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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第87回・「住みたい街」の条件

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第87回・「住みたい街」の条件

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

新型コロナウイルスの影響でいろんなニーズが変化しているといいますが、今年発表された「コロナ禍での借りて住みたい街ランキング」でもその影響が見え始めました。2月に発表された「借りて住みたい街ランキング」から順位を上げ、今年1位になった神奈川県のとある街とは、一体どこでしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

街の人気を示す指標はいろいろありますが、その1つである「住みたい街ランキング」にも、新型コロナウイルスの影響が出始めたようです。

今回取り上げるのは、株式会社LIFULLが9月に発表した「コロナ禍での借りて住みたい街ランキング(2020年・首都圏版)」で1位になった意外な街の話です。

その結果については、いろいろなところで「意外だ」という反応が聞かれました。今回クイズにした1位の街は、これまであまりこうしたランキングには出てこない街でした。

それでは解説します!

その街が1位に選ばれたのには、3つ理由が考えられます。

1つ目が、コロナ禍ということで「都心に頻繁に来なくてもいい」という前提でとても住みやすいという点。2つ目が、いざとなれば都心まで一本で行けるという点。そして3つ目が、街がひらけていて、生活するのに利便性がある点、でしょう。

首都圏にお住まいではない方にはちょっと分かりにくいかもしれませんが、その街というのは、「本厚木」です。住所でいうと神奈川県厚木市で、首都圏の中でも郊外に位置します。

郊外といっても、小田急小田原線の快速急行に乗れば、1時間ほどでターミナル駅である新宿まで一本で行くことができます。しかも駅前には大型のショッピングモールがあるので買い物がしやすく、ほとんどのチェーン店が駅の近くにそろっていて、わざわざ他の街まで出かける必要もありません。

コロナが流行する前から、大宮、立川、八王子、津田沼といった「都心まで一本の郊外のターミナル駅」はそれなりに人気が上がりつつありました。加えて、今回のコロナ禍の調査では、本厚木を筆頭に、普段はこういったランキングの上位にはあまり入ってこなかった葛西、西川口、町田、船橋といった同じ郊外の街の名前が見受けられます。まさに、新型コロナウイルスの影響で郊外への関心が一層高まっているということでしょう。

つまり、これまでは毎日出勤するのが前提でしたから、「できるだけ会社の近くに」ということで都心部に住む人が多かったわけです。しかしコロナ禍でリモートワークが増えれば、毎日出勤する必要もなくなります。その前提が変わった途端に、「それなら1時間かかってもいいや」という考え方になったというわけです。

在来線で1時間というと、大阪だと京都、名古屋だと豊橋、福岡だと久留米、といったイメージをしてもらえると分かりやすいかもしれません。決して近くはないですし、通勤するにはちょっと遠いと感じる距離感ではないでしょうか?

しかし、そんなところにある街が住みたい街として人気になるわけですから、人々の価値観は思ったよりも大きく変わったといえそうです。

気になる本厚木の家賃相場は?

ちなみに、本厚木の家賃相場はというと、賃貸のワンルームマンションが月6万4000円だそうです(「SUUMO」家賃相場情報より。以下同)。家族で住める3LDKのマンションでも10万6000円となっています。

これまで住みたい街の定番だった下北沢や吉祥寺、恵比寿といった街と比べてみると、どうでしょうか。

それぞれワンルームの賃貸マンションの家賃相場は、下北沢が8万8000円、吉祥寺も同じく8万8000円、恵比寿は11万2000円ですから、やはり本厚木はだいぶ安いことが分かります。

片道1時間かかるとしても、毎日通勤する必要がないのであれば、確かに魅力的な額かもしれませんね。

1つ懸念点があるとするなら、この家賃相場はあくまでも今のものであり、チャンスは今だけかもしれないということです。

不動産価格は「神の手」という市場原理が働きやすく、あっという間に調整がなされてしまう可能性はあります。その時になってから引越しを検討するのでは、「都心まで遠くて家賃が高い」という状態になってしまうかもしれません。

コロナは人々の価値観を大きく変えた

新型コロナウイルスの影響による変化は既にあちこちに見られますが、特に住む場所に対する考え方のような「価値観の変化」は、相当大きなものがあるようです。

今回紹介した調査結果のように、通勤や通学という前提がなくなるだけで、こうも大きな変化があるということはとても面白いなと感じました。これからも、いろんなところに興味深い変化が見られるかもしれませんね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「本厚木」でした。郊外への関心が高まることは、人口の一極集中というリスクを回避することにもつながるので、いい流れかもしれませんね。


PROFILE
プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

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