会社員の多くが、「今後のキャリアをどうやって築き上げていくべきか」について悩んだことがあるのではないでしょうか。
キャリアを考えるうえでは、勤めている会社で出世を目指すのか、スペシャリストになるのか、はたまた転職するのかなど、さまざまな選択肢があるでしょう。
企業のなかでキャリアアップしたり、転職をして新しい環境へ飛び込む方法以外にも、脱サラしてフリーランスとして独立したり、起業をする方法を選ぶ方もいます。
では脱サラ起業には、どのような魅力があるのでしょうか。本記事では、その魅力と脱サラ起業に向いている方の特徴をまとめてお伝えしていきます。
脱サラ起業の魅力
会社に属していなくても自力で稼げる手段が増えたり、時間と場所を選ばずに働けたりと、働き方の多様化が進み、もはや会社員だけが働く道ではなくなりました。
自分でやりたいことがある人や、組織で働くことに喜びを感じなくなってきている人にとっては“脱サラ”という言葉は魅力的に聞こえるのではないでしょうか。
やりたいことがある人は「いつかは脱サラして起業したい」と考えている方もいるでしょう。まずは、脱サラ起業にはどのような魅力があるのか紹介します。
1.自分のやりたいことにチャレンジできる
脱サラすることで、自分のやりたいことにチャレンジできるというメリットがあります。
会社や組織に属して働いていると、必ずしも自分のやりたい仕事に就けるわけではありませんし、1つの業務だけに専念できるわけではありません。それぞれの部署で社員が役割を割り振られて仕事をしていると、ときに自分が望まない業務やモチベーションが下がる業務をしなければならないこともあります。
このように「会社にいるうちは“自分のやりたいことに挑戦するチャンス”は巡ってこない」と感じている方にとって、脱サラ起業は大きなチャンスになることでしょう。
脱サラ起業と一口にいっても、業界や職種は自分次第で大きく広がり、できることは限りなくあります。何か実現したいことがある方は、脱サラ起業を視野に入れてみてはいかがでしょうか。
2.働く時間や場所に縛られない
会社員の場合、働く時間や場所は基本的に決められていることがほとんどです。働く時間や場所を柔軟に選べる企業が増えてきているとはいえ、リモートワークが可能な業態の限度は決まっていることでしょう。
脱サラ起業をすると、行う業種次第ですが“時間や場所に縛られず働くこと”が可能になります。「仕事をする時間や場所は自分で選びたい」と考えている方にとっては、かなり魅力的なポイントでしょう。
育児や介護、趣味などのプライベートと両立しながら働くことができるメリットがあります。
3.自由が手に入る
場所や時間に縛られず、望まない人間関係からも解放される脱サラ起業の魅力は、とにかく“自由”であることです。
責任は、すべて自分で負わなくてはいけませんが、会社のルールや上司にあれこれ制限されることを窮屈に感じている方にとっては、脱サラ起業の自由さは大きな魅力といえるでしょう。「誰かに管理されないで、自分で行動を決める方がよい成果が出せる」タイプの人もいるのです。
4.収入の上限がなくなる
脱サラ起業の大きな魅力の1つが“収入の上限がなくなること”です。つまり、稼げる金額の幅が広がるということです。
もちろん会社員のように安定した収入は得られない可能性はありますが、上限がなくなる分、会社員時代の何倍もの金額を得られる可能性があります。“自分の可能性にチャレンジしたい方”にとって、脱サラ起業はぴったりだといえます。
脱サラ起業で失敗しないための“事前準備”
魅力ある脱サラ起業ですが、実現するためには、いくつものハードルがあるのも事実です。脱サラ起業をする前に、失敗しないためのポイントを把握し、準備しておきましょう。
脱サラ起業を成功させられるか失敗してしまうか、大きく左右するのは“事前準備”です。準備をどれだけしっかり行えるかどうかで、成功する確率が大きく変わってきます。
では、どのような準備を行うのがベストなのでしょうか。
1.情報を集める
脱サラする前にまず重要なことは、とにかく情報を集めることです。
