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審査落ちは回避したい!創業融資制度が受けやすくなるポイント ~法人設立初年度から知っておくべき税金について【第4回】~

審査落ちは回避したい!創業融資制度が受けやすくなるポイント ~法人設立初年度から知っておくべき税金について【第4回】~

将来的に法人設立を考えている方や、今まさに法人化の準備をしている方、必見! 初年度から知っておくべき税金について、プライムファイナンシャルパートナーズ会計事務所の菅 彰裕さんにお話を伺う連載の4回目。菅さんは世界4大国際会計事務所のメンバーファームの1つであるPwC税理士法人を経て独立開業された税理士さんです。非上場企業から上場企業まで、幅広いクライアントの業務を担っている菅さんだからこそ知りうる税金の話をたっぷりお伝えします!
前回は、経費になる領収書・ならない領収書についてお伝えしました。今回は、創業融資制度の特徴と、融資が受けやすくなるポイントについてご紹介します。

初年度に活用したい、2つの創業融資制度

起業時には、開業資金だけでなく運転資金の準備など何かと物入りですよね。そんなときに活用したいのが創業融資制度。今回は、2つの創業融資制度をご紹介します。

1)日本政策金融公庫による新創業融資制度
新たに事業を始める人や事業を開始して間もない人が無担保・無保証人で融資を受けることができる制度で、政策金融公庫からの貸し付けとなります。
申請から入金まで最短1か月弱しかかからないため、スピード感があるのも魅力のひとつ。起業時はまとまったお金が必要なので、なるべく早い時期に融資を受けられると助かる…というのが本音ですよね。
融資限度額は3000万円ですが、通常は1000万円以下の借り入れを受ける方がほとんどです。据え置き期間は最高6か月と定められていて、これは最初の6か月間(最大)は金利の支払いのみで元本の支払いは先延ばしされます。企業は投資したお金を元に売り上げをあげ、投資回収し始めた後に元本を払うことになると想定されるので、キャッシュフローが良い経営を行うことができます。

2)地方自治体による制度融資
制度融資は、都道府県や各市区町村などの地方自治体の管轄地域に住む住民や、事業所を置く企業を対象とした融資です。自治体が直接貸し付けを行うのではなく、信用保証協会及び金融機関と提携して融資の斡旋を行います。日本政策金融公庫では公庫と借り手の2者だったのに対し、制度融資では銀行と借り手の中に保証協会が加わり、3者で執り行われるのです。
保証協会に保証してもらうには、借りる年数にかかわらず、決められた保証料を保証協会に融資がおりるタイミングで払わなければなりません。据え置き期間がないため、初めの負担が少し大きいと言えます。さらに、金利も併せて支払う必要があります。
また、日本政策金融公庫の新創業融資制度が代表取締役の連帯保証は不要である一方、制度融資では連帯保証人として代表者が入らなくてはなりません。

■地方自治体による制度融資の事例…東京都港区の制度融資
制度融資の要件は各自治体によって異なります。ここでは、東京都港区を例に挙げて説明します。
港区では産業振興課が創業者を対象に事業計画の作成などの講習を行っており、そこで受講証明書を交付されると制度融資をとるときに利息が少し下がったり、起業するタイミングで登録免許税(多くの場合は15万円)が半分になったりするといったメリットがあります。
デメリットとしては、まず講習を受けるのに時間がかかること。さらに制度融資の申請から入金まで3〜4か月かかってしまいます。なぜなら、区が審査したものを東京都の保証協会が審査し、その上で金融機関の審査が入るからです。

融資が受けやすくなるポイントとは?

融資を受ける可能性を高めるには、税理士などの専門家に相談するのがベターです。その理由は2つあります。
1つ目は、専門家は常日頃から融資用の事業計画を作っているからです。金融機関などに提出する事業計画は、それなりの書き方や根拠が必要です。もちろん個人で作成することも可能ですが、いくら根拠を集めてももしそれが見当違いのものであれば意味がありません。むしろ、マイナスポイントとなり審査に不利となってしまうこともあるのです。
2つ目は、金融機関に行く際、税理士などが同行した方が相手方に安心感を与えるからです。金融機関は融資の時だけでなく、その後も企業の状況を税理士から聞くことができます。定期的に試算表を出してもらったり、財務諸表の内容を伝えてもらったりすることが可能となるので、安心して融資をしてくれる可能性が高くなります。
さらに、その専門家の中でも、「認定経営革新等支援機関」となっているところがオススメです。中小企業庁により2016年7月1日に施行された「中小企業等経営強化法」では中小企業・小規模事業者等による経営力向上のための取組の支援として、認定経営革新等支援機関による支援を行っています。
実は、この経営革新等支援機関として認定されている税理士法人や金融機関のレビューが入った事業計画を提出すると、創業融資が通りやすくなる場合が多いのです。
さらに、少し金利が安くなったり条件が良くなったりすることがあるというメリットも。
国としては、経済活性化のために中小企業のレベルの底上げを図っているので、その国が認めた機関の人たちと共に事業計画に沿ってきちんと経営してほしいという思いから、こういった優遇措置が用意されているのです。

融資を受けた後が本当の勝負

しばしば審査が通って融資を受けた段階で、緊張感が薄れてしまう人がいます。
借りすぎて気持ちが大きくなり、失敗する人も実はとても多いんです。200万円でスタートした人は、その200万円を細分化し、事務所費はこれくらいに抑えて…と計画性をもって配分しますが、1000万円借りた人は必要以上に広い事務所を借りてしまうといったケースも多々あります。
また、金利や返済期間を考えずに安易に好きな金額を借りてしまう人もいます。
金利を払っている、ということは当然ですがお金を払っているということです。例えば1000万円借りたときに金利が2%の場合、年間20万円となります。20万円あれば広告宣伝に充てることが可能です。その額を金利として支払っている、という自覚を持つことが大切です。
冒頭で述べたように、初めは初期投資や運転資金を準備する必要があるので、創業融資制度を活用することはオススメです。しかし、きちんと計画性をもって借り、事業計画に沿って経営をし続けることが何より重要なのです。
次回も法人設立初年度から知っておくべき税金について、引き続き菅さんにお話を伺います!

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プライムファイナンシャルパートナーズ株式会社
税理士 菅 彰裕

世界最大級のPwCグローバルネットワークのメンバーファームであるPwC税理士法人より独立開業。非上場企業、上場企業、日本居住者、非居住者と幅広いクライアントの業務を担当する。
業務内容は、オーナー企業の事業承継対策の検討、組織再編によるグループ会社の整理、事業承継のための株価対策、国内および国外のIPO支援、国内買収案件における税務デューデリジェンス、非居住者の国内投資にかかる税務コンサルティング、その他執筆サポートなど。

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