「副業元年」と呼ばれる2018年。
国主導で、大手企業が続々と副業を解禁し、ますます個人の力が求められている時代を迎えようとしています。
今回お話を伺ったのは、人気Webマンガ家のやしろあずきさん。
副業を本業に独立されています。
やしろさんは大学を卒業後、ゲームプランナーとして会社勤めをされながら、SNSに自身のマンガを投稿し話題となり、独立を果たしました。
現在はフリーランスのWebマンガ家、Webライターとして幅広い領域で活躍されており、『アントレnet Magazine』においても、いくつか作品を描いていただいています。
今回はやしろさんのこれまでのキャリアから仕事観、そして好きを仕事にする方法について伺いました。
やしろあずきさん
イラストレーター/マンガ家/Webライター
1989年生まれ、神奈川県横浜市育ち。元劇団員。
学生時代、ゲーム業界のカンファレンスCEDECのゲーム企画コンテストでグランプリを受賞し、ゲーム会社に入社。
数年間ゲームプランナーの仕事に従事する傍ら、Twitterで4コママンガなどをアップし始める。
元々会社員だった事から社畜系のブラックジョークや小・中学生時代のあるあるネタなど幅広い年代に向けたネタを生み出し続け、「スタバで出会った小学生の話」で年間RT数4位を獲得し「つぶやきGANMA!」でデビュー。
その後、人気ソーシャルゲーム内での連載や有名企業のPR漫画、大手メディア「ねとらぼ」での連載など多方面に活躍の場を広げている。
動画投稿サービスvineでも再生数世界1位を記録するなど、動画のファンも多い。
・副業で自分のスキルを高める? やしろあずきの【マンガで分かるライフシフト】
https://entrenet.jp/magazine/13933/
・マンガで分かる「ライフシフト」【やしろあずき連載①】
https://entrenet.jp/magazine/12705/
・マンガで分かる「ライフシフト」【やしろあずき連載②】
https://entrenet.jp/magazine/12740/
・マンガで分かる「ライフシフト」【やしろあずき連載③】
https://entrenet.jp/magazine/13096/
自分の好きなこと以外は熱中できなかった。やしろあずきが会社員からWebマンガ家になるまで
―まずはやしろさん、いつも読み応えがあるステキな作品をありがとうございます。改めてになりますが、やしろさんのキャリアについて教えてください。

こちらこそいつもありがとうございます(笑)!
はい。キャリア的には大学を卒業して、会社に入って、というよくある普通の流れです。
ですが、就活が全然上手くいっていなかったんですよね。そんな時、とあるゲーム会社さんが主催するゲームの企画コンテストに応募したところ、なんとグランプリをいただいたんです。
その流れで、そのゲーム会社に入社することになりました。
―いきなりコンテストで優勝するとは…。その時からすでに、現在のクリエイティビティの片鱗を見せていたんですね。

うーん、どうでしょうか(笑)?
でもやはり企画を考えたりするのは昔から好きだったので、自分が得意なことで仕事ができたらいいな、とは思っていましたね。
こうして会社員生活が始まったのですが、正直結構大変でした。
―なぜでしょう?

まず、僕は朝早く起きて会社に行くのが苦手なんです。
世の会社員の方たちが当たり前にできていることが、僕にとっては難しかったのです。
ゲームプランナーとして仕事をしていたので、比較的自分の得意なことを仕事にはしていましたが、会社は基本的に良くも悪くも「チームプレー」を求められます。
企画を考え、その企画を形にする全ての工程を自分1人で行うことは、当然ながら不可能です。
―会社では「上長の承認」を得ないと動かせないこともたくさんありますからね。

はい。
個が強いと潰れてしまう環境を目の当たりにして、自分は会社勤めが向いていないなと、思いました。
そんな時に始めたのが、Twitterで自分の描いたマンガをアップすることだったんです。
―なぜTwitterに自分のマンガを上げようとしたんですか?

もともとこどもの頃から、絵を描くことが好きだったんです。
そのマンガをTwitterに載せたところ、読んでくれる方からの反応がとても良くて。
多くの反応をいただけるのが楽しくて、たくさん投稿していたらいつの間にかフォロワー数が増えていきました。(2018年7月現在は159,000人超え)
―こうして会社員とWebマンガ家の二足のわらじ生活が始まったんですね。そこからWebマンガ1本に絞られたのは…?

