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相続対策に資産管理会社を立ち上げるメリットとは?

相続対策に資産管理会社を立ち上げるメリットとは?

不動産をもっている方にとって相続税について考えることは非常に重要です。

例えば、全体の財産に対して不動産の割合が高い場合には、相続人は相続税の納税資金で苦労することになります。

相続税を少なくするためだけでなく、スムーズに相続を行うための対策も考えておかなくてはなりません。

様々な対策がある中で最近聞く機会が増えてきたのが、今回取り上げる資産管理会社です。

ただ、資産管理会社の運用ではちょっとした見当違いにより、メリットだったものが大きなデメリットになってしまうことも多くあります。

設立前の計画が非常に大切であり、経済状況や税制などを確認しながら運営していくことも大切です。

資産管理会社を立ち上げる際は、必ず弁護士や税理士などの専門家へ相談して、設立から運営、相続まで総合的に検討していかなければなりません。

今回は、この資産管理会社について説明します。

資産管理会社は仕組みが複雑で計画にも長い時間を要するため、ここではあまり具体的な数字は使わずに進めます。

実際に設立する場合には、その時々の法律や経済状況にあわせて検討してください。

資産管理会社とは?

資産管理会社とは、個人で財産を所有・取得せずに、資産を会社で所有し運用をする目的として設立された会社のことを指します。

資産管理会社の仕組みを簡単に説明すると、不動産や有価証券などをオーナーから分離して設立した会社の所有とし、会社はその資産を運用します。

会社は資産を運用して利益を上げ、オーナー家族は給与の支給を受け、会社運営にかかる経費も損金として計上していくことになります。

今回は不動産の資産管理会社を中心に説明します。

資産管理会社を設立するメリット・デメリット

では、資産管理会社を設立するメリットやデメリットを説明しましょう。

メリット①相続税対策

資産管理会社を設立する理由の1つは、相続税対策です。

財産を個人で所有した状態で相続が発生すると、各財産をそれぞれ評価し、その評価額を合算して相続税の計算をします。

資産管理会社がオーナーの財産を取得した状態で相続が発生した場合、相続財産は資産管理会社の株式ということになり、この会社の1株の評価額を計算するのです。

オーナーが所有していた株式数が相続財産になるため、[評価額×株式数]が相続財産です。

株式の評価方法は会社の規模や土地などの割合によって評価方法が異なりますが、小規模な会社の場合には“純資産価格方式”という財産評価基本通達などによって再評価した資産と負債の差額を株数で割った金額を一株の価額として計算する方法です。

単に資産管理会社を設立運営していると会社の株式評価額が大きくなるケースが多く、あまり有利とはいえません。

一方で、相続税対策を計画的行っていった会社の場合には、株式の評価を下げることも可能になります。

資産と負債の差額はいわゆる“純資産”部分になり、毎年会社が利益を出していくと純資産は大きく、損失を出していくと小さくなっていきます。

つまり、大きな損失を積み重ねた会社の場合には、株価がゼロになる場合もあり得るということです。

そもそも大きな損失を積み重ねるということは、一般的には会社の運営の失敗です。

この状態がうまく作れるかは、オーナーや相続人の経済的状況によります。

ゼロとは言わずとも、その方向へもっていくことは可能で、ほかの要因も踏まえ計画的に進めていくことでより節税としての効果が大きくなるのです。

さらに、一株の評価を下げる方向で運営していくことで、相続前に株式を相続人などへ贈与や譲渡をして名義を変えていくことも可能です。

その結果、オーナーの所有株式数が少なくなれば相続財産も少なくなり、相続税対策になるのです。

この点に絡んだ資産管理会社の設立のメリットとして、株の名義変更が簡単ということもあげられます。

不動産の場合は名義を変えるために登記の変更が必要になり、そのたびに費用もかかります。

その点、株式の場合には、登記の変更がないので変更費用がかかりません。

会社を相続する予定の相続人とその相続人の子ども(オーナーの孫など)への名義変更も簡単です。

このメリットは最大限に生かすべきでしょう。

ただし孫の代以降は株主同士の関係が薄くなりがちなため、株式の幅広い所有や兄弟への均等分配はトラブルの種になりかねません。

オーナーはこの知識を必ずもっていないと後の世代が苦労することになります。

メリット②毎年の利益(所得)に対する税金

この仕組みのメリットのもう1つは、毎年の所得の分散です。

所得税は累進課税といって、所得が増えるとともに税率も上がっていく仕組みになっています。

したがって、オーナーへ所得が集中するより、家族へ所得が分散された方がトータルの所得税は少なくなります。

資産管理会社は、この分散を可能にします。資産管理会社で家族が働いて給料を取ることができます。

この点に関しては、以下2点の注意が必要です。

1つ目は、勤務実態にあわせて給与の額を決めないと、税務上否認されることがある点です。

税務当局には同族会社の行為計算否認規定という税務上の切り札があり、勤務実態と給与の額を類似同業者の給与と比較して、あまりに高額な場合には損金を否認されることがあります。

