会社買収とは、“株式譲渡”や“事業譲渡”といった手法を用いて他社の支配権(経営権)を取得する行為のことです。
複数の会社を一つに統合する吸収合併・新設合併という手法もあり、合併(Merger)と買収(Acquisition)をあわせてM&Aと呼びます。
日本では、買収先の経営陣の同意を得た友好的買収が多いですが、同意を得ずにおこなう敵対的買収というケースもあります。
良い会社買収は、買収する会社と買収される会社にさまざまなメリットと相乗効果をもたらします。
今回は、どんなメリットやデメリットがあるのかを紹介します。
買収する側から見たメリット
1.事業拡大
すでに完成している会社を買収することで、その会社が所有している人材、技術やノウハウ、資産、情報などの経営資源を取り込み、スピーディな事業規模拡大をはかることができます。
2.新規事業への参入・事業の多角化
新規事業分野で実績のある会社を買収することにより、マーケティング、技術開発、人材雇用といったコストを抑えると共に、事業の多角化が実現できます。
事業の多角化をすることで特定分野での業績変動リスクを抑えられるメリットもあります。
以上のように会社買収は、事業規模の拡大や新規事業立ち上げから収益をあげるまでの時間を大幅に短縮できるということが最大のメリットと言えるでしょう。
買収される側から見たメリット
1.後継者問題の解決
会社買収に応じる会社が抱えている問題で多いのが、後継者問題です。
優良企業による会社買収に応じることにより、後継者がいなかった会社を存続させることができ、取引先に迷惑をかけることもなく、また従業員の雇用を守ることもできます。
2.事業拡大のチャンス
自社よりはるかに大きい会社からの買収に応じることは、自社をより大きく成長させる可能性があります。
全国に支店、従業員の雇用がある会社に買収される場合、そのインフラ設備を利用して事業を拡大させるチャンスにもなります。
3.廃業コスト・引退後の生活資金を確保できる
会社を廃業する場合、解散登記、清算業務、官報公告などの廃業コストが発生しますが、買収に応じることで会社は継続しますので廃業コストが発生しなくなります。
また、経営者は会社を売却することにより、リタイア後の生活費などを確保できるようになります。
ここまで会社買収におけるメリットを紹介してきましたが、デメリット・リスクも存在しますので紹介していきます。
会社買収のデメリット・リスク
1.企業の文化や社風の融合に時間がかかる
企業における最大の資産は人材です。会社買収では、それまでの企業文化になじんだ従業員の扱いが課題となります。
今までのやり方を続けるだけでは企業価値を向上させることはできない場合も出てきます。
一気に融合をはかろうとすると反発される可能性がありますので、タイミングを見ながら上手に融合をはかる必要があります。
2.人材の流出
従業員が雇用条件や労働環境の変更を受け入れられず、優秀な従業員が転職してしまうリスクがあります。
3.帳簿に記載のない債務
買収先の会社が、解決していない紛争案件を抱えている場合、買収後の訴訟の結果によっては、膨大な賠償金が発生します。
第三者の保証人になっている場合には、買収後に保証債務が発生するというようなリスクがあります。
4.モチベーションの低下
従業員のモチベーション維持と向上は、経営統合後の組織を活性化するためにはとても大事な要素です。
出身会社同士の派閥争いや会社が従業員への不平不満を口に出すようなことがあると従業員のモチベーションの低下を招きます。
会社買収をする場合には、前述のデメリット、リスクの対応策を事前に検討しておく必要があります。
会社買収と合併の違い
合併と会社買収は、他社と他社が経営を統合するということにおいては同じですが、合併は2社以上の会社が統合し、どちらか一方の会社が消滅(吸収合併)もしくは2社共に消滅した上で新しい会社を存続させる(新設合併)手法です。
一方で会社買収とは、 2つの会社を存続させながら統合するという大きな違いがあります。
会社買収の手法としては“事業譲渡”、“株式譲渡”、“第三者割当増資”、“株式交換”といった手法を用います。
買収案件によって、どのスキームを選択するのか専門家との打ち合わせがとても重要となります。
まとめ
会社買収を成功させるためには、経営統合後に自社の強みと、買収した会社の強みを利用して、相乗効果を最大限に引き出せるかどうかがポイントとなります。
買収後のスケールメリットなど、数字や市場の評価に目を向けることも大事です。
そのためには、事前に買収対象の会社の経営実態、財務状況や法令順守の意識などの調査をおこなう必要があります。
自社の成長のためだけでなく、日本の中小企業が抱えている事業承継問題の解決のためにも、会社買収・合併といったM&Aはとても有効な手段と言えるでしょう。
司法書士・ファイナンシャルプランナー 元木 進一
平成19年ファイナンシャルプランナー(AFP)登録
平成23年元木司法書士事務所開業
司法書士とファイナンシャルプランナーとしての知識と経験を生かして主に相続手続、相続対策、遺言書作成、成年後見業務サポート相談業務をメインに業務を行っています。