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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第28回・メジャーリーグの合理性

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第28回・メジャーリーグの合理性

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

プロ野球の季節がやってきました。日本の野球界も盛り上がってはいますが、今の野球の話題のほとんどはメジャーリーグに移籍した大谷選手でしょう。これまでそれほど野球に興味がなかった人も、彼の活躍を気にしているのではないでしょうか。さて、日本のプロ野球とアメリカのメジャーリーグでは、シーズン開幕を迎えるまでの流れの中で、明らかに制度そのものが違っていることがあります。それは一体何でしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

今、もっとも盛り上がっているスポーツの話題といえば、メジャーリーグに移籍した大谷翔平選手でしょう。4月のこんなに早い時期から、しかも多くの人の想像を超えるだけの活躍をしてしまう大谷選手は、本当に「すごい」の一言ですよね。

思えば、1995年に野茂英雄選手が海外に渡り、そのピッチングで世界中の野球ファンを驚かせるまでは、日本人にとってはメジャーリーグははるか雲の上の存在でした。それが今や、たくさんの日本人選手がメジャーリーグに挑戦し、チームの中心で活躍しています。

そして、今後もこの流れは続きそうです。日本の野球のレベルが上がったことは喜ばしい一方で、日本のプロ野球で活躍した選手が次々に出て行ってしまうのは、若干の寂しさもありますよね。

それでは解説します!

メジャーリーグが多くの日本人にとって身近なものになった一方で、開幕を迎えるにあたっての流れが日本とメジャーリーグでは根本的に違っていることは、あまり知られていないかもしれません。

日本のプロ野球の場合、毎年2月1日はキャンプインの日と決まっています。キャンプ地にみんなで集まって練習し、オープン戦での調整を経て3月末のシーズン開幕に合わせます。

一方のメジャーリーグはというと、そもそもキャンプというものが存在しません。組まれているオープン戦に合わせて合流し、オープン戦の中で各自が調整を続けながら開幕に備えるのです。

なぜなら、それぞれの選手ごとに克服すべき課題や必要な調整が違うため、各自のペースで進めることが重視されているからです。つまり、大事なのは開幕してから活躍することであり、そのための調整の仕方が各自異なるのは当たり前だ、という合理的な考えのもと、このような流れになっているのです。

どちらのやり方がいいのかは置いておくとして、こうした違いがあることが、野茂や松井、黒田といったメジャーで活躍して世界で認められた日本人選手たちが、引退後に日本でコーチをやったりしないことと関係があるのではないかと言われています。

つまり、メジャーという世界一の舞台を知り、さらにそこでの合理的なやり方を身を持って体験したからこそ、合理的ではないやり方に違和感を持ってしまうということです。彼らがメジャーリーグで培った経験に期待する声はもちろんあります。しかし、古い体質の日本のプロ野球界においては、アメリカ流を持ち込みにくい風土がまだまだあるということなのでしょう。

「当たり前」にあえて目を向けてみると、いろいろなことが見えてくる

独立起業すると、何でも自分の思った通りに進めることができます。何をやるかを自分で選んでいけるからこそ、「何を選ぶか」がその組織の強みになることもあるわけです。

「日本のプロ野球界の当たり前はメジャーリーグの当たり前ではない」という話から学ぶべきことは、これまで「当たり前」「常識」だと思っていたことに、あえて目を向けることの大切さです。できれば一度、それに対して異を唱えてみたり、疑問を持ってみるというのは、起業家としての視点を養ううえで非常に役に立つはずです。

以前、「夜中だけ店を開けるパン屋さん」というのが話題になりました。終電が終わってから開店するにもかかわらず、多くの人が開店前から行列をなし、焼きたてのパンを買って帰るのです。

これは「お店を開けるのは朝から夜まで、そうでなければ24時間営業」という当たり前がある中での新しい商売の仕方であり、お店として大きな特徴を打ち出した希有な例と言えそうです(残念ながら店主が亡くなったため既に閉店してしまったとのこと)。

同じ発想で考えれば、「早朝だけ営業する」というお店のスタイルは、今後はありかもしれません。高齢化社会が進み、早起きするお年寄りが増えるはずで、彼らが朝の時間を有効に過ごすための場所がもっとできてもいいような気がします。

たとえば朝5時とか6時から立ち寄れて、テレビを見たり、雑談したり、朝食をゆっくり食べられて、他のお店が開き始める9時くらいになると閉店する、といった商売の選択肢は、副業みたいなかたちとしても十分にあり得るのではないでしょうか。

朝刊と夕刊以外の新聞だって、もしかしたらあり得る!?

新聞には朝刊と夕刊がありますが、「夜刊」というのがあってもいいのではないかということを、私はいつも考えています。

夕刊はその日の14時までの出来事を載せていますが、どうにも中途半端で、その日の出来事を網羅できていませんよね。インターネットでリアルタイムでニュースが見られる今の時代に、夕刊ならではの速報感はどうしても薄いと言わざるを得ません。

だったら、その日の夕方までのニュースを網羅するような「夜刊」があれば、逆にニーズはあるのではないかと思うわけです。

現実的には、印刷の時間や編集作業上の都合で簡単には実現できないかもしれませんが、電子配信という手段がとれる今なら、やりようもありそうですから商売としても十分に可能でしょう。

こういった、「当たり前」「常識」だと思われていることに、あえて目を向けてみると、いろいろな可能性が見えてくることがあります。そこに思わぬニーズが発見できることがあるかもしれません。ビジネスチャンスを見つけるヒントにもなるかもしれないので、頭の訓練のつもりで思考を巡らせてみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「キャンプ」でした。大谷選手の活躍を報じる中で、「ベーブルース以来の快挙」という例えられ方がされますが、100年近く前の偉人と比較されること自体が驚きですよね。彼の使ったバットやボールに既に高値がついているなんて話を聞くと、そこにこそ、ものすごいビジネスチャンスがあるような気がしてなりません(笑)。


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プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズアタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』 (講談社+α新書)。

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