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資金調達も承継も売却も。より高い自由度に! 会社設立のメリットを税理士が開設!

2020年9月16日

資金調達も承継も売却も。より高い自由度に! 会社設立のメリットを税理士が開設!

前回お届けした、意外と知られていない会社設立のメリット・デメリット。
https://entrenet.jp/magazine/24833/

今回は応用編ということで、私が税理士として関与したクライアントの事例や、士業の先生方から得た知見をもとに、法人設立を選ぶ意外と知られていないメリットをお伝えします。

事業経営では、さまざまなドラマがあります。
新しいビジネスのスタートから、従業員との出会いと別れ、金融機関からの資金調達、会社の譲渡、清算等々。

法人設立して会社として事業を行ってくか、個人事業主としてやり続けるべきか。

さまざまな事情があるため、一般論だけではこの命題を解くことはできません。

法人設立をするか悩んでいる方、そもそも法人と個人事業主の違いがわからない方、必見です!

法人を選ぶメリット(応用編)

①お金編

・株式売却で株価100倍も夢ではない?

法人化する1番の醍醐味はこのメリットがあることかもしれません。

よく株式会社が上場したり、M&Aによって創業者が巨額の富を得たりするというニュースを聞くかと思います。

例えば、会社設立時は株価が1株1万円の価値でした。
しかし会社の将来性に期待があり、会社に出資したいという人が現れ、その人に1株100万円で株式を売ることができたとしましょう。

仮に100株を持っていて、それを全部売却できれば(100万円-1万円)×100株=9,900万円の売却益がでます。

そしてその売却益にかかる税金は20%程度です。
税金の関係上、給与として9,900万円をもらった場合に比べても手元に残る金額が全然違います。

株価の算定方法はいろいろありますが、株式市場で上場している株式でない限り、基本的には当事者同士で自由に決める事ができるのです。

個人事業主でも事業譲渡といった方法により事業を売却することは可能ですが、やはり手続きが煩雑になってしまいます。

最近のビジネスは目まぐるしく2年から3年でトレンドが変わることもあり、ひとつの出口戦略として株式売却を検討してみては如何でしょうか。

実際に3年で設立時の株価の100倍以上という価額で株式売却した若手社長もいます。

・税制面ではやっぱり法人の方が有利なことが多い

基礎編では「税率」の差により法人の方が納税負担が有利になる可能性があるという話をしました。

このように税金の「税率」ばかり着目されがちですが、税金の「控除」にも着目してみましょう。

税金の計算はとても複雑で「税率」以外にも計算の要素があります。

「税率」以外の計算要素によって、人によってはある一定の所得(よく法人化の目安は所得が500万円からとか1,000万円といわれます)までいかなくても、法人化した方が実質的に税金の負担額が減ることがあります。

例えば、1年間の売り上げが1,000万円で利益が300万円位、という個人事業の方でも、法人化して配偶者に扶養の範囲内になる程度の給与を払うことにより、配偶者の給与を経費(≒損金)計上できます。
そうすると、世帯でみると法人化した方が実質的に税金の負担が減少するということになるのです。

これは税金の計算が「税率」だけでなく「所得から控除できる金額」「税額から控除できる金額」等々、複数の要素から成り立っているからです。

つまり、法人化により所得控除(例えば、奥さんに配偶者控除を取れる範囲で法人から給与を支給する等)を受けられるようにできれば、「税率」以外の部分でも節税の効果が見込めます。

もっと応用的な話をすると、事業に伴い発生する税金が「所得税」や「法人税」だけではありません。

「消費税」「住民税」「事業税」や「税金」の名はつきませんが、「国民健康保険料」についても加味して実質的な負担額について個人事業主の時と比較検討しましょう。

もう1つ、法人で有利な税金面で忘れてはならないのが「退職金」の支給です。

退職金にかかる税金は他の種類の所得に応じて、税額負担がかなり抑えられています。
これは老後の糧にするという趣旨です。

個人事業では自分に退職金を支給するということができず、基本的に余った利益が毎年の累進課税となり苦しむことになります。

それが法人化すると、将来退職金として勤労の功労分を支給し、低い税金で現金を受け取れるのです。

退職金というのはなにも60代、70代になって引退する方だけではありません。会社を設立して10年で、早い方は20代や30代のうちに次の経営者にバトンタッチし、退職金を受け取ることもあるのです。

