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2021年1月28日に成立した「第3次補正予算による経済支援策」を税理士が解説

2021年1月28日に成立した「第3次補正予算による経済支援策」を税理士が解説

令和3年に入り1都3県で緊急事態宣言が行われ、その後地域が拡大しています。

緊急事態宣言に伴い、急きょ時短営業や休業を余儀なくされ、国からの支援を頼りにしている事業者の方も多くいらっしゃることでしょう。

そこで今回は令和3年1月28日に成立した『第3次補正予算による経済支援策』についてポイントを絞って解説していきます。

補正予算としては過去最大で第2次補正予算は、追加の歳出は一般会計の総額で約31兆9千億円と、補正予算としては過去最大でした。

今回は令和3年度本予算案と第3次補正予算は「15カ月予算」として一体編成され、第3次補正予算については総額約19兆1千億円です。

自身(自社)でも受ける事ができる支援策をみつけて、コロナ危機を乗り越えていきましょう。

コロナ防止策や経済政策中心の19兆円! まずは全体像を知ろう

総額約19兆1千億円として成立した第3次補正予算。

今回の予算は大きく分けて、次の3つ柱に整理できます。

Ⅰ 新型コロナウイルス感染症の拡大防止策【4兆3千億円】
Ⅱ ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現【11兆6千億円】
Ⅲ 防災・減災、国⼟強靱化の推進など安全・安⼼の確保【3兆1千億円】


詳細を知りたい方はこちら
財務省 令和2年度補正予算(第3号)

注目の支援策(経済産業省管轄)

フリーランスや会社経営者等、事業を行っている方が最も気になるのは、経済支援策。

第2次補正予算では「家賃支援給付金」や「金融支援」が大きな支援となりました。

第3次補正予算では、経済産業省に約4.7兆円の予算がついています。その中で特に注目すべきポイントに絞ってみていきましょう。

経済産業省関係令和2年度第3次補正予算案のポイント 【合計約4.7兆円】

①資⾦繰り⽀援 【8,391億円(経産省計上)】

⺠間⾦融機関を通じた実質無利⼦無担保融資を2021年3⽉まで実施します。さらに、経営改善や業態転換等に係る新たな信⽤保証制度・⽇本公庫等の融資制度の創設・拡充を⾏うとしています。

ポイント解説:

①新型コロナウイルス感染症による売上高が減少した事業者に対する実質無利子・無担保や保証料免除制度が令和3年3月まで延長されます。まだ融資を申し込んでいない方や、2度目の申込も可能となります。

②日本政策金融公庫国民生活事業、民間金融機関等については、実質無利子等となる上限額を4000万円から6000万円、日本政策金融公庫中小企業事業等については、実質無利子等となる上限額を2億円から3億円に引き上げる要請により、資金繰り支援の拡充がされます。
新型コロナウイルス感染症の影響拡大を踏まえた資金繰り支援等について(要請)(METI)


ポイント解説:
①日本政策金融公庫による借入に対し、新事業やビジネスモデルの転換等、生産性向上に資する設備投資を実施する場合の摘要利率減免の制度です。

②日本政策金融公庫による借入に対し、企業再建資金や事業承継・集約・活性支援資金として活用できる金利減免の制度です。

③日本政策金融公庫による借入に対し、観光業産業等の生産性向上の拡充に向けた取り組みに対し低利融資の措置があります。事業計画の策定は税理士などの専門家に相談しましょう。

②中⼩企業等事業再構築促進事業 【1兆1,485億円】

ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、中⼩企業の新分野展開や業態転換等の事業再構築を⽀援します。

特に中堅企業に成⻑する中⼩企業については補助上限を1億円に引き上げて⽀援が重点化されます。

3月から公募開始予定となっております。


ポイント解説:
①持続化給付金の後継となる中小企業等への経済支援であり「事業再構築補助金」と呼ばれます。予算規模は1兆円を越える注目の補助金です。売上高の減少等の要件が持続化給付金より緩和されています。

②事業の転換や新分野の展開など、幅広く活用できることが想定されます。
対象の例として、建物費、建物改修費、設備費、システム購入費、外注費(加工、設計等)、研修費(教育訓練費等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)等が補助対象経費に含まれます。特に「建物費」が今回含まれることに注目されています(建物費が補助対象となる補助金は数少ない)。
補助率も最大2/3と高めですね。

③最新情報は中小企業庁のミラサポからご確認下さい。事業計画を策定することが求められますので、認定支援機関である、金融機関や税理士・中小診断士などの協力が必要となるでしょう。
中小企業庁 事業再構築補助金【随時更新】

