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流行りに乗る、だけじゃ突き抜けられない。若月雅奈さんがフリーから会社員へ転身した理由

流行りに乗る、だけじゃ突き抜けられない。若月雅奈さんがフリーから会社員へ転身した理由

独立・起業で必要なこと。

専門的な知識やスキル、社会的意義、自分の目標の達成、様々な要素がある中で、欠かせないのがマーケット。すなわち市場があるかどうか、ということです。

目まぐるしく回る現代社会の中で、自分の仕事にニーズがあるかどうかを見極めることは極めて重要と言えるでしょう。

今回お話を伺ったのは、Gftd Works株式会社で取締役を務める若月雅奈さん。

VRエンジニアとしても活躍されている若月さんですが、Gftd Worksに入社する以前は、会社員経験はなく、ずっとフリーランスとして活動されてきました。

その経歴はマジシャン、オフ会主催者、飲食店経営など、一見エンジニアと全く関係のない職業ばかり。

今回はそんな若月さんの異色すぎる経歴とともに、フリーランスから会社員へと転身した理由を伺いました。

<プロフィール>
若月雅奈さん
Gftd Works株式会社・取締役
VRエンジニア・職業指導員

高校卒業後、アルバイト生活を経てマジシャンとして活動を始める。
その後、ソーシャルネットワークサービス・mixiを活用したオフ会を頻繁に開催し、オフ会のための飲食店を歌舞伎町に立ち上げる。

2015年に廃業し、一度就職するも退職。2016年に就労移行支援施設「Gftd Works」でプログラミングのスキルを取得。2017年11月より同社に入社。

マジシャンからSNSオフ会主催者を経て、飲食店経営へ。 若月さんの異色すぎる経歴


―マジシャン、飲食店経営などを経て、現在は「Gftd Works(※)」(以下、Gftd)の取締役・VR/AR開発者として活躍されている若月さんですが、現在に至るまでの経緯を簡単に教えてください。

若月さん
いろいろありすぎてどこからお話すれば…という感じなのですが、今は「Gftd」という大人の発達障害者の方のための就労移行支援施設で働いています。

実は僕自身もつい数年前まで「Gftd」でプログラミングを学び、そこからこの会社に雇ってもらったんです。

※Gftd Works…プログラミング・デザインに特化した発達障害者向けの就労移行支援施設。
https://www.gftd.works/

―現在は会社員ということですが、経歴を見る限りそれまではずっとフリーランスだったんですよね?

若月さん
そうですね。高校卒業後、ゲームの専門学校に行くための資金を貯めようと、フルタイムでアルバイトを経験したことがありました。

そこで働いた時に「仕事してるか、寝てるか」の生活になってしまって。

この状態が定年まで続いたらやばいな…と、危機感を覚え、何かしら自分の力でお金を稼ぐ方法を見つけたいなと思っていました。

そんな時にマジックに出合ったんです。

―マジックでどのようにお仕事をされていたんですか?

若月さん
デパートや空港などで、実演販売をしたり、バーなどの飲食店でマジックを披露していました。

とはいえ最初はどう仕事に結びつけたらいいのか、あまりよく分かっていなかったんです。

もともと手を動かしていろいろ考えたりするのが好きだったので、とりあえず自分でマジックの仕組みを作り始めました。

それをたまたまマジックショップをやってる人や、プロのマジシャンに見せる機会があって。見せたら「それすごいよ!」と良い反応をいただけたんです。

そこから紹介でお仕事をいただけるようになりましたね。

―マジシャンからなぜ飲食店を経営することになったのでしょう?

若月さん
単純にマジシャンだけでは稼いでいけなくて(笑)。

それでまたアルバイトを始めたんですが、当時はソーシャルネットワークサービスのmixiが全盛期で「オフ会」というものが流行っていたんです。

―オフ会というのは?

若月さん
簡単に言うと、mixi上で企画された飲み会ですね。例えば「コスプレオフ会」「高身長限定オフ会」など、いろんな切り口で企画をしては飲み会をする、みたいな。

僕も最初はそれに参加する側だったんですが、ある時「これ、自分でもできないかな」と、思い始めたんです。

最初は「自分が企画すれば、飲み代がタダになるしいいや」くらいで企画していたんですが、手を変え品を変え、いろいろと飲み会を企画していたらまぁまぁな儲けが出るようになってきて。

それで「これはもう全部賭けるしかない!」と、ひたすら各地でオフ会を開催するようになったんです。

―それが飲食店経営につながるのですね。

若月さん
はい。

いつもレンタルキッチンスペースや人のお店を借りてオフ会を開催していたんですが、もう自分で場所を作ってしまった方が儲けられるなと。

そこでたまたま歌舞伎町に居抜き物件があって、契約し飲食店も経営するようになりました。

飲食店経営からプログラミングを学び、フリーランスから会社員へ転身した理由

―まさに時代の流れに乗っての開業、というわけだったのですね。反響はどうでしたか?

