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吸収分割とはなにか? 種類や手続き・メリットとデメリットを公開!

吸収分割とはなにか? 種類や手続き・メリットとデメリットを公開!

中小企業におけるM&Aの手法には、大きく分けて“買収”と“合併”があります。
買収でも“事業買収”と“株式買収”の割合は特に高く、2017年の調査(※1)によると全M&Aのうち、2つ合わせて80%超となっています。

そのほか買収には、株式交換や株式移転・会社分割といった手法もあり、今回は“株式分割”の一つである“吸収分割”について解説します。

(※1):三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社[成長に向けた企業間連携等に関する調査」2017年11月

吸収分割とはなにか?

会社分割は、一つの会社の中にある事業に関して、その権利義務の一部または全部を分離し、ほかの会社に承継させるM&Aの手法の一つです。

吸収分割と新設分割の2つがあり、会社法第2条で下記のように定義しています。

吸収分割
株式会社または合同会社が、その事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後、ほかの会社に承継させることをいう。

新設分割
一または二以上の株式会社または合同会社が、その事業に関して有する権利義務の全部又は一部を、分割により設立する会社に承継させることをいう。

引用:e-GOV「会社法(平成十七年法律第八十六号)」

吸収分割の種類

吸収分割は2つに分けることができます。主に対価の支払先による区別です。“分割会社”に対して対価が払われるのは「吸収分社型分割」、“分割会社の株主”に対して対価が払われるのが「吸収分割型分割」となります。

「吸収分社型分割」は、“事業の子会社化”をする場合によく使われます。事業の一部を子会社化する、または、ほかの会社に移管する場合です。対価として、分割先会社の株式や現金を払います。

「吸収分割型分割」は、事業を他社に分割し、分割対価を分割元会社ではなく、その株主に交付します。この場合は、分割対価として株式を交付することがほとんどです。

吸収分割における手続きの流れ

吸収分割の手続きは次のとおりです。

会社分割は事業を包括的に承継するため、労働者や取引先と個別に同意を得る必要はありませんが、労働者や債権者に不利益が生じないように、所定の分割手続きを行います。

①吸収分割契約を締結
分割会社と承継会社は吸収分割契約書を作成し、取締役会の承認を得た上で締結します。

②労働者保護手続き
分割会社は、従業員に会社分割の目的および承継会社の事業内容や分割後の事業内容を説明し、株主総会開催の2週間前前日までに労働契約承継の協議を行います。

③株主総会で吸収分割契約
分割会社と承継会社は、吸収分割を行うことを株主に伝え、株主総会の特別決議で承認を得ます。

④債権者保護手続き
分割会社と承継会社は、債権者に不利益が生じないように、異議申し立てを受け付ける旨を官報公告と個別通知で周知します。

⑤株主による株式買取請求
分割会社と承継会社の株主総会で、会社分割に反対の株主から、保有株式の買取請求を受けます。

⑥公正取引委員会へ届け出をする
会社分割が、独占禁止法の「分割の届出制度」に該当する場合は、公正取引委員会に届け出ます。違反しないことが認められないと会社分割できません。

⑦登記
上記の手続きが終了し、吸収分割契約書に規定した効力発生日を迎えたら、2週間以内に登記を行い、事業の統合を進めます。

吸収分割で必要になる費用

吸収分割の主な費用は、登記関係と専門家への費用です。

①登録免許税
登記申請の費用として、登録免許税を払います。吸収分割の分割会社は、3万円、承継会社は3万円プラス資本金増加額の0.7%(自社株を新規に交付する場合)です。計算結果が3万円以下の場合は、一律3万円となり、最低6万円かかります。

②官報公告費
官報とは、政府発行の新聞で、会社法で決算や合併など会社の重要事項は官報に掲載し、公に周知することが定められています。金額は掲載する文字数と行数によって変わります。

③専門家の費用
そのほか、司法書士、弁護士、M&Aの専門家に依頼する場合、相談費用および吸収分割にかかる手続きの報酬が必要となります。

吸収分割のメリットとデメリット

吸収分割の一番のメリットは、会社の事業の一部だけを切り出し、包括的に承継できることです。事業買収に比べ、事業の権利・義務と従業員を引き継ぐ手続きが簡単になります。グループ内の事業再編や経営統合を一気に実現できるのです。
また、財務面では、承継会社は対価として現金もしくは株式のどちらでも支払うことが可能です。多額の資金がなくても株を交付することで、事業買収と同じ効果を得ることができます。

デメリットとしては、包括的な承継なので、簿外債務や不要な資産を引き継ぐリスクがあります。また、手続き上、分社型分割の場合は、買収先の会社に株式を交付するので、株主構成が変わることによる影響も考慮しなければなりません。

まとめ

吸収分割は、事業買収に比べて“包括的な承継が可能”であることと“資金面では多額な買収資金がなくても、新株の交付で事業を直接承継できること”など、手続き面で有利な点が多く見られます。
M&Aの中では、事業買収や株式買収ほど一般的ではありませんが、メリット・デメリットを理解し、事業再生や経営統合の一手法として検討しても良いかもしれません。

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PROFILE

経営コンサルタント 奥野美代子

外資系の高級消費財ブランドで、日本進出の子会社立ち上げから26年間、マーケティングマネジャーとして、ブランドPR、販売促進、店舗開発、リテール支援を行うなど幅広い経験を持ちます。
独立後は、中小企業診断士とFPのノウハウを生かし、経営者の法人と個人の財務コンサルティングやリスクマネジメント、事業計画策定、マーケティング支援など幅広い支援を行っています。

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