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投資として捉えるM&Aとは?投資方法もあわせて解説

投資として捉えるM&Aとは?投資方法もあわせて解説

経済のグローバル化や産業構造変化の高速化が進む経営環境において、事業規模の拡大による事業競争力の強化や、新市場の開拓などを目的としたM&A投資が増加しています。

本記事では、投資として考えたときのM&Aについて解説します。

M&Aとは

投資としてのM&Aを理解するためには、まずはそれぞれの言葉の定義を理解する必要があります。M&Aと投資の定義について解説していきます。

M&Aとは、Mergers And Acquisitionsの略です。直訳すると「(企業の)合併と買収」となりますが、一般的には「会社もしくは経営権の取得」の意味で知られています。

M&Aには、主に株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割などの方法があります。合併や買収だけでなく、提携(業務提携・資本提携)や経営面での協力関係全般も、M&Aの意味に含まれる場合もあります。

投資とは

投資には大きく“事業投資”と“金融投資”があります。

事業投資とは、事業へ投資をして利益を上げる方法です。事業投資には新規事業に対しての設備投資や人的投資、企業買収や起業に対しての出資、事業譲受などの方法があります。

ただし、事業投資に明確な定義はありません。そのため、事業に投資して利益を獲得できていれば事業投資をしていることになります。

金融投資とは、企業が発行する株式や債権のような紙やデータなどの、本来であれば価値のないものに対する保有権を獲得したり売却したりして、定期的に配当金、利息、売却益を得る投資手法です。

金融投資には、以下の3つの種類があります。

株式投資:東証1部をはじめとした証券取引所に対して、上場企業が発行する株式の一部を売買する投資方法
債券投資:企業、団体、国、地方自治体などが資金調達を目的として発行した債券を購入する投資方法
投資信託:資金の運用を資産運用が専門の機関や個人に任せて、獲得した利益の分配を受ける投資方法

投資として捉えるM&A

一般的に投資は金銭的な利益を得るために行われるものです。しかし、複数の企業が合併したり、企業買収による経営統合が行われたりするM&Aも事業を拡大するために投資をするという意味では、投資と捉えても間違ってはいません。

M&Aでの投資方法

M&Aに関しては、買収、合併、分割、資本提携という4つの分類があり、その中の買収が、M&A投資としての意味合いを持ちます。

・買収
買い手側が売り手側の事業を買い取り、もしくは売り手側の経営権を取得する方法でM&Aを実施すること

・合併
複数の企業を1つに合体させる方法でM&Aを実施すること

・分割
事業に関する権利や義務などを新たに設立する企業や事業に引き継がせる方法でM&Aを実施すること

・資本提携
企業同士が強固な関係を築くことを目的として、いずれかの企業が相手方に対して資本を拠出、もしくは相互に株式を保有し合う形でM&Aを実施すること

買収によるM&Aでは、以下のような方法で株式の取得が行われます。

・株式譲渡
売り手側が株式の一部もしくは全部を買い手側に譲渡し、対価を得ることで買い手側に経営権を移行すること

・株式交換
買収代金を、現金で支払うのではなく買い手側の株式の一部と売り手側の株式の全部を交換する形で精算すること

・第三者割当増資
売り手側が新規に株式を発行して、新規発行分の株式を買い手側が買い取ること

M&Aにおける株価への影響

1.売り手側への影響
買い手側からの評価が高く買収額にプレミアム価格が上乗せされた場合や、買い手側の経営が良好で投資家からの期待が高まった場合は、株価が上昇するケースが多いです。

反面、M&A実施後に買い手側が期待していた事業のシナジー効果が得られなかった場合は、投資家からの期待が低下することで株価が下落することがあります。

2.買い手側への影響
M&Aを実施したことで業績が向上した場合は、投資家からの期待が高まり株価も上昇しますが、業績が伸び悩んだ場合は投資家からの期待が低下し株価も下落します。

また、買収額が買収する企業や事業の正味の価値より著しく高かった場合には、投資家が投資リスクに対する不安を覚えることで株価が下落するケースもあるでしょう。

M&Aをする買い手側のメリット4選

M&Aを行うにあたって、買い手側にとってのメリットは主に以下の4つがあります。

1.ビジネスの拡大
2.事業の多角化
3.節税対策
4.競合他社の吸収

それぞれのメリットについて解説していきます。

1.ビジネスの拡大

M&Aを行う買い手側の1つ目のメリットは、“ビジネスを拡大できる”点です。

M&Aを行うと、買収対象の企業が保有する事業用資産や不動産などの有形資産を取り込めます。加えて、“技術”“事業のためのノウハウ”“既存の取引先”“流通網”などの無形資産も取り込むことが可能です。このように有形資産と無形資産の両方を吸収できることにより、ビジネス拡大が期待できます。

また、取引量が増えることで、特定の取引先に対しての交渉力も強化できます。こうすることで、仕入れコストの削減、設備稼働率の向上、知名度・ブランド力の向上などのメリットが見込めます。

2.事業の多角化

M&Aを行う買い手側の2つ目のメリットは、“事業を多角的に成長させられる”点です。

事業を行い安定して売り上げを伸ばすためには、収入源を多角的に成長させていく必要があります。そのためにも新規事業にイチから参入するのは、あまりにもハードルは高いでしょう。

