起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
●経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第18回・イメージカラーで商売を有利に進める方法
いきなりですが、クイズです!
ヒントは、今まで大変だったビジネスがこの技術革新によって簡単になり、市場が大きくなる可能性がある、ということです。今回はちょっと難しいかもしれませんが、頭をフル回転させていろいろな可能性を考えてみましょう。
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
自動車の売り上げが減っていると言われています。自分の車を持っていることがモテる男の条件だった時代は、はるか昔のことになってしまったようです。
若者の所得が減っているとか、携帯電話にお金がかかるからだとか、シェアビジネスが普及したので持つ必要がなくなったとか、いろいろな理由が言われていますが、やはりかつてのように「車を持っているのがかっこいい」というような価値観がなくなっているのが大きいのかもしれません。
冒頭のクイズでも触れましたが、電気自動車の次のテクノロジーとして考えられているのが、タイヤとホイールの中にモーターが全部入ってしまう自動車です。それが自動車業界のエンジニアが予測する自動車の近未来の話で、もしかしたら10年後くらいにはそうなる可能性があるのだそうです。
それでは解説します!
さて、車のエンジンが全てタイヤやホイールに積まれるようになると、何が変わるのか。一番大きな変化として考えられるのが、「車の主要部品がタイヤになる」ということです。
そうなると、1つの大きな可能性が考えられます。それは、車がファッションアイテムになるということです。
もう少し具体的にお話ししましょう。車の主要部品がタイヤになれば、言ってみたら本体は何でもよくなるわけです。車を買ってしばらく乗って、「もっと居住性の高い室内に変えようかな」と考えて本体だけ丸ごとスイッチする、そんなことが可能になるわけです。
おそらく、この技術革新が進む頃は自動運転が当たり前になっているでしょうから、人々は車にただ乗っているだけで目的地へ行けるようになるはずで、車に求めるのは居住性の高さや、居心地の良さになる。つまり、自宅のリビングにあるソファを買い替える感覚で、車の本体を新しくする時代がやってくるのではないか…ということです。
この話を聞いた私の友人は、ならばビンテージカーのセールスができるのではないかということで、準備を始めました。ビンテージカーは人気がありますが、いつもネックになるのがエンジンで、エンジンが復活できなければ車は動きません。
ところが、次世代自動車の時代がくれば、タイヤとホイールだけを取り替えれば、本体は何でもよくなるわけですから、たとえばゴミ置き場で朽ち果てている古い車であっても、簡単に復活させることができるのです。
そうなると、人気のある定番のビンテージカーはもちろん、初代プリウスや90年代のカローラ、スバル360といった高いお金をかけて復活させるほどではないような懐かしい車であっても、この先、意外と値段がつくかもしれない…というのが、友人の考えです。
そもそも車の形をしていなくてもいいかもしれない
もちろん、電気自動車であれば、車を動かすためのモーターが本体に積まれる可能性はあるでしょう。それでも、本体を変えればいいという発想がもたらすものは、想像以上に大きいわけです。
ビンテージカーや、先に挙げたような懐かしい車はもちろんですが、T型フォードのようなちょっと特殊な車も、気軽に乗れる時代になるかもしれない。居住性や居心地の良さで考えたら、そもそも車の形をしていなくてもいいのかもしれませんよね。
今まで当たり前だったことが変わるだけで、実は皆さんが思っている以上に大きな革新が起こることがお分かりかと思います。
そして、そうした変化の本質をうまく見抜くことができれば、そこにチャンスがあることに気付けるかもしれないのです。
10年後の自動車業界で、あなたならどんなビジネスをしたい?
自動車のマーケットは、あと5年くらいで自動運転車や電気自動車が主流となるなど、この先は激変するだろうと言われています。Uber(ウーバー)の自動車配車サービスも、その先駆けの1つでしょう。
そんな中でも、意外と起業できるチャンスは潜んでいるのかもしれません。皆さんなら、10年後の自動車業界でどんなビジネスをしたいですか? ぜひ考えてみてくださいね。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「ビンテージカーのセールス」でした。味のあるビンテージカーもいいですが、東京モーターショーに出てくるようなコンセプトカーや、外観がかっこいい車が街中を走るなんて時代も、そう遠くないうちにくるかもしれませんね。自動車が若者に人気になったりしたら、それはそれで新たな一大市場です。どんな未来になるのか、楽しみです。
経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博