つまり事業の出口を見据えて、毎月の報酬をあまり受け取らず、退職金とし受け取った方が税金の負担が減ることがあります。

・社会保険加入が必ずしも不利とは限らない

法人化した場合、社長が1人であっても役員報酬を支給する場合は基本的に社会保険に加入する必要があります。

そして、一般的に社会保険料は高く、不利に思われがちです。

しかし、社長の報酬は一定のルールに基づいて自由に決めることができます。

社会保険料は、報酬の金額によって変動します。

一例として、東京都の健康保険・厚生年金の保険料年金表を添付します。

毎月の報酬を少なくし、賞与や保険で報酬を受け取ることにより、実質的に社会保険料の負担を減らす方法も考えられます。

また社会保険には「扶養」という考え方があります。

例えば社長の奥さんの給料を年収130万円未満にすることで、本来旦那さんと奥さんのそれぞれが負担すべきところを、1人分の負担で済むことがあります。

その他にも社会保険に加入することにより、人材の募集がしやすいというメリットもあります。

社会保険料は、事業主と折半となるため、社会保険に加入している方がよいという方もいます。

②信用編

・銀行借入の連帯保証を外すことが可能

会社の借金=社長個人の借金と考える人が多くいると思います。

たしかに創業時は、会社が借金をする際、社長が連帯保証人になることを求められます。

しかし会社としての信用(借り入れの返済実績やしっかりとした財務基盤等)がついてくると、社長の連帯保証なしで借り入れができるようになります。

その場合、会社が仮に倒産して会社で返済できない借り入れが残っていても、社長の個人の財産に取り立てが及ぶことはありません。

もちろん、社長個人としてもきちんと返済する意志を持つことは大切かと思います。

しかし、会社の借金を親族に引き継がせたくないといった想いがあり、後継者に事業が引き継ぎできず廃業になることもあります。

また、連帯保証人になってくれる人がみつからないという理由で、社長が高齢になり廃業になってしまうケースもあります。

国としてもそのような事態にならないよう、経営者保証の解除を外すことができるよう対策を講じています。

中小起業庁:事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策

もう1つご紹介したいのは、日本政策金融公庫による「新創業融資制度」です。

以前、起業してすぐの調達なら、日本政策金融公庫一択とお伝えしました。

起業してすぐの資金調達なら「日本政策金融公庫」一択!【税理士が教えるお金と起業②】
https://entrenet.jp/magazine/17249/

その中で、魅力的な制度として「新創業融資制度」をお伝えしました。

これは新たに事業を始める方や事業を開始して間もない方に、無担保・無保証人で借り入れが利用できる制度です。

上記の図にある担保・保証人の欄にも「原則、無担保無保証の制度であり、代表者個人には責任が及ばないものとなっております。」と記載されています。

これはとても凄い制度だと思います。

本来、経営者の連帯保証を外すことは国が後押ししているとはいえ、まだまだハードルが高いからです。

・会社の信用をお金で買う・売る

基礎編で、単に会社ということだけでも個人事業主より対外的な信用を得やすいというお話をしました。

これに加えて、長年事業を継続することによって築き上げた信用を会社という箱に留保することができます。

取引先との長年の付き合い、金融機関からの融資の返済実績、事業を何十年も継続しているといったような信用です。

そしてこれは、株式の売買によって実質的に買うことも売ることもできるのです。

例えば旅館業を経営するにあたり、自分で一から旅館を創業するのと、有名な老舗旅館を譲ってもらい事業をスタートする場合を考えてみましょう。

一から創業してお客様や取引先を見つけるのに何年かかるでしょうか。また、旅館業の経験がもしあなたにないとすれば金融機関から融資を受けることは困難でしょう。

しかし、あなたが若手社長として経営をバトンタッチしたとしても先代の社長が築き上げた会社の信用が消えるわけではありません。

そしてその際、先代の社長は退任しても会社の株式を保有し続けることにより、株主として会社の経営に関与する事も可能です。

これは会社の株式を売る側にも、買う側にもメリットがあることだと思います。

③手間編

・事業を譲りやすい

事業を始めたばかりの方は、あまり会社や事業の売却といってもピンとこないかと思います。

最初に立ち上げた事業が軌道にのってきて、別に新規事業を立ち上げたのだけどそちらの方が業績がよく、最初の事業を第三者に譲りたいという相談は意外と多いです。

廃業(解散)という選択をする場合、個人事業より株式会社の方がやはり手続きは煩雑ですしコストがかかります。

