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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第112回・焼き鳥が足りない!

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起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

緊急事態宣言が解除され、11月時点では新型コロナウイルスの感染者も減っています。飲食店の営業も再開し、お酒の提供も解禁となって飲み屋街にもお客さんが戻り始めました。しかし、そんな中でいわれているのが飲食店の「焼き鳥不足」です。その原因を遡っていくと、タイにある食品加工の工場が稼働できていないからだと分かりました。なぜこのようなビッグチャンスに、工場が稼働できていないのでしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

飲食店に客足が戻り始め、かつてのようにお酒を楽しむ人の姿も見られるようになりました。そんな中、実は深刻なのが、お酒のつまみの定番である「焼き鳥」が不足しているという事態です。

多くの焼き鳥は「開発輸入」というかたちがとられています。開発輸入とは、国内の企業が企画・開発を行った商品を国外のメーカーが生産し、日本に輸入する仕組みのことです。今回の焼き鳥の場合は、タイの工場で鶏肉をカットして串に刺し、すぐに焼ける状態まで加工して冷凍したものが日本に運ばれてくる流れとなります。

しかし、国内の需要が一気に動き始めた大事な時期にも関わらず、焼き鳥が足りなくなり、このままだと品切れを起こす可能性も考えられます。一体なぜでしょうか。

それでは解説します!

コロナ禍で一気に需要が高まり、マスクやティッシュペーパーが品薄状態になったのは記憶に新しいところです。焼き鳥不足にもそういった急激な需要増という側面は多少あるかもしれません。

また、船を使って日本に商品を運ぶため、その分の時間のロスは確かに発生します。ものが集中し船からの水揚げが混雑していることも考えられますが、どうやら原因はそれでもないようです。

では、なぜ日本に焼き鳥が届かないのか。サプライチェーンを遡っていくと、面白いことが分かりました。そもそもタイで日本向けに焼き鳥を作っている食品加工工場が半分しか稼働していないのだそうです。

日本の今の需要を考えれば、作っただけ売れるはずです。現地でもコロナ禍で働けなかった人は多いので、工場で働きたい人はたくさんいるでしょう。それなのに、このようなビッグチャンスにもかかわらず工場が稼働できていないのはなぜなのか。

それは、働く人の半分が外国人労働者だったからです。彼らがコロナ禍で帰国し、その後、タイに戻れていないため、働きたくても働けないわけです。よって、工場は人手が足りず稼働したくてもできない状況が続いているのです。

これは外国人労働者に頼っている日本でも同じことが起こり得ます。実はコロナ禍が浮き彫りにした課題の1つでもあるわけですね。

クリスマスプレゼントのおもちゃが買えなくなる!?

タイに入国できない労働者がたくさんいることによって、日本中の居酒屋が困ってしまうというのは、ちょっと不思議な感じがしますよね。でも実は今、こうした特殊例によるサプライチェーンの停滞が世界中で起こり始めているのです。

分かりやすいのが半導体です。ニュースなどでもよく取り上げられていますが、半導体不足によって自動車の生産が追いつかず、受注できても納品できない状態が続いています。最近では人気ゲーム機が半導体不足で減産することを発表しましたが、半導体不足は今後もいろいろな影響を及ぼすかもしれません。

意外と知られていないのが、中国全土で起こっている停電の話です。これは「カーボンニュートラル」を目指す取り組みと関連しています。要は、国として「温室効果ガスの排出を減らす」という目標達成が厳しいため、それなら電気を使えないようにしようと一律で止めてしまう政策の1つなのです。

これによって何が起こるかというと、停電によって中国の地方都市にある工場の稼働ができなくなります。その影響はすでに出始めていて、アメリカでは中国製に頼っていたハロウィンの仮装グッズが足りなくなったそうです。

今後、年内の目標達成に向けてさらに電気を止める可能性があるといわれていますが、そこで考えられるのが、クリスマスや年末商戦に向けた品不足でしょう。中国の工場が止まって部品が足りないという理由から、プレゼント用のおもちゃが買えなくなることは十分に考えられます。また、中国製の商品を多数取り扱う100円ショップでも、当たり前に買えた商品が品薄になるなんてことが起こり得るのです。

世界中が便利につながっているからこそ思わぬ事態が起こりやすい

今の時代は、サプライチェーンがグローバルにつながって連鎖しています。だからこそ、今回のコロナ禍からの回復のような急激に需要が高まる時期では、あらゆる産業において思わぬリスクが現実化する可能性があります。

私のような評論家にとっては、こうした世界の動きはすごく勉強になるもので、あらためて「世界の経済はこんなふうにつながっているんだ」ということを痛感しましたし、何がボトルネックになるか分からない状況を非常に興味深く見ています。

今、どの産業で何が起こっているのかをしっかり見ていくことは、世の中の構造を知るための大事なヒントとなるはずです。ぜひ注目してみてください。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「外国人労働者が工場に戻ってこられないから」でした。ちなみに、「業務スーパー」のようなお店でも焼き鳥不足による価格の変動が起こり始めているようです。輸入に頼る日本においては、そういう値動きをチェックするのも1つの学習材料になるので、ぜひチェックしてみてください。

構成:志村 江

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PROFILE
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

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