若月さん
それがいきなり大ピンチだったんですよ(笑)。

今でも覚えていますが、お店のオープン直前にmixiのアカウントを止められたんです。当時異性との出会いなどを目的としたSNSの使い方が問題視されていたこともあったりして。

とりあえずまたアカウントを作ったり、店を別のオフ会を開いている人に貸したりしてなんとかやってきたのですが、収入の上限がかなり早い段階で見えてきたのでなんとかしなきゃ…と。

―どのようにして乗り切ったのですか?

若月さん
その頃ちょうどリアル脱出ゲームなどの謎解きモノが流行っていて。「これだ!」と思いましたね。

マジシャン時代から何か仕掛けを考えたりすることは苦手ではなかったので、もう必死になって謎を作り続けました(笑)。

いつしかオフ会のためのお店ではなく、謎解きカフェ、謎解きバーとしてお店の形態をシフトしていきました。

カップル限定の「カップル謎解き」、メイドさんと一緒に謎を解く「メイド謎解き」、純粋に飲みながら謎を解く「飲み放題付き謎解き」など、人が集まりそうでおもしろそうな企画は一通りやりましたね。

―たしかに全部おもしろそうですね(笑)。オフ会時代から、企画はどのように考えているんですか?

若月さん
だいたい全部人のマネですね(笑)。

オフ会も謎解きも流行りに着想を得て、その中で人気なものからトレースして、それを安く提供する。そして組み合わせでおもしろそうだな、と思うものがあれば作ってみる。

結構泥臭いやり方かも知れません。

良く言えば、その時々の流行やムーブメントに乗ってるのかもしれませんが、長続きはしませんでした。

このお店も結局数年で辞めてしまったので。

―なぜ辞めてしまったのですか?

若月さん
歌舞伎町のお店の家賃が高かったので、家賃の安い大久保に移転したんです。同じ新宿区内だし、そんなに変わらないだろうと思ったら、客足がめっきり減ってしまって。

家賃は半分になったけれど、売り上げも半分になってしまったんです。

これまでいろいろ手を変え品を変えでなんとかやりくりできていたんですが、そろそろ限界かなと。当時付き合っていた彼女にも「会社員になってほしい」と頼まれたこともあって、一度就職したんです。

―どんな仕事に就いたのですか?

若月さん
今流行っていることって何かなと考えた結果、ITやプログラミングがいいんじゃないかと思ったんです。

しかし年齢ももう30歳を過ぎていたので、なかなか厳しいなと。奇跡的に一社、雇ってもらったんですがやっぱりダメで、すぐに退職しました。

退職して一時期生活保護を受給していたんですが、そんな時に「Gftd」と出合ったんです。

―就労移行支援施設である「Gftd」でプログラミングを学んだんですね。

若月さん
はい。2016年の11月から1年ほど、毎日「Gftd」に通い、プログラミングを学びました。

そしてここを卒業すると同時に、ご縁があり働かせてもらえることになって。

今はここでかつての僕と同じような受講生のメンターとして、そして僕自身もVR/ARの開発を担当するエンジニアとして働いています。

流行りに乗る、だけじゃ突き抜けられない。自分の向き不向きや、失敗談を含めた経験も財産になる

―経歴だけを見ると一貫性がないようにも見えますが、お話を聞いてると「流行りに乗る」「何かを作るのが得意」という部分に若月さん“らしさ”を感じます。

若月さん
そうかもしれないですね。

オフ会の時も僕は現場には立たず、ほとんど座って企画を考えているばかりでしたし、マジシャン時代や謎解きの時も、座って仕掛けやタネを考えていることが多かったです。

今もエンジニアとして座ってPCをいじって仕事をしていますし、開発にやりがいも感じているので、多分黙々と何かを作ったりすることが好きなんでしょうね。

またこれまでの人生「次はコレが来る!」という漠然とした予感は当たってる一方で、めちゃくちゃ成功する、すなわち「突き抜ける」ような経験をしたことがなくて。

だから流行りに乗る、だけでは突き抜けることはできないんですよね。

こうした自分の向き不向きや、失敗談を含めた経験が、今の仕事やキャリア選択にはめちゃくちゃ活きていると思います。

―若月さんのこれからの展望について教えてください。

若月さん
せっかく「Gftd」にいるので、今の仕事に関連することで何か突き抜けたいですよね。

今、会社がブロックチェーン(※)に力を入れているので、できればブロックチェーンでも何か突出した成果が出せるといいなと思っています。

今はやれていないのですが「メイドプログラミングスクール(※)」もできれば再開したいですね。

※ブロックチェーン…ビットコインなど仮想通貨の中核となる、取引データの技術のこと
※メイドプログラミングスクール…若月さんが主催していたイベント。メイドさんにプログラミングを教わったり教えたりといった交流ができるイベント

