サラリーマンとして働きながら副業をすることはもちろん、会社設立することもできます。副業として事業に取り組み、事業が安定してから脱サラした方が収入面でも安全ですし、会社設立には節税効果もあります。ただ、すべてのサラリーマンが会社設立による節税効果を得られるわけではありません。人によっては、会社を設立せずに個人事業主でいた方が得な場合もあります。本記事ではどのようなサラリーマンが会社設立による節税効果を得られるのか、ケース別に解説します。
サラリーマンでも会社設立ができる?
「サラリーマンが会社設立」というと、脱サラを思い浮かべる人が多いかもしれません。また、「サラリーマンが副業」というと、法人ではなく個人事業主として副業をするイメージもあるかもしれません。
しかし、サラリーマンのままでも会社設立はできますし、人によっては個人事業主よりも会社設立をした方が節税できることもあります。本記事ではどのようなサラリーマンが会社設立により節税できるのかを解説しますが、その前に会社設立(法人)と個人事業主の違いを確認しておきましょう。
会社設立(法人)をした場合と個人事業主との違い
会社設立(法人)をした場合と個人事業主には、おおむね次のような違いがあります。
会社設立は個人事業主として開業する場合と比較すると、手間も費用もかかります。その分、会社を設立する方が社会的信用度は高く、利用できる資金調達の種類は多く額も大きいです。
ベターなのは、まずは個人事業主として小さく始めて、年間の事業所得が500万円を超えたあたりから会社設立をすることです。
サラリーマンが会社設立で可能となる節税の種類
サラリーマンの会社設立で節税できるのは、所得税と住民税、消費税が主です。取り組む業種、仕入れやよく購入する備品によっては、経費に計上できるものも多くなるでしょう。
所得税の節税
サラリーマンの会社設立で所得税が節税できるかどうかは、所得の金額により変わってきます。所得税の税率は個人事業主なのか法人なのか、所得がいくらあるのかにより変動します。具体的には、次の表の通りです。
【個人事業主の所得税】
【法人の所得税】
所得金額が330万円を超えると個人事業主の税率が20%、法人の税率が15%もしくは19%で、法人の方が税率は低くなります。
ただ、実際には住民税や会社設立にかかる費用との兼ね合いもあり、「330万円を超えたら会社設立をした方がお得」とはいえません。目安として、事業所得が年間500万円を安定して超えるようになったら、会社設立をするのがいいでしょう。
消費税の節税
個人事業主でも法人でも、「開業2年目以降」「前々年の課税売上高が1,000万円を超える」の2つの条件を満たすと、基本的に消費税がかかるようになります。この消費税は、自社の売り上げに対してかかります。
個人事業主でも法人でも、消費税率は7.8%、地方消費税率は2.2%で計10%です。
ただ、法人は飲食料品や定期購読の新聞などに対して、軽減税率8%(消費税率6.24%、地方消費税率1.76%)が適用されます。事業所得が500万円を超え、経費に占めるこれらの割合が多いなら、消費税の節約による効果も大きくなるでしょう。
経費による節税
個人事業主と法人では、経費にできるものが違います。法人の方が経費にできる範囲が広く、節税もしやすいでしょう。
【個人事業主が経費にできるもの】
・ボールペンやノートなどの消耗品
・従業員への給与
・電気料金
・家賃
・通信費
・打ち合わせ時の飲食費 など
自宅を職場として兼用している場合、電気料金や家賃、通信費などは仕事に使う割合だけを経費にできます。例えば自宅面積の3割がオフィス、残り7割がプライベートなスペースなら、家賃の3割を経費にできます。
法人の場合は、個人事業主が経費にできるものに加え、健康診断の受診費用なども経費にできるようになります。
【法人が経費にできるもの】
・個人事業主が経費にできるもの
・健康診断費
・交際費
・福利厚生費
・保険料 など
サラリーマンが会社設立で節税できるケースは?
会社設立をすればとにかく節税できる、というわけではありません。会社設立には20万円ほどの費用がかかりますし、住民税は個人事業主の場合は10%ですが、法人の場合は「法人税の12.9%+5万~300万円の均等割」と高めです。人によっては、節税どころかむしろ余分なお金が出て行ってしまいます。
サラリーマンが会社設立で節税できるケースには、次のようなものがあります。これらに当てはまるようになったら会社設立をし、個人事業主から「法人成り」するといいでしょう。
【サラリーマンが会社設立で節税できるケース】
・不動産収入があるケース
・事業所得が500万円を安定して超えるケース
・売上高1,000万円超かつ軽減税率が適用されるケース
不動産収入があるケース
サラリーマンの会社設立で節税できる1つ目のケースは、「不動産収入があるケース」です。
マンションや駐車場などを運用しているサラリーマンで、「給与と不動産収入の合計が900万円を超える」場合は、会社設立をしてしまった方が節税できるでしょう。サラリーマンとしての給与と不動産収入の合計額に基づき、確定申告をするからです。
給与所得と家賃収入の合計が900万円を超えると、個人事業主の税率は33%です。合計額が1,800万円を超えると40%、4,000万円を超えると45%と、その後も税率は上がっていきます。
それに対し、法人の場合は23.2%であり、それ以上税率が上がることもありません。
【個人事業主の所得税】※再掲
【法人の所得税】※再掲
事業所得が500万円を安定して超えるケース
サラリーマンの会社設立で節税できる2つ目のケースは、「事業所得が500万円を安定して超えるケース」です。
事業所得が高くなればなるほど、会社設立による節税効果は大きくなります。所得330万円を超えた段階で、所得にかかる税率は法人の方が低くなるからです。
【個人事業主の所得税】※再掲
【法人の所得税】※再掲
ただ、株式会社設立には最低でも24万円の費用がかかります。そのうえ、住民税は個人事業主なら一律10%ですが、法人は「法人税の12.9%+5万~300万円の均等割」と割高です。
これらを加味すると、年間の事業所得が500万円を安定して超えるようになってから会社設立をすると、節税効果も高くなるといえます。
売上高1,000万円超かつ軽減税率が適用されるケース
サラリーマンの会社設立で節税できる3つ目のケースは、「売上高1,000万円超かつ軽減税率が適用されるケース」です。
事業主に対する消費税は、前々年度の売上高が1,000万円を超えている場合にかかります。法人は「食料品」や「定期購読の新聞」にかかる消費税に軽減税率が適用できるため、その分、節税効果も高くなります。
ただ、事業所得が500万円を安定して超えるようになった時点で、個人事業主よりも法人の方が節税効果は高いです。サラリーマンが副業として取り組む業種で「経費を引いていない売り上げと、経費を引いた後の利益である所得の差が大きい」ということもあまりないでしょう。節税効果の高くなる目安は、やはり事業所得500万円といえます。
会社設立よりも、個人事業主の方がお得なケース
サラリーマンが会社設立をするよりも個人事業主として開業する方がお得になるのは、「売り上げや利益が低いケース」です。以下の消費税の表を見てわかるように、事業所得が低いうちは個人事業主の方が所得税は低いです。
【個人事業主の所得税】※再掲
【法人の所得税】※再掲
会社設立にかかる費用や住民税を考えると、事業所得が500万円を超えないうちは個人事業主として事業を行った方がいいかもしれません。
サラリーマンの会社設立が節税になるかどうかは人による
サラリーマンの会社設立が節税になるかどうかは、人によります。事業所得が低いうちは、法人よりも個人事業主の方が税金は低いです。まずは事業所得500万円を安定して超える状態を目指し、会社設立はそれから考えてもいいでしょう。
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