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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第137回・色で分からせる

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第137回・色で分からせる

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

前回、ファミリーマートのソックスを取り上げた中で、コーポレートカラーである青と緑のラインが入った商品があるという話をしました。それにちなんで、今回はコンビニエンスストアにまつわる記憶力クイズです。「セブンイレブン」と「ローソン」のコーポレートカラーは何色でしょうか?
※セブンイレブンは3色、ローソンは2色あります。白は含みません

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

前回はファミリーマートの話でしたが、今回は同じコンビニエンスストアチェーンの「セブンイレブン」と「ローソン」をクイズにしてみました。テーマはコーポレートカラーです。

どちらのチェーンも全国にたくさんの店舗があるので、よく目にしているはずです。どんな色が使われているのかすぐに分かりそうなものですが、意外と浮かばなかったりもします。

さて、皆さんはどうですか?

それでは解説します!

コーポレートカラーというものは、とても重要です。その色から「あの企業だ」と定着すれば、ブランドとして非常に大きな強みとなるからです。

身近な例を挙げてみましょう。大手通信会社だと、ドコモが赤、auがオレンジ、ソフトバンクが白とグレーというのは、皆さんもすぐに浮かぶのではないでしょうか。

同様に、大手メガバンクの場合は三菱東京UFJ銀行が赤、三井住友銀行が緑、みずほ銀行が青。それぞれ社名と色がセットになり、うまくすみ分けられている印象ですよね。

また、業界そのものが色でイメージされる場合もあります。使われている色によって「どういうお店か」の認知が早まるメリットがあります。

わかりやすいのは、イタリアンとフレンチのお店です。それぞれの国旗の色から、イタリアンは緑(と赤と白)、フレンチは青(と赤と白)をうまく使って、何料理のお店かをわかりやすく印象付けています。

居酒屋は赤がよく使われますが、それはもちろん「赤提灯」のイメージからでしょう。

少し前だと、九州以外の土地で豚骨ラーメンが流行り出したときは、とにかく黄色い看板のお店が多かったのです。まだ豚骨ラーメンが浸透していなかった頃は、「なんだ!?この白いスープは?」というお客さんも多かったそうです。普通のラーメンとは違うものを出していることを知らしめるために、九州で人気のラーメン店がよく使っていた黄色の看板を使ったのだといわれています。

最近だと、大盛りで人気の二郎系のラーメンを出すお店が黄色い看板をよく使っている印象です。これも本家である「二郎」というお店の看板が黄色いからで、その影響を受けたお店であることを看板の色で印象付けているわけですね。

お店やブランドにとって、色は非常に大事なものであり、消費者は知らず知らずのうちに色によってその社名やお店・ブランドを認知している、というわけですね。

さて、冒頭のクイズですが、分かりましたでしょうか?

セブンイレブンは「緑」と「赤」「オレンジ」の3色で、ロゴマークにも3色がちゃんと使われています。

ローソンは「青」と「ピンク」の2色で、店員さんの制服や外観などでもこの2色が強調されています。

「あと1つは何だったっけなあ」という人が多かったと予想しますが、そんな人も「見れば納得」のはずです。

コーポレートカラーは「簡単に変えてはいけない色」

広告関係の仕事をしたことがある人ならよくご存知だとは思いますが、企業は色やロゴをとにかく大切にしています。

ついついデザインや色味をいじりたくなってしまうものですが、それをやるとものすごく怒られてしまいます。それくらい、企業にとっては印象を左右する「簡単に変えてはいけないもの」なのです。

ただ、そんな中でちょっと面白いなと思ったのが、東京・銀座にできたユニクロの新しいお店です。そこでは、看板の色を電飾で次々に変え、いろんな色のユニクロの看板を出しているのです。

例えば、ユニクロの赤が突然「緑」になったりします。遠くから見ている人は、その瞬間はいつもとは違う「緑のユニクロの看板」が出ているのを目にするわけですね。

一般的に簡単には変えないものでも、ユニクロくらい巨大な存在になってくると、そういう余裕も生まれてくるのでしょう。そして、逆にそれが1つのブランディングにつながったりもするわけですね。なかなか奥が深いです。

差別化をはかるために、あなたはどの色を選ぶ?

起業して自分の会社をどんな色で印象付けていくかは、長く続けるためにも実はものすごく大事な話です。だからこそ、最初からちゃんと考えて選んだ方がいいでしょう。

1つの視点として「業界における強力なライバルとは違う色にした方がいい」というのはあるかもしれません。かといって、業界のイメージからかけ離れる色を選ぶと、認知してもらうまでに時間がかかったりして逆効果です。

競合他社はもちろん、他の業界の事例などもチェックしたうえで、しっかりと決めていきたいものですね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「セブンイレブンは緑・赤・オレンジ/ローソンは青・ピンク」でした。ちなみに、かつてタクシー会社は各社で色分けされていましたが、最近はどこの会社もほぼ黒系でイメージを作っているようですね。各社のカラーが出ていたのに、ちょっともったいないような気もしてしまいます。


PROFILE
プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

構成:志村 江

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