起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
●経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第9回・ソフトバンクの「SUPER FRIDAY」
いきなりですが、クイズです!
最近はニュースでも取り上げられることが増えました。誰もが知っている電化製品ですので、身の回りをよく見て、想像力を働かせながら「便利になりそうなもの」を考えてみてください。
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
スマートフォンが普及したことで、私たちの生活は大きく変わりました。あらゆることが便利になり、スマートフォン1つあれば大概のことはできる時代になったといえます。
まだまだスマートフォン関連のビジネスは成長を続けています。AIやIoTに代表されるような最先端技術を取り込んだ新しい使い方が、今後も続々と生まれていくでしょう。
もちろん、そこにビジネスチャンスを見出すことも十分に可能です。でも、せっかくなら「第2のスマホ」と言えるような新しい市場にチャンスを見出すことも、起業家に必要な「野心」かもしれませんよね。
それでは解説します!
最近のIT・デジタル製品を語る際に欠かせないのが、「インタラクティブ」というキーワードです。
「双方向」という意味で使われる言葉で、一方的なやりとりではなく、対話をするように相互作用的に働く機能のことを言います。
そのインタラクティブという機能をうまく使った電化製品として注目されているのが、音楽スピーカーです。スマートフォンにちなんで「スマートスピーカー」などと呼ばれていますが、音声認識機能の精度が格段に上がったことで、あらゆるIT企業やメーカーが、商品開発に力を入れ始めています。
2014年にはAmazonの「Amazon Echo」が他メーカーに先駆けて発売され、2016年11月にはGoogleの「Google Home」も発売となりました。
また、Appleの「HomePod」が日本語対応で2018年以降に発売されることが決まっているほか、Microsoftも日本語対応のAIスピーカーの発売を予定しています。
国内メーカーでも、NTTドコモやLINE、ソフトバンクが年内の発売を予定していると発表するなど、一気に商品ラインナップが充実しそうな勢いです。
スマートフォンもいらない時代が来る!?
スマートスピーカーに注目が集まる一番の理由は、「音が出るもの」だからです。ディスプレーがあることによってスマートフォンが便利に使えるように、スピーカーから音が発信されることで、インタラクティブなやりとりが非常にしやすくなります。
あとは、テレビやオーディオに近い場所など、人が集まるところに設置されているケースが多く、常に電源とつながっている点もあるでしょう。時間や場所を選ばず、便利に使えます。
実際にどう使うのかといえば、たとえばスピーカーに向けて「テレビ」と話しかければ、それだけでスピーカーがテレビを付けてくれます。また、「ちょっと寒い」と話しかければ、自動的にエアコンの温度を上げてくれるでしょう。
これだけでも、何やら便利そうだなということが想像できるはずです。スマホがなくても、声だけでいろいろなモノを動かすことができるようになれば、我々の生活はもっと変わるかもしれませんね。
どんなアプリがあれば、人々の生活はもっと便利になるか?
ここまでは「便利だね」という話ですが、起業家マインドを養うためには、もう一歩、思いを巡らせることが必要です。
よく考えてみてください。スマートフォンができたことで、アプリを作っている人たちにいろいろなチャンスが生まれました。そして、様々な便利なアプリが生まれ、それをいち早く考えた人たちが有名になったり、事業的に成功をつかみました。
今後、スマートスピーカーが普及していく課程で、「スマートフォンの時と同じことが起こるのではないか?」というのが、今回のポイントです。
つまり、スマートスピーカー向けに、自分ならどんなアプリを作って何をするのかを考えてみることが大きなビジネスチャンスを掴むことにつながるのではないかということです。
いくつか例を挙げてみましょう。
まず分かりやすいのが「天気予報」です。「今日は暑い?」と聞いたら、「今日は30度なので半袖がいいよ」「夕方から雨だから傘を忘れないで」などとスマートに答えてくれるアプリがあれば、非常に便利だし、たくさんの人が利用しそうです。
もちろんスピーカーですから、「音楽のダウンロードアプリ」は相性がいいに決まっています。好きな曲を覚えさせておけば、それを順番にかけてくれたり、好みの曲の傾向に合ったものをチョイスして流してくれれば、非常にスマートです。
「ピザの配達」なんかも便利になるかもしれません。近所のピザ屋のクーポンが登録されたアプリが搭載されていれば、一番安いお店を自動で選び、注文まで自動的にしてくれるかもしれません。
スマートフォンの事例を参考に考えれば、ヒントを見つけやすい!
スマートスピーカー向けのアプリを考える時に、私たちは既にスマートフォンの事例を知っていることは、大きなヒントになるはずです。既にあるものを置き換えるだけでも、いろいろなアイデアが浮かびそうです。
世の中が便利になったり、多くの人に支持されるようなものが出てきたときに、それを「便利になったなあ」とただ享受するだけでなく、一歩踏み込んで「どこにビジネスチャンスがありそうか」を考えてみることは、経営者に必要な力の1つです。ぜひ、取り組んでみてくださいね。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「スピーカー(スマートスピーカー)」でした。ちなみに、スマートスピーカーはあくまで「賢いスピーカー」であって、音の良さを追求するものではない点は1つのポイントです。ゆえに高性能の割に比較的安価なものが多く、誰もが購入しやすくなっているようですね。
経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博