2つ目は、家族が受け取った給与を浪費してしまった場合です。

お金は家族外へ出ていってしまうため、せっかくの相続税対策も水の泡です。

これを防ぐために、給与を払わずに会社で利益を出して、法人税を払うことも税金対策の1つです。

オーナーの所得税の税率が高い場合、会社で法人税を納税した方が税金は少なくなるケースがあります。

ただし、これにもデメリットがあり、上記の通り相続時に会社に利益が利益を上げていると一株当たりの評価額は大きくなり、相続税は高くなってしまいます。

また、ここまでの話とは少し違いますが、所得税と法人税では経費の範囲が異なります。

所得税は、収入を上げるための支出のみが経費になります。

例えば、次の事業の不動産を購入するための活動費用は基本的には経費になりません。

一方で会社の場合にはこの点が異なり、個人の恣意性が入ってはいけませんが、会社の活動自体にかかる支出は基本的に損金(経費)になります。

この経費の範囲の広さも会社設立のメリットの1つとなります。

デメリット①不可抗力によってメリットがデメリットになることがある

メリットでも説明しましたが、資産管理会社は知識と計画をもって進めないとメリットがデメリットになり得るのです。

また、税制改正にも大きく影響を受けてしまいます。

相続税法の改正で、被相続人所有の不動産に対する優遇税制が始まることになったら、会社設立をしないほうがよかったことになるかもしれません。

経済状況も関係します。会社設立時より不動産の時価が下がった場合場合には、設立時の不動産移転のための税金を高く払っていたことになりかねません。

デメリット②均等割がある

会社は損失の年も均等割という法人住民税がかかります。

自治体によって若干の違いはありますが、最低年間7万円です。

損失が出てお金がない場合には借り入れをしなければ払えません。

会社をやっていく場合には、必ず均等割を試算に入れておくことが必要です。

デメリット③設立費用がかかる

会社設立には設立費用が掛かります。登録免許税や司法書士の報酬などです。

デメリット④経理事務が難しい

会社の経理は、複式簿記で会計処理をして決算時にはこれを取りまとめ、決算書を作成し、法人税の申告書の作成と提出をしなければなりません。

PCなどの発達により「簿記の知識がなくても経理はできる」と言われてきていますが、個人の確定申告とはずいぶん異なり、決算書の作成は簿記の知識がないと会社経理はできないでしょう。

しかし、この複式簿記を使ってきっちり経理をやることもメリットの1つです。

経理をきっちりやれば運営状況がはっきりとわかり、対策の経過もよくわかります。

デメリット⑤資産移転時の税金が大きい

個人から会社へ財産の移転をする際、オーナー側に大きな税金(主に譲渡所得税)がかかる可能性が高いですが、この税金に対する対策は多くありません。

大きな税額が発生するとわかっている場合には、会社設立計画に含めて試算をすることで、この税金を払っても相続税や所得税の対策になるか判断することができるでしょう。

デメリット⑥会社は廃業(解散)が意外と難しい

会社の設立は簡単ですが、会社清算はかなりの手間になります。

特に資産管理会社は不動産名義を移転してしまうため、解散する際にオーナーへ名義を戻す際にも税金や登記費用が発生し、ほかの解散をするための費用もそれなりにかかってしまいます。

会社の負債がオーナー以外にある場合には債務免除を受ける方法がありますが、受けられない場合にはさらに清算のための費用と手間や時間を要します。

デメリット⑦相続税の特例を受けられなくなるケースもある

会社にすべての土地などを移転してしまうと、相続税の特例の「小規模宅地等の特例による評価減」が使えなくなってしまいます。

せめて自宅は個人所有のままにしておいたほうがいいかもしれません。

この点も設立計画時点でしっかり試算することが必要です。

資産管理会社の立ち上げ方

資産管理会社は、オーナーの不動産名義を会社へ移さなければ意味がありません。

その方法は主に下記の2つに分けられます。

どちらの方法をとったとしても、オーナーの行為は所得税法上の譲渡所得税の扱いになり、利益が出る場合には譲渡所得税がかかります。

会社設立時の現物出資

オーナー所有の財産を会社設立時の出資金にすることができます。

現物出資をする金額が500万円以内など会社法に規定を超えない場合には、特別な手間や費用が掛かりません。

しかし、不動産を現物出資する場合、この範囲で終わらないケースがほとんどだと思います。

その場合には裁判所指定の検査役による調査が必要となり、時間や費用がかかるので注意しましょう。

また、現物出資をした結果、資本金が1,000万円を超える場合には、上記した均等割の税額が増えたり、1期目から消費税の課税事業者となってしまうため、経理の手間はかなり増えます。

設立後に会社へ売却する場合

会社設立は現金の出資で行い、設立後に会社へ不動産を譲渡することもできます。

この場合は時価から大きく離れた額で譲渡をしない限り、通常の譲渡所得税以外が税務上問題になることはありません。

「会社設立時の現物出資」にくらべてデメリットは少ないため、この方法を採るケースが多いでしょう。

まとめ

不動産管理会社の設立・運用には、メリットとデメリットが絡み合い、設立後の税制や経済状況によっては失敗する可能性もあります。

設立前の専門家の試算は必須で、それによって判断することになりますが、オーナーも知識を持ち、任せきりにしないことが重要です。

資産管理会社を成功させるには、試算に柔軟性を持ち、あまり細かくなりすぎないことも大切でしょう。

PROFILE

税理士 須栗 一浩

税理士法人エムエスオフィス 代表税理士
平成7年税理士登録・開業。平成27年より税理士法人へ合流。現在に至る。会社税務から個人の確定申告、相続税に至るまで活動範囲は広い。固くない、いつでも話せる税理士としてクライアントからの信頼は厚い。

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