現在、私たちの生活に直撃している物価高。
世界情勢による原油高や、記録的な円安をはじめとするさまざまな原因から、身の回りのものの値段が高くなっています。
日常生活ではもちろん、フリーランスの方は、自身の事業にも多かれ少なかれ、影響を受けているのではないでしょうか?
やさしいお金の専門家・横川楓先生に今回伺ったテーマは、そんな物価高について。
正直なところ、原油高や円安は、個人レベルの規模でどうにかできる問題ではありません。でもだからこそ、自分ができることからやっていくべきだと、横川先生は語ります。
今回は物価高の仕組みから、個人でできることについて伺いました。
横川楓さん
やさしいお金の専門家・金融教育活動家
一般社団法人日本金融教育推進協会 代表理事
明治大学法学部卒、その後同大学院へ進学。
24歳で経営学修士(MBA)を取得。
実家は会計事務所を経営。
同年代の友人たちのお金に対する意識と、将来の資産形成、所得格差、年金問題、増税など、これからの日本を担う世代に振りかかるさまざまなお金の問題との乖離に疑問を持ち、お金の知識の啓蒙活動を開始。
ファイナンシャルプランナー(AFP)や、SDGs検定、マネーマネジメント検定等の資格を取得し、2022年1月に一般社団法人日本金融教育推進協会を設立。
同法人の代表理事を務める。
横川さんのインタビュー記事はこちらから!
「収入=給与」に縛られない。経済評論家・横川楓さんに聞く、独立・起業に必要な2つの条件
庵(いおり)
イラストレーター
都内に住む27歳のフリーランスイラストレーター。
学生時代から絵を描くことが好きで、数年前から副業としてイラストレーターの仕事を受けるようになった。
近年は副業での収入が本業の稼ぎより多くなったことから、独立を決意する。
物の値段が高くなったのはなんで? 3つの原因

横川先生、最近値上げラッシュですね。でも私は、恥ずかしながら何が起こっているのか、あんまり事情が分かっていなくて……。

ニュースを見ててもあんまりピンとこないって人も多いよね。
簡単に説明すると、今起こっている値上げラッシュは「原油高」と「コロナ禍における供給不足」。そして「円安」が主な原因とされているよ。
「原油高」については端的に言うと、コロナ禍から経済活動が再開して、世界的にエネルギー需要が増大したこと。そしてロシアとウクライナの戦争が原因で、原油の価格が高騰しているんだ。

「供給不足」も「原油高」と同じく、コロナ禍からの経済活動の再開が関係しているんですね。

そうだね。そしてもう1つは「円安」の影響。
庵ちゃんは、円安、円高って言葉は聞いたことあるかな?

「円」が「安」いってことは、外国のお金と比べて円の価値が安くなってるということでしょうか?

そうだね。主にアメリカのドルと比べた時に、
例えば「1ドル=100円」で交換されていたレートが、
「1ドル=90円」で交換されるようになったら円高
と、解釈できるね。
その時のさまざまな社会情勢や事情によって為替が動いて、円安になったり、円高になったりする。ちょうどシーソーのような関係だね。

円安が起こってる、ということは、私たちがアメリカのモノを買う時に、今まで以上にお金を出さないといけないってことですよね?

そういうこと。
でも逆に、海外に日本のものを売る時は、円が安いからたくさん買ってもらいやすくなる。
ということは「海外のお金が日本に入ってきやすい環境」にはなっているから、社会全体の景気から見れば、悪いことだけでないという側面もあるけど……。
私たち一般消費者の観点から見ると「外国の商品を安く買える」円高の方が、お得に感じやすいかもしれないね。
円高円安にも、基本となる「資産分散」の考え方

日常生活でこれだけの影響だと、事業によっては相当の打撃を受ける人もいますよね……。

庵ちゃんのようなイラストレーターさんであれば、例えば絵を描くのに必要なデバイスや画材が高騰しているかもしれないし、飲食店を経営する自営業者の方は、食品などの原材料費が上がっているかもしれない。
海外からの輸入に頼っていると、円安と原油高の高騰の影響は、どうしても免れないからね。
仕入れの値段が上がるとなると、どうしても販売価格を調整(値上げ)していくしかなくなってしまうよね。

私たちはどうすればいいんでしょうか(泣)?

正直、今起こっている物価高を、個人レベルでどうにかすることは不可能と言っていいと思う。
でも今回の件から学べるのは、やはり資産は分散させた方がいい、ということ。

これまでつみたてNISAや投資の話の時にも、横川先生はおっしゃっていましたよね。

これは私の所感だけど、このまま永遠に円安が続いていくってことは、おそらくないと思う。
なぜならさっきも言った通り、為替というのはシーソーのような関係で、その時々で揺れ動くものだから。
だから、円安にも円高にも、どっちにも対応できるようにしておこう。

どちらにも対応できる、というと、円以外の資産を持つ、ということですか?

うん。まぁ「貯金や投資はしているよ」という人でも、日本に暮らす私たちの生活は「円」を中心に回っているから、円以外の外貨について触れる機会は、どうしても少ないかもしれないけど……。
これをきっかけに外貨に対しての知見を、深めていってもいいかもしれないね。
「アメリカドルだけが絶対安心!」というわけではもちろんないけど、円が安くなってもドルをはじめ、外貨を持っていた方が資産を守ることに繋がると思うんだ。
大切なのは、今の自分にできることを考える

他に何かできることはないのでしょうか?

元も子もない言い方になってしまうけれど、物価高に対応できるようにするには、今の自分の収入を増やしていくしかないと思う。
「出ていくお金が増えていく」のなら「入ってくるお金を増やしていく」という、シンプルな考え方に行き着くよね。
会社員の人は給与を上げてもらうよう交渉をしたり、個人事業主の人は事業収入を増やしていくとか。
今の仕事や事業で収入の限界があるのなら、副収入を確保できる道を探す、というのでもいいよね。
でも結局、個人レベルでできることは限られてくる。あとできることがあるとすれば、選挙に行くことじゃないかな。

選挙ですか?

原油高や円安に対して、根本的にどう解決(生活の負担を軽減)させるかはもう、政治の力がないと不可能。
マクロの視点での対策は、政治家にお願いするしかないけれど、私たちは投票という形でその政治に参画することができる。
つい最近参院選があったけど、私たちの代表として政治をする人たちを、私自身がちゃんと選ぶことが、国を変えていくための方法なんだよね。
個人レベルのミクロの視点でできる対策は、出ていくお金と入ってくるお金をもう一度見直して、入ってくるお金を増やしていく。
大切なのは、今の自分にできることがなんなのかを、ちゃんと考えることじゃないかな。

横川先生、ありがとうございました!
構成・文・撮影=内藤 祐介
イラスト=ram