起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第127回・画期的な防犯対策
いきなりですが、クイズです!
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
毎日暑い日が続きます。エアコンなしでは生活できないという人も多いでしょう。
電力使用が急激に増えている影響を受けて、政府は全国で節電要請を行い、国民に対して無理のない範囲での節電への協力を呼びかけています。
そんな中で注目を集めているのが、野村総研によるあるレポートです。実は11年前に出されたもので、震災復興のために家庭でできる主な節電対策と期待される節電量をまとめています。
今回クイズにした「もっとも期待節電量が多い方法」は、レポートによると「エアコンを消す」のに比べて1.7倍の節電効果があるとのこと。しかし、これがメディアから黙殺されているのです。
それでは解説します!
そもそも今の節電の話は、原子力発電所が止まったところから始まっています。ギリギリの電力需給だったものが猛暑の影響でひっ迫し、限界にきているということでしょう。
もっとも節電しないといけない時間帯としていわれているのが「15時から18時」です。気温が一番上昇する時間帯と少しずれているのですが、これは太陽光発電が増えていることと関係があります。
要は、15時を過ぎると日が落ち始めて太陽光発電の効率が下がることから、その時間帯の電力が足りなくなるというわけですね。
そんなこんなで政府も必死であり、節電対策は待ったなし…のはずなのに、節電のための「いい方法」が全く報じられてないという状況は非常に不思議でなりません。
実は、野村総研のレポートでは、メディアにとって不都合な方法が1位として紹介されていたのです。そう、それは「テレビを消すこと」なのです。
実はすごく現実的な解決策かもしれない
実は先日、あるテレビ番組が節電についての情報を紹介した際、「家庭における電気の使用割合の項目」という総務省のデータから「テレビ」の項目を削除して紹介したことが話題となりました。
もちろんあってはならない情報操作ですが、それだけテレビ局にとっては不都合な情報だということでしょう。先のレポートの話も同様だと思われます。
ちなみに、今回のレポートの話が注目されると、野村総研は慌てて注意を呼びかけました。11年前のレポートであり、家電の性能も当時とは異なることから、参考程度にとどめてほしいと発表したのです。
とはいえ、大画面化や有機ELなど、最近の新しいテレビのスペックを考えたら、今のものの方が電力消費量は多そうなので、より節電効果がありそうに思えてなりません。
あらためて冷静に考えたら、今の時代は災害情報など緊急を要する連絡のほとんどはスマホに入ってきますよね。
であれば、「ある時間帯はテレビを消して節電する」というのはすごく現実的な解決策かもしれないと思えてきます。もしかしたら、あと数年したら普通に行われることになるかもしれません。
コロナ禍で泣く泣く国に協力した飲食店のように…
振り返ってみると、新型コロナウイルスが急激に広がっている時は、ほとんどの飲食店が夜の数時間はお店を閉め、国に協力したわけです。
今回の節電の話についても同様に、国がテレビ局に協力金を払うなどし、「15時から18時はテレビを消す」といったような節電対策を行うのはそんなに悪い解決策ではないように思えるのですが、皆さんはどう思いますか?
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「テレビを消す」でした。夏本番はこれからであり、猛暑の最中にエアコンが使えないと死者が増えることも考えられますので、節電対策については真剣に考えていかないといけませんよね。
構成:志村 江