④特別枠
緊急事態宣言が延長されたことにより、通常枠より補助率の引き上げや迅速な審査・採択が行われる「特別枠」が創設されました。


https://www.meti.go.jp/covid-19/kinkyu_shien/

③中⼩企業⽣産性⾰命推進事業(特別枠)【2,300億円】

感染防⽌と⽣産性向上を両⽴するビジネスモデルへの転換を⽀援するものです。
前回の第2次補正予算では特別枠が創設された「持続化補助金」「ものづくり補助金」「IT導入補助金」の予算規模の大きく幅広く事業者が活用しやすい補助金。

ポイント解説:
①「特別枠」を新たに「低感染リスク型ビジネス枠」が改編。
通常枠の3,600億円、前回第2時補正予算の特別枠900億円、今回の「「低感染リスク型ビジネス枠」による2,300億円とその予算の規模の大きさに注目です。

②「IT導入補助金」・「ものづくり補助金」の補助率が特別枠では「2/3」もしくは「3/4」でしたが、「低感染リスク型ビジネス枠」では「2/3」に統一されます。
「持続化給付金」は補助上限3/4の枠が継続します。

③さきほど紹介した「事業再構築補助金」と補助対象の経費が重複してしまう可能性もあり、事前にどの補助金でどの経費を申請するか、採択率等や交付までのスケジュールを含めて専門家と協議しましょう。

経営者の高齢化が進む中、事業承継は喫緊の課題として国も捉えているようです。

親族内・第三者承継を総合的に支援する体制を整備し、プッシュ型の支援に転換できるよう、士業専門家の活用費用の一部等補助が受けられる制度です。

コロナ危機により中小企業再生支援協議会に対する相談が急増、中小企業等の再生計画策定の要望に十分に応じられるよう体制を拡充されます。

※中小企業再生支援協議会とは、借入金返済等の課題を抱えた中小企業の経営再建に向けた取り組みを支援する、国が設置する公正中立な機関です。

中小企業再生支援協議会の詳細や再生支援の内容や経営改善、問い合わせ先は中小機構のページをご覧下さい。
再生支援事業・経営改善支援事業について|中小機構

注目の支援策(厚生労働省管轄)

厚生労働省の予算においてもそれぞれ下記の3本柱を最重点事項として掲げられています。
令和2年度厚生労働省第三次補正予算案の概要|厚生労働省

Ⅰ 新型コロナウイルス感染症の拡大防止策【2兆5,484億円 】
Ⅱ ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現【2兆1,310億円 】
Ⅲ 防災・減災、国⼟強靱化の推進など安全・安⼼の確保【535億円】

令和2年度 厚生労働省第三次補正予算(案)の概要

令和2年度 厚生労働省第三次補正予算(案)のポイント

厚生労働省の予算で注目は「雇用調整助成金」の継続

経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当等に要した費用を助成する制度ですが、こちらが令和3年2月末まで特例措置が実施されます。
※現在の政府の方針により更なる延長となる可能性もあります。

雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)

今後の動向も要チェック! 分からないことがあれば専門家に聞きましょう!

令和2年度第3次補正予算についてポイントを絞ってお伝えしました。

特に今回注目なのは、業態転換等に取り組む中小企業等を支援する「事業再構築補助金」です。

予算規模からも多くの事業者が活用できることでしょう。

ただし、今までの持続化給付金や家賃支援給付金等のような用途が自由な「給付金」ではなく、今回はある目的のためにお金を使う「補助金」として政府の経済支援策がシフトしていることも注目です。

給付金よりも補助金を採用することで、コロナを乗り越えるためにお金を有意義に使って欲しいという意図が感じられます。

専門家や金融機関のサポートを受けながらも、事業計画の策定を進めていきましょう。

なお、本記事を執筆している2月初旬現在では、支援策によってはまだ詳細な条件や申請方法等が明らかにされていません。

今回もまたすぐに支援を受けられるよう今からできる準備を進めていきましょう。

前回の復習になりますが大事なことは、

①支援策の全体像をつかみ、自身(自社)が対象となりそうなものを把握する。そのためには、各省庁ごとのホームページ等をチェックし網羅的に情報を収集する。
※参考記事:【2020年5月版】新型コロナウイルスに負けない! 税理士が教える、正しい情報収集術

②支援策を受けるために必要な書類を調べる。わからないことがあれば各支援策の窓口等に問い合わせてみたり、専門家に相談する。

③申請のためのスケジュールを立てる。※申請期限に注意

本コラムでも引き続き、その時その時で最新情報を発信していきます。情報収集につとめ正しい情報をつかんで危機を乗り越えていきましょう。

文=齋藤 雄史
編集=内藤 祐介

<プロフィール>
齋藤雄史さん
税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。

高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。

合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。

ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。

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