そこでM&Aを行ってすでに参入を検討している分野で業績のある企業を買収することで、新たな分野に低リスクで参入できます。

さらに、M&Aをすることで対象の業界に精通している“人材”“特許”“ノウハウ”なども取り込むことができるため、自社で新たにリソースを確保する必要もありません。

3.節税対策

M&Aを行う買い手側の3つ目のメリットは、“節税対策ができる”点です。

M&Aを行うにあたって買収対象の企業が赤字を抱えている場合、買い手側はその債務を引き継ぐことになります。

繰り越し可能な赤字は、発生から9年以内のもので、翌年に繰り越された赤字を“繰越欠損金”といいます。繰越欠損金は黒字売上と相殺できるため、赤字分のマイナスは法人税より削減可能です。このような方法により、M&Aは節税対策になるケースもあるのです。

「No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」(国税庁)

4.競合他社の吸収

M&Aを行う買い手側の4つ目のメリットは、“競合他社を吸収できる”点です。

対象の事業が市場の中で需要がピークに達して“成熟期”に突入すると、市場でそれ以上の成長は期待できなくなります。このような状態になると、競合他社同士によるシェアの獲得競争となり、よりたくさんの顧客獲得のために価格の値下げ競争も発生します。価格の値下げ競争が発生してしまうと、市場全体が疲弊してしまうリスクがあります。

このような状態になった際に、ライバル企業をM&Aで取り込めれば、業界再編が可能になります。さらに、競合他社をM&Aにより取り込むことで価格の値下げ競争から抜け出せ、業界内での持続性も保てるでしょう。

M&Aの買い手側のデメリット4選

M&Aを行うにはメリットがある反面、デメリットがあるのも事実です。M&Aを行ってからデメリットに直面して後悔してしまわないよう、事前にどのようなデメリットがあるのかを理解しておきましょう。M&Aをすることで買い手側に降りかかるデメリットは、主に以下の4つです。

1.ネガティブなことも引き継ぐリスクがある
2.事業が継続できない可能性がある
3.投資以上の利益を出せない可能性がある
4.買収対象企業の従業員が不満を抱くリスクがある

それぞれのデメリットについて、解説していきます。

1.ネガティブなことも引き継ぐリスクがある

M&Aを行うことによる買い手側の1つ目のデメリットは、“ネガティブなことも引き継ぐリスクがある”です。

M&Aが成立したのちに、貸借対照表に載っていない退職給付引当金や未払いの給与などの“簿外債務”を引き継いでしまうリスクがあります。

さらには顧客とのトラブルや環境汚染などの、自社に将来的に不利益をもたらすリスクのある“偶発債務”を継承してしまう可能性もあります。

2.事業が継続できない可能性がある

M&Aを行うことによる買い手側の2つ目のデメリットは、“事業が継続できない可能性がある”点です。

買収対象の企業が行っている事業が許認可の必要な事業である場合、許認可に関する権利を引き継がないと、事業を継承できない可能性もあります。きちんと引き継ぎが認められていないと、せっかく買収しても買い手企業が新たに許認可の取得をする必要が出てくるので注意が必要です。

3.投資以上の利益を出せないリスクがある

M&Aを行うことによる買い手側の3つ目のデメリットは、“投資以上の利益を出せないリスクがある”点です。

買収金額が高くなりすぎてしまった場合、事業統合後の利益が期待通りに出せないと、投資以上の利益も出せません。投資が思うようにうまくいかない場合、自社の経営が一気に困難になるケースも考えられます。M&Aを行う際には、統合後のシナジーを含んだ妥当な買収金額を算出する必要があります。

4.買収対象企業の従業員が不満を抱く可能性がある

M&Aを行うことによる買い手側の4つ目のデメリットは、“買収対象企業の従業員が不満を抱く可能性がある”点です。

M&Aが成立すると、買収された企業の従業員は、買い手企業の従業員となります。しかし、統合後の待遇が芳しくないと、買収されて買い手企業の従業員となった社員の望みに応えられず、不満を抱かせてしまうケースがあります。従業員とトラブルになってしまったり、退職者が多かったりすると、M&Aの本来の目的である優秀な人材の確保や技術の継承による自社の強化が失敗に終わってしまいます。

まとめ

M&Aは、既存の事業や資源を手に入れることで投資としての確実性や高い投資効果を期待することができる反面、投資が高額化することによる財務面への悪影響を引き起こすリスクも存在します。

M&A投資を行う際は、M&A実施後の事業戦略を明確にしたうえで、買収企業の査定(デューデリジェンス)を綿密に実施することが求められるのです。

<監修>
村上 年範さん/クレディ・テック株式会社 代表取締役
金融商品や不動産を活用した経営コンサルティングを得意とし、前職のプルデンシャル生命保険株式会社在籍時より担当したクライアント数は年間200社にのぼる。2013年クレディテック株式会社設立。金融と不動産を軸とし、税務・法務の観点から知識提供を行う、資産形成および財務のコンサルティングサービスを展開。海外不動産についても強いコネクションと発信力を持ち、これまでの取扱高は150MM以上。現在、「幻冬舎GOLD ONLINE」にて、幅広い資産形成ノウハウを連載中。

【村上年範 運営】金融・不動産にまつわるYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCDq3bojqCvTnRXKu7Aur_Kg

PROFILE

ちはる

大手IT商社でプロダクトプロモーション担当を経て、 WEBコンテンツ制作会社に転職し、ライターとして所属。その後、独立し、現在はビジネス・不動産関連の記事を主に執筆。

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