脱サラ起業の基本はもちろんのこと、「どのような業種で起業できるのか」その特徴を詳しく知ることで、「自分がどのような分野で起業したいのか」「どの業種であれば起業できそうか」が見えてくることでしょう。
方向性が決まれば、さらにその分野の情報収集をしていきましょう。その業種全体の動向を大きく把握することはもちろん、実際の成功例や失敗例を知識として蓄えておくことで、実際に自分がチャレンジしたときの判断軸を増やせます。
2.スキルを身につける
スキルを身につけることも、脱サラ起業の事前準備において大切なポイントです。
持っているスキルを活かして脱サラ起業をする場合は、他の人に負けないアピールポイントや実績を作っておきましょう。スキルを売って仕事をする場合、他社と差別化するポイントがあると仕事につながりやすくなります。
スキルをメインに起業しない場合も、起業するうえで必要になる知識や役立つスキルを身につけておいた方がベターといえます。特に会計や財務についての知識は、副業をする場合やフリーランスとして活動する際にも、他社との差別化につながり、役立ちます。また、案件を獲得する営業スキルも磨いておくと、今事業展開していくときに助けとなるでしょう。
社内外でそれぞれの分野に長けた人を見つけ、どうやってスキルを身につけていったのか、学び方についてもヒアリングするとイメージしやすいかもしれません。
「準備期間でどれだけコツコツ努力できるか」によって、脱サラ起業したあとの成功率が変わってくるでしょう。
3.具体的な事業計画を立てる
脱サラに向けてある程度の方向性が決まったら、具体的な事業計画を立てることも忘れないようにしましょう。事業計画には下記の項目が例としてあげられます。
・事業の目的
・事業内容やビジネスモデル
・自社サービスの強み
・市場や競合の状況
・売り上げや利益の見込み
・資金調達方法 など
脱サラ後の事業について方向性が曖昧にしか決まっていなかったら、迷子になるのは当たり前です。行き詰まってしまわないよう、具体的な事業計画を練ることを大切にしましょう。
「この事業計画には、どのような目的があるのか」、「資金繰りは問題ないのか」など細かくシミュレーションをすることがポイントです。起業して短期間で失敗してしまわないよう、集めた情報を元に無理のない事業計画を立て、ときには撤退する勇気を持つことをおすすめします。
また、事業計画書は資金調達時に金融機関や投資家などへ説明する際にも必須となります。早めに準備し、具体的なものにしておくことで、着実に起業へ向けてプロセスを進めていけるでしょう。
独立行政法人中小企業基盤整備機構では、LINEで独立・開業の無料相談ができる起業ライダーマモルも運営しています。このような無料相談も積極的に活用すると良いでしょう。
脱サラ起業に向いている仕事
続いて、脱サラ起業に向いている仕事の特徴をまとめてお伝えします。起業する業種や職種に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
1.初期投資があまりかからない仕事
“少額の初期投資から始められる業種”は、脱サラ起業に向いています。なぜなら脱サラで失敗する最もよくある理由が、「資金が足りなくなって、生活できなくなってしまう」ことにあるからです。
開業時に多額の初期投資がかかってしまうと、事業に失敗したときのリスクが大きくなってしまいます。初期投資が少額であれば、リスクは小さく、失敗したときの打撃も少なくてすむのです。
もし仮に、興した事業が成長しなさそうであれば、早めに別の新規事業に切り替える準備をする余裕が持てます。しかし赤字額が大きければ大きいほど身動きが取れなくなり、結果として倒産したり、会社員に戻ったりして一から生活を立て直さなければならなくなってしまいます。
業種によって異なりますが、例えばオフィスを賃借するのではなく自宅をオフィスにしたり、大きな設備を購入したりするのではなく、初めのうちはリースなどのレンタルでまかなうなどです。
起業への熱意や理想が高まってしまい、最初に思い切り資金を投入しようとしてしまうこともあるかもしれません。しかし、まずは初期投資がかからない、または少額からスタートできる業種や方法を選ぶことをおすすめします。
