世の中には、ありとあらゆる商売がある。
どんな商売も工夫ややりようで繁盛させることはできるはず。
そこで、一見もうけることが難しそうな意外な商売を繁盛させたり、長続きさせている先輩にそのポイントを聞いた。大いに参考にしてほしい。
「加熱用トマト」で年商1500万円!/
戸田豊和さん
東海道新幹線の岐阜羽島駅の近くで加熱用トマトを栽培する「むすぶ農園」を08年に開業した戸田豊和さん。
加熱用トマトを選んだ決め手は、農場が借地につき、単位面積当たり最も稼げ、周囲につくっている農家もなかったこと。
一方、白菜や大根など土に植える野菜より手間がかかるのは覚悟の上だった。
開業から6年間はほかの農家と同様に農協に出し、その間試行錯誤を重ねて品質向上と直販ルートを開拓。
7年目、現在の借地にビニールハウスを建て、年間7tの生産体制をつくる。
岐阜市内の飲食店7店舗から卸し始め、現在は店舗および産直農園や道の駅、百貨店などへの卸しと農園での直売により、“脱・農協”を実現。これにより、売り上げを農協経由の3倍に増やした。
飲食店や百貨店は、エンドユーザーの評価を気にして品質で買ってくれるという。農家の多くがその道を断念するのは、「抜け駆けで周辺の農家から村八分にされることを恐れるから。自分は気にしない」と言う。
この商売がテレビ局の目に留まり番組で紹介された。遠方からも注文が来るが、青採りせず木で熟成させているので、配送中に傷むリスクを考え断っているそう。
品質の決め手は、作物の生命力を尊重し、余計なことはしないこと。栽培環境を最適化するシステムを導入し生産性向上に努める。
「野菜は、実は供給過多。高品質という付加価値が評価されるはず」と戸田さんは自信を見せる。
戸田豊和さん(51歳)
撮影/田部雅生、刑部友康、坂井みゆ
アントレ2019.春号
「紙バンド、中古ラジカセ、草むしり 意外な商売 意外に繁盛」より