事業の持続的な成長を実現するため、組織のリーダーが担う役割はいくつかあります。そのうちのひとつが「自分で考え、行動する」メンバーの育成です。
「自分で考え、行動する」メンバーを育成するために、リーダーはどう関わったらよいか、以下ご説明していきましょう。
自分で考え、行動するために必要な「主体性」
「自分で考え、行動する」には、ひとり一人のメンバーの「主体性」を発揮させることが必要です。
「主体性」とは、「目標も解決のための過程も決まっていない状況の中で、自ら問題を発見し解決に向けて考え・行動に移す」ことです。
以前ご紹介した「自主性」は、課題や解決のための過程があらかじめ明確になっていて、それをリーダーに指示される前に自ら率先して行動することでした。
ただ仕事を進めていく上では、課題や解決のための過程が見えにくい場合もあり、またリーダーから課題や解決のための過程が明示されない場合もあります。そのような状況の中で生産性を高く仕事を進めていくには、ただリーダーの指示を待つのではなく、「自ら課題を見つけて目標設定し、解決に向けて自ら考え、行動する」という主体性が、メンバーひとり一人に求められるのです。
メンバーの主体性を育てる3つのポイント
メンバーの自主性を育てる場合は、事前に指示する内容を明確にすることがポイントのひとつでしたが、主体性を育てる場合は、指示しなくてもメンバーが自ら考え行動できるよう支援し、メンバーの仕事の権限を広げていきます。
メンバーの主体性を育てる際、特に気を付けたいポイントは以下の3点になります。
① 対話しながら目標・やることを明確にする
メンバーの主体性を育てるためには、仕事の目標、やるべきことについて指示するのではなく、対話を通してメンバーに考えさせるようにします。
たとえば、
「先月発売を始めた新製品の不良率を0%にするには、どんな取り組みが必要だと思う?」
「今期の売上目標を達成するには、お客様にどんな製品を提案すればよいと思う?」
といった質問を投げかけ、メンバーの意見をうまく引き出すようにしましょう。
その際、リーダーは「傾聴」に徹することがポイント。メンバーから意見が出てきたら、いったん受け止めるようにします。メンバーの発言に対して、「いや、それは違うよ」「お前の考えは甘すぎる」など上から押さえ込むようなことを言ってしまうと、メンバーも心を開いて意見を言いにくくなります。
間違っていてもいいから安心して意見が言えるような環境を作ってあげましょう。
② メンバーの「内発的な動機付け」を引き出す
メンバーを褒めることは、自主性を引き出すのに有効ですが、ただ褒めるだけでは、メンバーの動機付けがリーダー抜きでは成り立たないことになります。
主体性ある人材として成長してもらうためには、メンバー自らが仕事の目的・意義を見出し、「内発的な動機付け」を引き出すようにします。
「内発的な動機付け」とは、評価・賞罰・強制など外発的な要因・刺激によって生まれる外発的な動機付けではなく、自分自身の内面に湧き起こった興味・関心や意欲による動機付けです。
この内発的な動機付けを引き出すには、コーチング的な関わりを通してメンバーの価値観を引き出してあげる必要があります。リーダーであるあなたがメンバーにとってよきコーチ役となり、対話を通して
「いまのプロジェクトの中で自身が果たす役割は何か?」
「仕事の中で譲れないこだわりは何か?」
などと質問し、メンバーの内なる動機付けを引き出してあげましょう。
③ メンバーのちょっとした成長や変化を承認する
メンバーに目標や解決までの過程を自ら考え、行動させるのは、仕事を丸投げすることとは違います。
仕事はメンバーに任せるけれども、適宜進捗をフォローし、「いつもあなたのことを見ているし応援しているよ」ということを言葉や行動で伝えてあげることが必要です。
優れたリーダーほどメンバーの行動をよく観察し、ちょっとした成長や変化に対してすかさず褒めたり改善点をアドバイスしたりします。仕事の結果だけを見て「よくやった」「なんで達成できなかったんだ」と言うだけではなく、その結果に至るまでの過程を観察し、過程を承認するようにしましょう。
ひとり一人の主体性を高め、事業の持続的な成長を実現していこう
ここまで、メンバーの主体性を育てるためのポイントについてお伝えしてきました。
メンバーの主体性を高めることで、個々の個性や強みを尊重しながら、自主自立的な人材を育成することができます。そして、そのような人材が集まる組織では、お互いがお互いの足りないところを補い合い、ひとり一人が自分の強みを活かせるような状態になるので、仕事に対する意欲も必然と高まっていく傾向があります。
ひとり一人の主体性を高めることで、事業の持続的な成長を実現していきましょう。