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事業譲渡における株主総会の役割や特別決議を説明します

事業譲渡における株主総会の役割や特別決議を説明します

最近は会社のM&Aや合併・提携など、会社間での再編のニュースが増え、事業撤退やほかの事業への拡大を目的に、M&Aの中でも“事業譲渡”を検討する会社が多くなっています。
事業譲渡を行えば、長年の事業運営のノウハウや従業員、取引先との関係も含めて相手企業へ譲り渡すことになります。

そのため、事業譲渡の手続きを進めるには“取締役会の決議”と“株主総会における特別決議”が必要です。
今回は、事業譲渡時の株主総会の役割や特別決議について解説します。

株主総会とはどういう意味があるのか?

株主は、株式を購入することにより会社に出資する立場なので、会社の実質的な所有者です。そのため「重要な決定は会社の所有者にゆだねる」という理念から株主を構成員とする“株主総会”が株式会社の最高位の決定機関として位置づけられていて、会社経営に影響を及ぼす重要な意思決定を行います。

株主総会で行う決議事項は、大きく4種類あります。
①役員など機関の選任・解任に関する事項
②定款変更、あるいは事業譲渡や合併といった会社の基礎的変更に関する事項
③剰余金の配当など株主の重要な利益に関する事項
④取締役の報酬の決定など、他機関の決定に委ねてしまうと株主の利害を害する可能性が高い事項

株主総会の特別決議が必要になる条件とは

事業譲渡を行う企業は、事業譲渡を行う際に株主総会において承認をとらなければいけない旨が会社法にて定められているため、株主総会は必須事項となります。
特別決議とは株主総会の決議事項の中でも、より重要な承認事項を決定することです。事業譲渡は会社の基礎的変更になるため、重要な承認となり、特別決議が必要になります。

株主総会が必要となる場合は以下の通りです。
(1)譲渡を希望する企業が全事業を譲渡する場合
全事業譲渡となると株主の利害に大きくかかわるため、株主総会は必須となり、特別決議の基準にも該当します。
(2)当該子会社株式の全部または一部を譲渡する場合
①譲渡する株式または持ち分の帳簿価額が、譲渡企業の総資産額として省令で定める方法により算定される額の5分の1を超えるとき
②譲渡企業が、効力発生日において、子会社の議決権総数の、過半数の議決権を有さないとき

株主総会の決議事項で重要であるかどうかは下記の2点で判断します。
①株主の重大な利害にかかわる事業再編かどうかの基準で判断して、かつ譲渡する事業が会社の総資産に量的・質的両面から多大の影響を与える場合
②会社の総資産に対して事業の帳簿上の価額が5分の1を超えている場合

事例:東芝がシャープにパソコン事業を売却したケース
シャープはTCS(東芝クライアントソリューション)、を子会社化しました。
東芝は事業の一部であるPC事業を事業譲渡しましたが、100%子会社のため、東芝の一事業と言えます。株主総会での特別決議を経てシャープに譲渡する手順を踏みました。

株主総会が不要となる場合は以下の通りです。
譲渡される会社が、事業を譲渡する会社の株式を9割以上保有している(特別支配会社である)場合や、特別支配会社でない会社がすべての事業を譲渡される場合でも、下記項目の①の割合が、項目②と比べて5分の1未満である場合には株主総会は不要とされます。

①ほかの会社の全事業を譲り受けする対価として交付する財産の帳簿価額の合計額
②純資産額として法務省令で定める方法により算定される額

事例:エディオンが家電量販店2社を吸収合併したケース
中国・四国・九州を中心に事業展開している家電量販店のエディオンが、2005年にミドリ電化を子会社化したのち、2006年には石丸電気を関連会社化。その後この2社を吸収合併しました。
吸収合併はミドリ電化、石丸電気から見ると事業譲渡になり、ミドリ電化の場合は先に子会社化(株式100%)しているので、エディオンは特別支配会社に当たり、株主総会は不要になります。

決議後の事業譲渡の流れ

①反対株主から株式買収請求を行う
事業譲渡に反対に株主は、譲渡会社に対し株式買取請求を行うことができます。
②監督官庁による許認可手続きを行う
業種によれば監督官庁の許認可を得て事業を行っている場合があり、譲受会社が保有しない場合は許認可手続きが必要となります。
③名義変更手続きを行う
事業譲渡契約に基づいて対象事業の財産などを譲受会社へ移転します。その際、預金や土地、建物など、譲渡会社の名義で登録・登記されているものは名義変更しなければなりません。

特別決議時の議事録作成方法

株主総会議事録には、対象となる事業譲渡の内容を特定して、その承認を得たことを記載しなければなりません。特別決議でも同じ要領で記載して、事業譲渡内容の特定については、議事録に事業譲渡契約書を添付する方法が一般的です。

まとめ

事業譲渡は会社存続に関する事項のため、厳格さが問われ、普通決議よりも特別決議のように株主総会決議の定足数や評決数は厳しいものになります。
事業譲渡を行うには、主要株主に対して事前に説明しておくことも重要です。

PROFILE

善木 誠

岡山県岡山市在住でビジネスコンサルタント(株式会社スコーレメディア代表)として小規模事業者向けの経営コンサルタントをしています。
[資格]働き方改革マスター、個人情報保護審査員、経営士

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