―最後に読者の方へ、メッセージをください。

若月さん
僕はかなり異色なキャリアなので、あまり参考にならないかもしれませんが…。

僕自身、ある種、独立でうまくいかなくなって、会社員になった身ですから、安定的に収入が確保できる会社員という立場はとても魅力的だと思います。

だからやりたいことがあるなら、まずは会社員として小さくスタートするのが賢いと思います。

それである程度稼げて、これで食っていきたいと思えるなら、独立・起業もアリなんじゃないかなと。

その代わり挑戦するからには、全人生を注いでがんばった方がいいと思います。できることは全部やって、結果がうまくいってもいかなくても、後悔のない選択ができるといいですよね。

ちなみにもし、どうしてもうまくいかなくなっても、日本には生活保護という制度があるので命までは取られません。僕自身もお世話になりましたから。

それを理解した上でなら、たいていのことは試せると思います。後悔しない人生を選ぶために今、自分が何をしなければいけないか。それを考えてみると良いのではないでしょうか。

取材・文・撮影=内藤 祐介

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前回は「OJT」についてお伝えしましたが、今回は「Off-JT」について、その特性、OJTとの違いについてご紹介していきます。

実際の仕事から離れて行われるOff-JT

Off-JTとは「Off-the-Job Training」の略称で、職場から離れた場所で業務遂行に必要な基本となる知識・スキルを体系的に学習するために行う教育訓練のことを言います。前回お伝えしたOJTは仕事を通じた人材育成でしたが、Off-JTは実際の仕事から離れた、座学や集合研修を通じた人材育成と言えるでしょう。

Off-JTのメリット

Off-JTは、現場の状況に左右されず、均一な知識習得の機会を提供できる点がメリットです。OJTのように業務状況によって途切れ途切れの研修になることはなく、また外部機関の専門の講師が担当しますので、研修の質にバラツキが出ることもありません。実際の仕事から離れて行われるので、日々の業務に追われてなかなか勉強できない最先端技術やノウハウなどを、職場環境に左右されず集中的に習得することができます。

また受講者の知識の習得度合のばらつきを防止できます。Off-JTは個別ではなく集団研修となることがほとんどですから、専門知識を座学等で均一に行うことができます。受講者に対して同時に研修・訓練を行うことで、個々への「研修の濃淡」が起こりづらくなります。

そのほか、会社主体で行うため確実に研修を実施できるほか、受講者のプライベートの時間を削らなくてもすむため、受講者の負担が少なく、研修に集中できるというメリットもあります。

Off-JTのデメリット

一方、Off-JTは「習得内容を業務に反映しにくい」という点がデメリットです。その企業の実務から離れ普段取得できないものを学ぶため、実務的というよりは理論に偏っている場合もあり、うまく活用できない、あるいは活用するにしても応用が必要な場合があります。外部機関に研修を依頼または委託する場合も、その外部機関に研修成果の実務への落とし込みまで委ねることは難しく、受講者が自ら実務への落とし込みを考えなければならない場合も少なくありません。

また、外部機関に依頼または委託すれば、その分費用が発生しますし、社外施設で実施した場合は、会場費も発生します。

Off-JTの必要性

OJTで通常の業務をしながら十分な指導をすることは、簡単なことではありません。教える側は通常業務と指導の両方を兼ねる必要があり、場合によっては指導に集中できないこともありえます。また教える側は指導の専門家ではないため、人によって教え方や内容に差が出ることも想定できます。

仕事をステップアップするために必要な知識もあり、それらは都度仕事で覚えるよりも、Off-JTを利用して徹底的に学ぶやり方が適している場合もあります。

企業が従業員の成長を支援するためには、OJTとともにOff-JTも必要なのです。

Off-JTとOJTをうまく使い分け、効果的・効率的な研修を実現しよう

グローバル化や職種の垣根を超えた産業の活発化が進み、人材もそれに適した人が求められるようになりました。それにより、企業が行うべき研修も広範囲にわたっています。

実務を離れたところで、外部機関も活用しながら最先端技術やノウハウを幅広く吸収し、それを現場の実務に応用し実践する、というOff-JTとOJTを連動させた研修体系の整備が、今後はより求められてくると思います。

Off-JTをOJTと上手く使い分け、それぞれに適した内容の研修を行うことで、自社の教育研修をより効果的・効率的に実施していきましょう。

PROFILE

HIDE

元大手広告会社で人事部長を経験。新卒・中途の採用から人事制度設計、労務管理まで人事業務全般を手がける。現在はその前職での経験を活かし、各種就職・転職セミナーの企画運営から企業の採用広報の企画設計等、幅広く活動中。

2020年1月23日

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