2.在庫を抱えない仕事
“在庫を抱えるビジネスモデル”の場合も、売れなかったときのリスクが大きくなってしまうため、脱サラ起業には不向きといえます。なるべくならば、在庫を抱えない業種で起業することをおすすめします。
商品を販売するような事業はどうしても在庫を抱えてしまう可能性はぬぐえませんが、受注の見積もり精度を高めたり、顧客の発注を受けたりしてから制作して販売するような、オーダーメイド型の商品を扱うなど在庫を抱えない工夫は可能です。
受注制作やオーダーメイドの場合、商品を顧客の手元に届けるまで期間がかかってしまいますが、それに見合った付加価値を提供できるようにすれば、顧客側の理解が得られる可能性も高まります。
“大量に在庫を確保して、大量に売る”というような、大規模なビジネスに後々チャレンジするのは問題ありませんが、“経営の経験やノウハウが少ない”脱サラしたての段階では、大規模なビジネスに手を出さない方が賢明といえるでしょう。
3.利益率が高い仕事
“原価が低く、利益率の高い仕事”も脱サラ起業に向いています。先ほども伝えたオーダーメイド型の商品やサービスを扱うことによって、付加価値を高めて原価率を下げることができます。
「起業したからには多くのお客さまに喜んでもらいたい」と思うのは素晴らしい情熱です。しかし、売り上げを追うばかりで、無理をした値付けや販売方法で利益を圧迫して事業を続けていけなくなってしまっては、本末転倒です。
起業したからには、事業や会社の存続と成長が大きな目的となります。利益がしっかりと残る事業は継続して安定した経営につなげやすくなるので、脱サラ起業を成功へと導いてくれるでしょう。
脱サラ起業に向いている人とは
ここまで脱サラ起業に向いている仕事や事業について説明しました。では、どのような人が脱サラして起業するのに向いているのでしょうか。次に、脱サラ起業に向いている人の特徴を紹介します。
1.スキルを持っている
スキルを活かした起業は、1つ大きな強みがあるので仕事を得やすいことが特徴です。そのため、スキルを持っている方は脱サラ起業に向いているといえます。
会社員時代に身につけたビジネススキルを軸に、これまでの業界や役割で得た知識や経験をしっかりと“スキル”と呼べるレベルに高めます。もし起業するために足りていないスキルがあるならば、あらかじめ自分で前向きに学ぶ積極性も求められます。また、開業後にもどんどん勉強し、自分のスキルや価値を高めていける方が、脱サラ起業向きだと考えられます。
2.自己管理ができる
脱サラ起業は“時間や場所に縛られず、自由に働ける”反面、自分で自分を律しながら働けない人にとっては“スムーズに仕事を進めることがむずかしい環境である”といえます。どれだけ休んでも、どれだけゆっくり仕事をしても自由ですが、成果につながらなければ事業は成り立ちません。
毎日・毎月・毎年の目標を明確にして、大きな目標のために逆算して小さなアクションを重ねていける自己管理能力は必須となります。逆に働きすぎて心身の健康に支障をきたしてしまうことも危険です。
そのため、しっかりと自己管理をできる人こそ脱サラ起業に向いているでしょう。
3.目標がある
何の目標もなく脱サラ起業してしまったため、途中でゴールを見失い、失敗してしまう例も多くあります。反対に、やりたいことや目標がある人は、目指すべき場所が見えているので強く、多少の壁が立ちはだかったとしても乗り越えられる可能性も高まります。
事業を行うことは、当たり前ですが、楽しいことだけではなく大変なこともあります。資金不足や赤字経営に悩むこともあれば、顧客からのクレーム対応にあたることもあります。会社員時代には会社がカバーしてくれたミスや失敗も、脱サラ後は自分自身ですべて責任を取らなければなりません。
それを乗り越えるエネルギーとして“目標”は必要です。明確な目標を持っている方は脱サラ起業に向いているといえるでしょう。
4.コツコツ続けられる
