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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第63回・進むキャッシュレス決済

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第63回・進むキャッシュレス決済

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

10月1日から消費税が10%に上がりました。今回の増税で話題になったことの1つに「消費税の軽減税率」というのがあり、これは元々は中小企業の救済策にも関係していました。とはいえ、昨年までの話では中小企業でキャッシュレスの導入はなかなか進まないだろうと言われていましたが、蓋を開けてみたら増税と同時に多くの中小企業でキャッシュレスが導入されていたわけです。さて、一体なぜこのようなことになったのでしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

消費税が10%に上がりました。今回は8%に上がった時の教訓があったからか、直前の駆け込み需要もそれほど目立った話題にはなりませんでしたよね。

そのかわりといってはなんですが、わかりにくい軽減税率とポイント還元にフォーカスが当たることが多かったように思います。

「キャッシュレス決済をすればポイント還元」というこの施策がどうもわかりにくいのは、3つの施策がごっちゃになっているからだと思われます。

1つは増税による消費の冷え込み対策。
2つ目が中小企業振興策。
そして、
3つ目がキャッシュレス決済の普及です。

キャッシュレスの普及については、まだまだお金もかかるしなかなか進まないだろうというのが世の中の考えでした。しかし、10月1日になってみると、あちこちのお店でキャッシュレス決済が使えるようになっています。

それでは解説します!

なぜこのような逆転劇が起こったのでしょうか。

一番大きいのは、キャッシュレス決済の処理システムの導入が安くなったからです。

キャッシュレス決済については、使う側の利便性で語られることがどうしても多くなり、やれ、どのアプリだ、その使い方は、という話になりがちです。一方、決済する企業側に目を向けると、これまで数百万円、場合によっては数千万円かかっていたシステムの導入が、今だと数万円でできるようになりました。

消費税が5%から8%に上がった際、「レジ倒産」というのが流行語になったのを覚えている人もいるかもしれません。8%に対応するようレジの設定を変えなくてはならず、それをするには数千万円の投資が必要で、ギリギリのところで経営を行っていた中小企業の中には、廃業を余儀なくされたところもあったのです。

その経験があったことからか、キャッシュレス決済の普及についても不安視され続けてきましたが、どうやら今回に限っては全くそんなことはなかったようです。

数千万円かかっていたものが、数万円で済む時代になった

なぜこれまで高額だったレジのキャッシュレス対応が数万円で済むのでしょうか? それはスマホやタブレット端末をレジで使うことができるようになったからです。実際、私がよく使うスーパーでも「○○ペイで支払います」というと、レジの従業員がタブレット端末を取り出してバーコードを読み込んでくれます。

賢いなと思うポイントが2つあります。レジ全体を作り直すのではなくキャッシュレス決済だけ別の仕組みで導入していること。そして、以前の電子マネーのように専用端末を買わせるのではなく、どこでも売っているタブレット端末でバーコードを読み取っていることです。だから投資がかからないわけです。

このように、莫大な投資が必要だと思われていたものが、気がついたら数万円で使えるようになっていたということは、実は他にもよくあります。

インターネット通販をやっている企業ならわかると思いますが、「Amazonマーケットプレイス」での出店は簡単にできますよね。そのメニューの中に、荷物のハンドリングをAmazonに委託できるサービスがあります。

それを活用すれば、確かにコストはかかります。しかし、Amazonが扱う商品と同じスピードで配送してくれるため、そのおかげで売り上げが上がったりするわけです。

中小企業がAmazonと同じ物流インフラを整えることは無理ですが、実は少しの投資で同じインフラが活用できるというのは、考え方としては同じことだと思います。

実績のあるプロの技術を安価で利用できるクラウドサービス「クラウドワークス」も同じでしょう。お店のロゴを新しくしたい、などと思った時に、これまでだとコスト面を心配してなかなか人には頼めずにいたはずです。しかし、「クラウドワークス」を活用すればクリエイターへの外注費が数万円と安く済むわけです。

自分のやり方は「時代遅れ」になっていないか!?

自身で事業を始めて何年か頑張っていると、創業時と比べて横の連携が少なくなり、自分のやり方が正しいのか、時代遅れになっていないかを確認することがなかなかできなくなることがあります。

今の時代に商売をする上では、「新しい仕組みを安く導入する」ことは間違いなく必要になるでしょう。いろんな人の話を聞くなどして、最近便利なツールがないかどうか、情報収集しておきたいですよね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「キャッシュレスレジの導入が数万円でできるようになったから」でした。ちなみに、今回の増税を機に、消費者が負担する税率は、買うものや支払い方法などによって3、5、6、8、10%の5種類に増えたそうです。もう頭がこんがらがりそうです(笑)


PROFILE
プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(PHPビジネス新書)、『令和を君はどう生きるか』(悟空出版)。

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