そこで廃業(解散)せず、事業を誰かに売却するという選択肢もあります。

個人事業でも、会社ではじめた事業も両者とも売却することはできます。

近年国としても事業再編・事業統合等に力を入れており、「事業承継税制」や「経営資源引継ぎ補助金」の実施などを活用にすることによりその負担を減らすことができます。

中小企業庁:事業承継税制

中小企業庁:令和2年度第一次補正予算経営資源引継ぎ補助金

株式会社と個人事業主とでは、売却するうえでの手続き面や事業を譲り渡す仕組みでいくつもの差があります。

例えば、個人事業で事業を譲り渡す場合、従業員の雇用はそのまま継続できません。一から従業員と雇用契約等を巻きなおす必要があります。

会社の場合、基本的に従業員と会社との間で雇用契約等を締結しているので、株主や社長が変わったとしてもそのまま雇用が継続できます。

また、会社の売却の対価は退職金として受け取ることにより税金の負担を抑えることもできます。

このように株式会社として事業を売却する方が、柔軟に仕組みを設計でき、税制面や手間の面でもメリットが多いでしょう。

・決算期を選べるメリットは大きい

個人事業の方は2月頃になると確定申告に悩まされていると思います。

基本的に暦年の1月1日~12月31日で生じた所得について、翌年の3月15日までに所得税の確定申告が必要になります。

つまり個人事業の方は一律、決算日が12月31日ということになります。

法人になると年1回好きな日を決算日とすることが可能となります。
さらには期の途中でも決算期の変更をすることも可能です。

業務が忙しいときと確定申告の時期が重なっていた個人事業主の方にとっては、業務を平準化できることは大きなメリットになります。

・外部専門家(税理士・社会保険労務士等)に頼って逆にプラスに?

法人として事業を行っていると、税金の計算が複雑になり税理士に依頼したり、社会保険料の計算で社会保険労務士に顧問をお願いしてる方も多くいると思います。

手間が増えてしまい、コストもかかるので「ちょっと……」と思う方も少なくありません。

しかし税理士として私が関わったケースですと、今まで個人事業主としてご自身で何となく申告して納税していましたが、法人化を期に税金計算の見直しをした結果、余計に税金を納めていたというケースがよくあります。

前述のように法人化することで納税額のコントロールがしやすくなります。

会社に現預金を残すことができ、かつ節税もできる魔法のようなものはなかなかありませんが、実質的に税金を将来に繰り延べる方法は存在します。

その他にも社会保険労務士に依頼して助成金を申請するようになった結果、顧問料を上回る助成金の受給ができたという方もいます。

さらには会社に出資をしてくれた、事業経験豊富なエンジェル投資家から経営のアドバイスを受けたり、取引先を紹介してもらうなど、会社の成長スピードが早まったということもあります。

迷ったら先輩経営者や税理士を頼って決断を!

今回は法人を設立をするメリットをお伝えしました。

法人設立をするか悩んでいる方は、一般的に述べられるメリット、デメリットで判断するのは早計です。

例えば今回お伝えした株式売却によるメリット等、将来まで見据えて決断されると良いでしょう。

ただ実際は、将来自分(自社)がどのようになりたいか、例えば人をたくさん雇っていきたいのか、いずれは誰かに経営権を譲りたいのか等、現在から将来を想像をするのは難しいことだと思います。

そこで、周りの先輩経営者や数多くの会社や経営者をみている税理士に話を聞いてみて、どのようになりたいかイメージすることが大切かと思います。

そしてもうひとつ。法人を設立したときの税金面のメリット等、実際に法人設立をしたらいくらお得になるのか、会社や各個人におかれている状況によって異なります。

自社が法人を設立したときに、金額的なメリットがどのくらい生まれるか、具体的な金額を算定することは簡単ではないです。

そういった事情もあり法人設立の心理的ハードルがより高く感じることでしょう。

そんなお悩みをお持ちの方もぜひ税理士に頼ってみて下さい。

法人設立のシミュレーションをすることで、より具体的にイメージすることができることでしょう。

文=齋藤 雄史
編集=内藤 祐介

<プロフィール>
齋藤雄史さん
税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。

高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。

合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。

ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。

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