脱サラ起業は、起業したからといってすぐに、あっと驚く結果が出るものではありません。地道な努力の結果、顧客からの信頼を得て継続的な売り上げを積み上げ、大きな利益へとつながるものです。
そのため“コツコツ努力を続けられるかどうか”が大切です。簡単に諦めてしまう人は、脱サラ起業には向いていないといえます。
5.コミュニケーション能力がある
脱サラ起業は、会社員時代に苦手に感じていたかもしれない人間関係などからは解放されるものの、ビジネスを進めていくうえで「誰とも関わらなくてOK」というわけではありません。むしろ、必要に応じて取引先と仕事内容や責任の範囲、価格の交渉をすることもありますし、自分から積極的に新規の営業を行う必要もあります。
コミュニケーション能力があるかどうかは、実は脱サラ起業において重要なポイントです。取引先と良好な関係性を築くためにも“相手が何を求めているか”を正確に読み取り、それを仕事に活かしていくことが大切です。
そのため、コミュニケーションに自信がある方や対人対応が好きな方は、脱サラ起業に向いているといえるでしょう。
脱サラ起業時の準備資金
前の章でも紹介したように、脱サラ起業時には開業時にかかる費用を準備しておくのをおすすめします。しかし、どんなに低コストで開業した場合でも、最低でも半年から1年くらいの運営資金や生活資金の確保はしておきたいところです。
会社員時代に受け取っていた安定した収入を手放してしまうことになるので、低く見積もらないようにしましょう。生活資金としては、住居費・食費・光熱費だけでなく、家族の教育費なども試算します。
また、これまで給料から天引きされていた年金・健康保険・住民税・所得税についても忘れずに見積もりましょう。
もちろん事業内容によってはオフィスや店舗などの物件の取得費や内外装費、商品の仕入れ代、人件費などがかかるかもしれません。その場合も年単位で費用を見積もり、初年度の試算を行いましょう。
脱サラ起業時の資金調達方法
すべての開業資金をこれまでの貯蓄や自己資金でまかなえない場合、資金調達方法についても考えなければなりません。それぞれの調達方法について紹介します。
日本政策金融公庫などの金融機関から融資を受ける
一般的に事業に必要な資金調達方法として、銀行や信用金庫などに事業計画書を提出し、審査を受けて融資を受ける方法があります。
多くの起業に携わってきた“プロ”なので、融資はもちろん、事業計画についても的確なアドバイスももらえるでしょう。
なかでも、政府により運営されている日本政策金融公庫の融資を受けるには、事業計画書の提出や審査が必要となる点は銀行や信用金庫で融資を受けるケースと変わりませんが、銀行や信用金庫などの金融機関よりも有利な金利や返済期間で融資を受けることができます。
通常、金融機関で融資を受けにくいとされる若い方、高齢者向けの特別利率も用意されているため、該当しないか必ず確認してみてください。
補助金や助成金を活用する
国や自治体が用意する補助金や助成金の対象となる事業の場合、利用しない手はありません。それぞれ申請条件はありますが、地方創生や経済対策など、国や自治体の問題を解決するためにさまざまな制度が導入されています。
融資の場合は返済の必要がありますが、補助金や助成金、給付金であれば返済の必要がなく、事業資金を圧迫しないメリットがあります。
信用金庫などでは、申請のサポートをしてくれるところもあるので、それについても活用しましょう。
「地方創生推進交付金(まち・ひと・しごと創生交付金)」(地方創生)
脱サラ起業を目指す方はアントレを!
「自由に仕事をしたい」、「会社ではできないやりたいことがある」という方は、キャリアの選択肢の1つとして、脱サラ起業を考えてみてはいかがでしょうか。
脱サラ起業といってもさまざまな業種や職種があるので、自分に合うビジネスを丹念に探してみてください。
脱サラ起業を目指す方におすすめなのがアントレです。アントレは、さまざまな業種や業界のビジネス情報を掲載しているので、今後のキャリアを考えるうえで参考になるはずです。
情報収集などの準備を怠らず、脱サラ起業を成功させましょう。
独立開業・フランチャイズ・代理店ならアントレ<毎週金曜更新>
<文/北川美智子>