるかと思います。

【経費計上の大原則】~◯%までは経費として認められる?編~

さきほど、経費にならないものを押さえておくことが重要とお伝えしました。

その中でも「家事費」「家事関連費」と呼ばれる、必要経費の算入が制限されるものを押さえておくことが大事です!

大原則となる根拠となる所得税の条文と所得税法施行令、基本通達を下記列挙しますが、読み飛ばしても構いません!

【所得税法】

(家事関連費等の必要経費不算入等)
第四十五条 居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000096

【所得税法施行令】

(家事関連費)
第九十六条 法第四十五条第一項第一号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。
一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
二 前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000096

【国税庁:基本通達 法第45条《家事関連費等の必要経費不算入等》関係〔家事関連費(第1号関係)〕】

〔家事関連費(第1号関係)〕
(主たる部分等の判定等)
45-1 令第96条第1号《家事関連費》に規定する「主たる部分」又は同条第2号に規定する「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定する。

(業務の遂行上必要な部分)
45-2 令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/07/01.htm

家事費」・・・消費に対する支出のことを言います。必要経費になりません。

家事関連費」・・・一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある支出の事を言います。必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。

(例)店舗併用住宅に係る費用(租税公課、家賃、水道光熱費など)

※実務上「家事費」と「家事関連費」を区別することは結構難しいです。

個人事業主の方が、一番悩むのはこの「家事関連費」でしょう。
プライベートと業務の両方でも使う車、携帯電話の使用料、自宅兼事務所等、判断が難しい所です。

良く聞く◯%までは経費として認められるっていう話は、この「家事関連費」に関する支出であることが多いと思います。

例)冒頭でも紹介した取引先と一緒に行った映画を見に行ったときの支出はどうでしょう。
一般的には、映画は娯楽行為として「家事費」にあたるでしょう。
取引先と親睦を図る目的であったとしても、一般的には難しいでしょう。

しかし、この方も取引先も映画事業を営む方で、現在制作している映画のための調査研究として見に行った場合はどうでしょう。

この場合、業務との結びつきや、支出の客観的な必要性は高いと言え、「必要経費」になる可能性が高いです。

<この章のまとめ>

・「家事費」と「家事関連費」の概念を覚えておく。
家事費は必要経費にならない。家事関連費は、業務上直接必要で明確に区分できる場合、その区分できる金額は必要経費になる。

・実際の家事按分の仕方は、ある程度客観的に認められている方法を知ることが早道です。
参考に家賃の家事按分の参考サイトを下記、紹介します。

【個人事業主必見】家賃を経費として計上する方法とその際の注意点

・使用実態(使用時間や使用面積等)取引記録や根拠を残しておきましょう!

今回のまとめ

「必要経費」について、必ず抑えておくべき大原則をお届けしました。

・必要経費の大原則
・経費にならないもの(覚えておくべきもの)
・経費にならないもの「家事関連費=店舗併用住宅に係る費用(租税公課、家賃、水道光熱費)のような経費の考え方)」

まずは、「必要経費」の大原則の考え方を理解することが大切です!

また、「必要経費」にならないものも理解することにより、「必要経費」の範囲がさらに明らかになってきます!

ステップ2では、
実際の事案を大原則に当てはめて「必要経費」の判定をするにあたり、過去に近い事例がないかを調べていきます。

実際の事例の調べ方をお伝えします!

例えば、書籍やネットで調べたり、国税不服審判所の裁決事例などにより過去の似たような事例を調べます。

※ステップ1を飛ばしてステップ2のみで経費になるかを判断しようとすると、誤った結論を導いてしまう可能性があります。

例えば、自宅家賃のお話をします。
自宅の家賃について世間では30%~50%なら必要経費OKと言われているからと言って、何となくで判断してしまう方がいます。
大原則でお伝えしたとおり、まずは自宅の家賃が業務活動に関連しているか検討する必要があります。

別の場所にオフィスを借りており、自宅ではただ寝るだけの場所ですという場合、業務活動に関連性があるとは言えないため、自宅の家賃は必要経費として認められません。

このような誤った結論を導いてしまう可能性があります。

次回もお楽しみに!

文=齋藤 雄史
編集=内藤 祐介

<プロフィール>
齋藤雄史さん
税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。

高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。

合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。

ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。

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