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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第61回・「長持ちするタイヤ」で儲ける方法

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

フランスのタイヤメーカーであるミシュランの技術陣が画期的なタイヤを開発しました。特別な素材を使っているため減りにくく、従来の2倍長持ちするそうです。しかし、よく考えればタイヤが減らなければ会社は儲かりません。さて、ミシュランの経営陣はどうしたでしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

企業が行ういろいろな開発は、当然ながら、自社の競争力を高めるためのものであるはずです。しかし場合によっては、その発明が自社にとって有益なものになるとは限りません。

ミシュランが開発した「2倍長持ちするタイヤ」は、車の運転をする人にとっては間違いなく大きなメリットがありますよね。中でも、たくさんの車やトラックを抱えるような運輸業を営む会社にとっては、非常にありがたいタイヤでしょう。

何より交換する手間が減ります。さらに、点検などで注意を払う回数も減らすことができ、結果としてコストダウンにもつながるはずです。しかし、2倍持つからといって2倍の値段で買うかといえば、おそらく買わないと思います。

それでは解説します!

答えを解説する前に、似たような別の話をもう1つしましょう。

アメリカのRCAという電気機器メーカーが、20世紀に画期的な商品として「FMラジオ」を開発しました。今も広く使われているあのFMラジオです。当時普及していたAMラジオに比べて音質が良く、広く普及が見込めるものでした。

しかしRCAはその特許を徹底的に隠して使わず、商品化もしないという判断をしたのです。

RCAは実はAMラジオのシェアを持っていて、放送局においてはほぼ独占状態でした。しかしFMラジオを新たに始めようとすれば新しい放送機器など投資も必要です。それこそ中途半端にやってしまえば、逆に他の会社に既存のビジネスまで奪われかねないと考えたRCAは、その画期的な発明をあえて世に出さず、一旦埋もれさせたというわけです。

ミシュランのタイヤのケースも、同じ発想で同様のことをしても良かったかもしれません。しかし、ミシュランはそうはしませんでした。

では実際に何をしたのかというと、そのタイヤを使って「サブスクリプションモデル」のビジネスを始めたのです。それも「走行距離に対して課金する」という仕組みです。

走行距離連動課金モデルであれば、タイヤが長持ちするメリットが大いに生かせます。ユーザーである運輸会社からしても、これまで通りタイヤが使えるわけですし、より長持ちするタイヤを使えた方が交換の手間も減り、燃費も向上し、トータルでコストダウンにもつながることが容易に計算できました。であれば、新しいサービスに契約し直した方が得だと判断するのは当然です。

一見、自社にとって不利になりそうな発明でしたが、「メンテナンスフィーが下がる」というメリットを打ち出す新たなビジネスモデルを考え出したことによって、新しい市場を生み出すことに成功したというわけですね。

長持ちする白熱電球はあえて作られていない!?

実は、企業が画期的な発明をあえて潰すというのはよくあることなのです。

自分たちの儲けにならないため隠しておくケースや、画期的なビジネスモデルを生み出した競合他社を買収してしまうケースも同様です。自分たちの脅威になる前に「飼い殺す」ことで、早いうちにその芽を潰してしまうわけですね。

話が話だけに具体的な例を出せないのがもどかしいのですが、1つ古典的な話として白熱電球のケースが挙げられます。

それは、業界内で「白熱電球は寿命をあえて短くするように設計する」というカルテルが結ばれていたという話です。

1920年代から1940年代ぐらいまでのヨーロッパで実際に起きた話ですが、この時代に電球メーカーの間で長持ちする電球の開発競争が起きたのです。長持ちすると電球が売れないわけで、であれば一定期間で交換が必要になる製品を横並びで作った方が、業界の発展のためになると考え、長持ちする電球の技術をお蔵入りさせることを業界全体で決めたのです。

ビジネスモデルを工夫することで新しいものが生み出せる時代に

今回のポイントは、画期的なものを生かそうとする場合に、ビジネスモデルを工夫することでそれが可能になりやすくなるんだ、ということです。たとえその発明が自社にとって不利なものであってもです。

言い換えれば、これまでは損得を考えて「潰す」という考え方があったわけですが、これからはビジネスモデルを工夫することできちんと使っていける時代が来たのだということ。

今後、みなさんが画期的だと思える何かしらのビジネスを始めたとして、その時には「あなたの会社を買いたい」という人が出てくるかもしれません。その時に、今回の話を参考にすれば「売って終わり」だけではない選択肢が取れるかもしれませんね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「サブスクリプションモデルのビジネス展開をした」でした。ちなみに、白熱電球の寿命の話をしましたが、最近言われる都市伝説の1つが「LEDの寿命」の話です。4万時間持つ、つまり一日8時間つけていても13年間は持つといわれるLED電球ですが、もう寿命を迎えたものが出始めた…という話があるとかないとか。店舗改装の際に「LEDの方が長持ちする」と売り込んでくる業者がいますが、私だったら月額定額か、ないしは10年保証でLED電球を提供してくれないのであればその売り込みは信じませんね。もちろん信じるか信じないかはあなた次第です。


PROFILE
プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(PHPビジネス新書)、『令和を君はどう生きるか』(悟空出版)。

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2019年9月18日

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