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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第102回・51という数字の秘密

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起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

以前の品薄時の異常な高値は何だったんだろうか…と思えるほど、最近は値段も落ち着き、かなり安く買えるようになったマスク。50枚入りの箱でまとめて購入している人も多いと思いますが、最近はネット通販で安いものを買おうとすると、「51枚入り」のセットが多くなっています。実はこの「51」という数字には深い理由があるのですが、なぜ51枚入りなのでしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

今や毎日の生活には欠かせなくなったマスク。値段もだいぶ安くなりましたし、ファッションに合わせて選べるようになのか、白だけでなく黒やグレー、水色、ピンクなど色のバリエーションも増えています。

薬局などの店頭で50枚入りの箱が山積みされているのをよく見かけると思いますが、ネット通販を利用すればさらに安く買えるものもあります。便利なので私もよく購入するのですが、その時に気づいたのが、50枚入りではなく「51枚入り」で届くということです。

なぜ業者さんは51枚という半端な数で売っているのでしょうか。実は、これには深い理由があります。

51枚にすることで、業者からしたら売りやすくなり、我々消費者からしても安く買えるようになるわけですが、今回はその理由を考えてみてください。

それでは解説します!

今回のクイズを考えるうえでポイントになるのは、「ネット通販」という点です。ネット通販において欠かせないものといえば、「送料」です。

簡単にいってしまうと、51枚の方が、50枚よりも送料を安くしやすいのです。

例えば、業者が50枚入りのマスクを売っている箱ごと送ろうとする場合、市販のものを思い浮かべてもらうと分かりやすいと思いますが、箱自体がある程度の大きさになるため、宅配便で送ろうとすれば60サイズという扱いになります。これだと送料は900円以上かかります。

一方、51枚の場合を考える際にポイントになるのが、この「51」という数字です。51=17×3となるわけですが、マスクを17枚パックにしたものを3つ束にして横に並べると、ちょうど「ネコポス」というヤマト運輸の小型サイズの箱で送ることができます。これだと送料は175円で済むのです。

このネコポスは、メルカリでものを売ったことがある人にとってはおなじみのものだと思います。いわゆる「らくらくメルカリ便」というやつで、A4サイズで厚さは3センチ以内、ポストにも投函できるため、簡単に安く送ることができるのです。

例えば、私がいつも購入するマスクは送料込みで51枚480円のものなのですが、ネコポスで届くため、送料を引けば業者はマスクを300円程度で販売していることになります。しかし、これを50枚入りの箱でそのまま売ってしまうと、送料だけで赤字になり、業者は全く儲かりません。逆に送料を加味してマスクの値段を上げれば、高くなって買う人は少なくなるでしょう。

あのNetflixも「送料」がきっかけで生まれた

ネットでものを売る側の視点で考えてみると、常にボトルネックになるのが送料です。

メルカリの普及により、ネットでものを売る人が増えたと思いますが、特にメルカリは「送料込み」が当たり前の文化なので、ものが売れても送料を差し引くと実はそれほど手元にお金が残らない場合も多いのです。だからこそ、「送料がかからないようにするための工夫」は非常に重要です。

私は沖縄で売られている「小亀」というおせんべいが好きなのですが、現地のスーパーであれば130円くらいのものが、都内の物産店などでは同じものが370円くらいするのです。輸送料を考えれば仕方がないと思いつつ、ネット販売でもっと安く買えないか調べてみたところ、20袋入りで3000円(送料込み)で販売しているものを見つけました。

喜んで買ったのですが、届いてみたら、なんと宅配便で送られてきたのです。20袋ですから大きな箱ですし、沖縄から都内ですので送料もかなりかかるでしょう。「沖縄の文化を伝えたい」という思いで儲けは度外視で頑張っているのかもしれませんが、これでは商売になりませんよね。

まさにマスクを17枚パックにして3つ並べてネコポスで送る方法は、今のネット通販における1つのコツの例を示したものでしょう。こうした工夫1つで、送料が大きく変わるのは本当に面白いなと思います。

ちなみに、あの有名なNetflixの創業の経緯にも、送料が関係しているのをご存知でしょうか。

今はNetflixというと動画配信ビジネスで知られていますが、創業当初はDVDのオンラインレンタルサービス会社でした。共同創業者の2人がビジネスアイデアを考えている時に、「今後はVHSがDVDに置き換わっていく」ことに着目し、「DVDなら郵便で安く送れるのではないか」とひらめいたのがきっかけだったそうです。

送料、恐るべし…ですよね。

容器の大きさに、商品を合わせる時代

コロナ禍で、ネット通販やデリバリーなどの商売を始めた人も多いかもしれません。

実際にやってみると分かるのですが、ビジネスとして成立させるためには、いかに「送料」を抑えるかが非常に重要なポイントとなります。

そのためには「容器の大きさに商品を合わせる」ことが、今の時代においてはとても大事なんだというわけですね。ちょっと面白いですよね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「送料が安く済むから」でした。今回のクイズは、通販業界の方やメルカリで頻繁にものを売る人なら、簡単に分かったかもしれませんね。

構成:志村 江

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PROFILE
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

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