起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第147回・鉄道計画の是非
いきなりですが、クイズです!
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
シャワーヘッドがよく売れているそうです。
最近はいろいろなメーカーからたくさんの種類のシャワーヘッドが売られるようになりました。交換も簡単であることから、好きなものに買い換えて使っている人が増えているようです。
値段もピンキリで、数千円のものから、何万円もするような高級品もあります。それだけ機能もさまざまで、いろいろなニーズに合わせて商品が用意されているということなのでしょう。
それでは解説します!
なぜそんなに売れているのかをホームセンターの人に聞いてみたところ、買い換える理由となる「交換することによるメリット」が、大きく3つあるという話をしてくれました。
1つ目が、節水効果です。
商品によっては、シャワーの出る部分の穴を小さくしたり、水圧を高める工夫がされていたりするそうです。少ない水量でも強い勢いのシャワーを出せれば、水道代を節約することができますよね。
2つ目が、美容効果です。
これはCMなどで見かけることも増えているので、ここ数年のトレンドといえるかもしれません。肌ケアなどが期待できる美容効果のある特殊仕様のシャワーヘッドが増えているようです。
特に最近は、マイクロバブルといわれる微細な気泡を発生させるシャワーが人気だそうですが、こうした美容的な側面から交換する人が多くなっているのだとか。
そして3つ目が、意外と盲点だと思うのですが、節ガス・節電効果です。
確かに、節水効果によって使う水の量が少なくなれば、その分、沸かすお湯の量も少なくて済みますよね。結果として、ガスや電気の節約にもつながるわけです。
こうして考えたらすごく当たり前の話なのですが、意外と見落としがちな部分かもしれませんね。
急に低価格帯の商品が売れ始めた!
このシャワーヘッドの話が一体、何の話なのかですが、商品やサービスがヒットする時に、意外と「本当の理由」には気がつかないことが多い、ということなんです。
最初にメーカーがシャワーヘッドを売り始めた頃は、節水のニーズがほとんどで、その機能に特化した商品ばかりでした。ただ、それだけだと節水に興味がある人しか買ってくれませんよね。
大事なのは「その先」を考えられるかで、節水シャワーヘッドの場合はそれが「美容」というキーワードでした。
改良によってさまざまな機能を持つ商品が生まれ、美容効果を期待する、より多くの人に訴求できるようになったわけです。結果、これまでの商品よりも高額な売れ筋商品がたくさん出始めました。
そして最近の傾向として、それよりももっと安い、数千円で買えるような節水シャワーヘッドが急に売れ始めたのです。最初は、お店側もそれがなぜだか分からなかったのだそうです。
それで調べてみたところ、どうやら原油高によるガス代や電気代の高騰で、節ガス・節電を考えている人が慌てて買い換えているケースが非常に多いことが分かったというのです。
まさに、ヒット商品の意外な理由、というわけですね。
調べてみると意外なことが分かったりする
今回の3つの理由でいうと、すでに人気のシャワーヘッドという商品が、盲点ともいえる3番目の理由で売れ始めたわけです。売れている商品であっても、なぜ売れているのかを調べてみると、そこに意外な理由があったりするものです。
それが分かってからは、実際に多くのホームセンターでは節ガス・節電を売り文句にシャワーヘッドの営業に力を入れているそうです。
商品が売れる「本当の理由」というのは、調べてみないと分からなかったりしますし、なかなか面白いですね。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「節水効果、美容効果、節ガス・節電効果」の3つでした。オール電化の家も増えていることから、特に節電需要は今後も増えるかもしれません。そこに着目した新たな商品が出てくるかもしれませんので、注目したいと思います。

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博
構成:志村 江