様々な場面で耳にすることのある、「所得・年収・手取り・収入の」の4つの違いを全て説明できる人は少ないのではないでしょうか?
ここでは、「所得・年収・手取り・収入の」の4つの違いを具体的に説明していきたいと思います。
収入とは
まず収入ですが、収入というと「月収」とか「年収」が頭に思い浮かぶのではないでしょうか?
収入だけでは、「月収」と「年収」のどちらを指すのかわからないのも事実です。
サラリーマンの月収は、毎月会社から支給される給与で、額面とも呼ばれます。
交通費や各種手当が含まれ、基本的に毎月一定額が支給されます。
一方、自営業者の収入は、毎月の売上で変動します。
売上が多ければ月収も増えますし、逆に売上が無ければ月収は低くなります。
手取りとは
手取りとは、会社から支払われた支給額のうち、実際に受け取るお金です。
例えば給与の額面が月20万円だとしても、そこから社会保険料などが引かれるため、実際に受け取る金額は額面に比べて少ないです。
具体的には、社会保険料(厚生年金保険、健康保険、雇用保険)と税金(源泉所得税、住民税)が引かれます。
給与明細の「総支給額」「振込支給額」にあたる項目、つまり実際に振り込まれた金額が「手取り」にあたります。
会社によっては、別途組合費や昼食代が引かれるかもしれませんが、それは除いて考えましょう。
サラリーマンの手取り=給与-社会保険料-税金
一方、自営業者等は、売り上げを上げるために商品を仕入れたり、様々な経費がかかります。
売り上げから仕入れ代金や経費、さらには社会保険料(国民年金、健康保険)と税金を引いたものが手取りとなります。
自営業者の手取り=売り上げ-仕入れ代金-経費-社会保険料-税金
給与から控除される項目
社会保険料や税金などの、給与から引かれる項目を「控除項目」と呼びます。ここでは、「控除項目」のうち「法定控除」と呼ばれる、給与を受け取っている人であれば必ず控除される項目を説明します。
【法定控除の項目】
・厚生年金保険
・健康保険
・雇用保険
・源泉所得税
・住民税
厚生年金保険
厚生年金保険は公的年金制度のことで、加入の対象者は70歳未満かつ、厚生年金保険が適用される事業所に勤務する会社員や公務員などです。
保険料は月収によって変動し、事業者と従業員で折半して支払います。
健康保険
日本の医療保険制度は、相互扶助の精神に基づき、病気やけがに備えてあらかじめお金(保険料)を出し合い、実際に医療を受けたときに、医療費の支払いに充てる仕組みとなっています。
(参考:健康保険組合連合会 けんぽれん https://www.kenporen.com/health-insurance/m_knowledge/)
その財源の一つが健康保険料で、サラリーマンは健康保険組合や協会けんぽと呼ばれる被用者保険、自営業者は国民健康保険に加入します。
サラリーマンの場合、どの被用者保険に加入しているかは、所属している企業によって異なります。
会社員の健康保険料の負担額は、月収によって変動し、厚生年金保険と同じく事業者(企業)と従業員で折半して支払います。
雇用保険
雇用保険制度は、労働者が失業した場合などに必要な給付を行うなど、雇用に関する総合的な機能をもった制度で、これに加入することで失業手当などを受け取ることができます。(参考:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147331.html)
その財源の一つが雇用保険料で、保険料は所属する企業の種別と、賞与や手当などを含めた収入によって決まります。
雇用保険料は企業と従業員で負担をし、企業の方が負担の割合が高いです。
源泉所得税
源泉所得税は、企業が従業員に変わって支払う、所得にかけられる税金のことです。本来所得税は従業員本人が税務署に支払うものですが、毎月の支払いは大変なため、企業が従業員から一定の額を徴収し、税務署にまとめて支払っています。
このとき企業が従業員から徴収する所得税は大まかに計算されているため、実際に納めるべき所得税よりも支払いすぎている場合があります。この差額を調整するのが、年末に行われる年末調整です。
住民税
住民税は、自治体の行政サービスに必要な経費を、住民にその能力(担税力)に応じて広く分担してもらう仕組みです。(参考:東京都主税局 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/kojin_ju.html#gaiyo_01)
住民税の金額は、住んでいる地域と収入によって変動します。住民税は前年の所得に対して課せられ、当年の6月から新しい住民税が適用されます。そのため、社会人2年目の6月以降より給与から天引きが始まります。
年収とは
年収とは、読んで字のごとく1年間の収入です。
サラリーマンの場合は、年末に会社からもらう源泉徴収票の「支払金額」にあたります。
その際、給与だけでなくボーナスも含まれます。自営業者等の場合は、1年間の売上です。
所得とは
サラリーマンの場合、年収から給与所得控除を引いた金額となります。
給与所得控除とは、自営業者等の経費のようなもので収入に応じて一定の金額を引くことができます。
この給与所得控除は、経費のように実際に使った金額ではないので、うれしいものです。
サラリーマンの所得=年収-給与所得控除
自営業者の場合は、収入から経費を引いたものが所得となります。
経費は、実際に仕事をするうえでかかった費用(コスト)のことを指し、事務所代・光熱費・備品・人件費・交通費等仕事によって金額が異なります。
したがって、年収は多いのに経費が多額になると赤字ということもありえ、反対に年収は少なくても、ほとんど経費が掛からなければ所得は多くなります。
自営業者の所得=年収-経費
収入・手取り・年収・所得の具体的な違い
上記4つの具体的な違いとは何かといえば、ズバリ金額です。
例えば、「あなたの給与は?」と聞かれた場合と「あなたの手取りは?」と聞かれた場合では金額が異なります。
給与は会社が支払った総支払額ですが、実際に受け取る手取りは、様々なものが引かれて少なくなります。
また、「あなたの年収は?」と聞かれた場合と「あなたの所得は?」と聞かれた場合も異なります。
実は年収と所得は、混同されやすく同じ数字だと思い込んでいる人も多いのではないでしょうか?
実際は、数字的にはかなり違い、特に自営業者等の場合はそれが顕著に出ます。
「年収は500万円です」と言った人が、「所得も500万円です」とはならないのです。
年収500万円のサラリーマンでは、決められた給与所得控除を引いて「所得は346万円」とすぐにわかります。
年収500万円の自営業者等では、経費によって例えば「所得0円」または「所得450万円」と異なってきます。
この経費は給与所得控除のように一律に決められているわけではないので、人によって異なります。
年収と手取り額は異なる
収入・手取り・年収・所得とそれぞれの数字が異なります。
まずは、この4つの意味を認識して、特に年収と所得の違いを覚えておきましょう。
そうするとその人の「稼ぎ」を判断する場合、年収ではなく所得で判断すべきことがわかり、どの数字を見ればいいのかが理解できます。
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社会保険労務士 菅田 芳恵
49歳から2年間で社会保険労務士やファイナンシャルプランナーの資格など7つの資格を取得。
現在は13の資格を活かして、コンサルティングや研修、セミナーの講師、カウンセリング等幅広く行っている。
最近では企業のハラスメントやメンタルヘルスの研修、ワークライフバランスの推進、女性の活躍送信事業等で活躍している。
[保有資格等]
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)、産業カウンセラー、2級福祉住環境コーディネーター、キャリアデベロップメントアドバイザー(CDA)、ハラスメント防止コンサルタント、DCプランナー、知的財産管理技能士、見まもり福祉相談員、三重県金融広報委員会金融広報アドバイザー、あいち産業振興機構相談員、岐阜県産業振興機構相談員、名古屋市中小企業振興センター相談員、名古屋市新事業支援センター相談員