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法人税の税率が下がってきた?上手に節税するには?

法人税の税率が下がってきた?上手に節税するには?

法人に対する税金というと、結構な割合で課税されるというイメージをお持ちの方も多いのではないかと思います。しかし、実は近年の税制改正で税率が相当下がっていることをご存じでしょうか?

法人税率の動向

利益に対してどれだけの税金を課すのか?という割合のことを専門用語で実効税率(または法定実効税率)と言います。
利益に対して課税される主な税金は法人税ですが、それ以外にも住民税や事業税等があります。
これら複数の税金を併せて「どれくらい課税されるのか?」を計算するための数字が実効税率です。

実効税率ですが、近年の税制改正で大きく低下してきました。2017年時点では、30%くらいで推移しています。中小法人の場合には、年間800万円までの利益については低い税率が適用されますので、更に実効税率は低下します。

なぜ実効税率が低下したのかといえば、企業側からの要請が大きいと言われています。
大きな経済団体から「日本の実効税率は欧米各国と比較しても高い!」「国際競争力を高めるためにももっと低くするべきだ!」といった要望が繰り返し提示されています。

このような流れを受けて、平成23年頃から実効税率の引き下げが続きました。
今から10年くらい前には実効税率が40%程度であったことを考えると、かなり大幅に引き下げがあったことがわかるかと思います。

実は実効税率の引き下げは、単に「税金が安くなる」ということを意味している訳ではありません。ほかにも様々な影響を及ぼします。

企業の設備投資や賃金上昇を後押しする狙いがある

「税額が下がれば企業にはそれだけ資金が残る、その資金を用いて積極的に設備投資をしてもらい、景気拡大に協力してもらおう!」
「資金力に余裕が出るのだから、その分社員さんに対する給与を引き上げてもらい、個人消費の後押しに協力してもらおう!」
こんな狙いもあって、実効税率の引き下げは行われました。

ただ、この点に関しては疑問も呈されています。
税率がどれだけ下がろうとも、企業としては「自社の利益を最大化すること」が目的です。

どれだけ手元資金に余裕があっても、実際に有望な事業分野が開拓されていなければ追加の設備投資を行う意味もありません。
それに、特に必要もない人件費の値上げには協力する道理がありません。

この理屈でいうと、実効税率の引き下げは景気拡大には役立たないという理屈になってしまうのですが、専門家の間でも意見が分かれているところです。

税源の移行を進めたい

欧米各国と比較すると、日本の税制はこれまで利益に対する課税に偏重し、付加価値税(日本で言うところの消費税)は補助的な税源としてみられてきました。

しかし、企業側からの論理で考えると、最終消費者、つまり我々一般市民が負担者となる付加価値税(消費税)が重視される方がより多くの利益を確保することができます。
また政府・行政のそばからしても、変動の幅が大きい利益に対する課税から、比較的安定的に徴税をすることができる付加価値税に税源を移行することで安定的に税収を確保することができる狙いがあるとも言われています。

これまでの動向も踏まえ、今後の実効税率に関する動向を考えると「法人の利益に対する課税が強化される方向に行く可能性は低そうだ」ということがわかります。

個人側の負担はどうなっている?

その一方で、個人側の負担はどうなっているでしょう?皆様も感じられているかもしれませんが、個人に対する課税は年々強化されています。

個人所得税に関しては、各種控除の削減や適用税率の変更により、特に高額所得者に対する課税が相当強くなりました。また少し系統は異なりますが、相続税も大幅に課税強化されたことは記憶に新しいところです。

税金だけではなく、社会保険についても同様です。少子高齢化の流れもあって、社会保険の負担は年々増加し続けています。
個人事業者が加入する国民健康保険・国民年金についてもそうですし、企業が加入する健康保険・厚生年金についても同様です(健康保険と厚生年金については企業の負担額も増えています)。

中小法人の経営といえば、以前は「法人に利益を残さないで個人側に給与でもってくる方が良い」という風潮でした。
しかし、上記のような動向の結果、下手に個人側へ利益をもってきてしまうと、個人課税や社会保険負担の増加によって、より高額の租税公課を負担する可能性が高まってきました。

ですので、最近では無理をして個人側に利益を移転させず、法人側に利益を残して、素直に法人税等を支払った方がお得なのでは?という例が増えています。
また、個人事業者については法人成りを上手く活用することで、かなりの節税を実現できることもあります。

もちろん、実際には事業規模や利益の金額など様々な要因を検討する必要があります。特に個人事業者が法人成りを検討する場合には、改めて社会保険に加入しなければならない点が要注意です。
とは言え、法人という仕組みを上手に活用することで、かなりの節税を実現している人が増えているのは事実です。

まとめ

法人の利益に対する実効税率は年々低下しています。経済団体等の思惑もあり、利益に対する税率が強化される可能性は低い状態にあると言えます。
その一方で個人に対する課税や社会保険負担は増加する傾向にあり、下手に個人側に利益を移転させず、法人に利益を留保することで全体での税負担を軽減する事例が増えています。

PROFILE

税理士 高橋 昌也

2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。
その後、ファイナンシャルプランナー資格取得。
商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。

[保有資格等]
AFP、税理士、商工会議所認定ビジネス法務エキスパート

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