それこそ『アントレnet Magazine』で描かせてもらっているような企業のPR記事や、イラストの仕事での稼ぎが、会社員の稼ぎを超えてきたからです。
会社に入って分かったことでもありますが、僕は自分の好きなこと以外の仕事に、熱中ができなかったんです。
だからこそ、自分の好きなことでお金を稼げる道が見えたなら、そこに全てのリソースを投下しようと思ったんです。
努力は夢中にかなわない。好きを仕事にする方法
<「インタビューと言えばろくろ回しですよね?」と、高速でろくろを回すやしろさん>
―『アントレnet Magazine』だけでなく、本当に様々な企業さんとコラボされて、マンガを描かれていると伺っています。お忙しいのではないですか?

おかげさまでたくさんお仕事をいただけて、忙しくさせていただいております。
どこからが仕事でどこからが休み、という境界がかなり曖昧ではありますが、全くマンガや絵を描かずにいる日を「休み」と定義するなら、その休みの日は本当に少ないですね。
とはいえマンガや絵を描くことが好きでこの仕事を選んでいるので、忙しくても全く苦痛ではありません。
少なくともやりたくない仕事もやらなければならなかった会社員時代と比べれば、今の方が圧倒的に楽しいですね。
もっと仕事ください(笑)!
―お仕事は先程おっしゃっていたとおり、PR記事やイラストが多いのですか?

そうですね。後は文章を書くこともあります。

文章に挟む画像も自分の絵だったりしますから、もうほぼ絵を描いて生きていますね。
―本当に絵を描くのがお好きなんですね。やしろさんの作品といえばお母さんネタ、会社ネタ、中二病ネタなどが定番ですが、ネタの作り方はどうされているのでしょう?

実録系のネタは、毎日つけている日記の内容をベースに作っていますね。
「お母さんとこんなやり取りがあったな」とか「あの時会社でこんなことあったな」とか、ネタのタネみたいなものを日記から掘り起こして、それをベースにマンガ向けに脚色して作品にしていきます。
一方、『アントレnet Magazine』でもやらせてもらっているようなオリジナル系のネタは、関連する情報を調べて思いついたことや、マンガから少し離れた時、例えばご飯食べている時に思いついたことなどを使っています。
<オフィスにいたシカのぬいぐるみに、何かインスピレーションを受けるやしろさん>
―日々の生活の出来事がそのまま作品にも活きているんですね。

そうですね。
身の回りのおもしろい出来事を見逃さないようにしていますね。
例えば、移動中とかは音楽を聴かないようにしています。歩いている時や電車に乗っている時にもおもしろい人や出来事って意外と発見できたりするんです。
―やしろさんの仕事への姿勢を聞いていると、本当に「好きを仕事にする」ことを体現されているなと思います。

そうですかね(笑)。
好きを仕事にする方法は、すなわち「仕事を我慢と捉えない」ことだと思います。
もちろん仕事ですから、全てが自分の思い通りにはなりませんが、その仕事をすること自体が楽しいと思えていれば、少なくとも苦痛ではないはずなんですよね。
何より好きなことが仕事になったら、毎日が圧倒的に楽しいです。
不得意な領域で「努力」するよりも、自分の好奇心に正直に「夢中」になった方が遥かに上手くなりますし、効率的だと思います。
会社にいながらでも、好きなことには打ち込める
<やしろさんのトレードマークのカラーコーンと一緒に>
―やしろさんの今後の展望を教えてください。

宇宙征服ですね。
―…。

嘘です(笑)。
正直に話すと、いろんな企業さんの広告マンガを、もっとたくさん描いていきたいですね。あとは自分のマンガを1つの作品に残したい、という目標もあります。
でもまずは、1つずつ目先の仕事をやっていくことが大切かなと思っているので、いただいているお仕事に真剣に取り組みたいですね。
もっと仕事ください(笑)!
―アントレ編集部の方で検討させてください(笑)。最後に、独立・起業を考えている方へメッセージをいただけますか?

自分の好きなことで仕事ができてそれでずっと稼いでいける、とは正直断言はできません。
少なからず運の要素も絡んできますし、どれだけ一生懸命やっても上手くいかないかもしれない。
仮に上手く行ってもずっとは続かないかもしれない。僕だって明日いきなり仕事がなくなってしまうかもしれません。
でも、稼いでいけるかは別として、自分の好きなことを始めるって意外とすぐにできるんですよ。
それこそ会社員を続けながらでも。
だったら小さくても、お金を稼げなくても、難しいことを考えずに始めてみればいいんじゃないでしょうか。
それを続けた先に、何か好きを仕事にする方法が見つかるかもしれません。
取材・文・撮影=内藤 祐介