起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第161回・フライドチキンのブームがやってくる
いきなりですが、クイズです!
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
今回はテレビについての話です。
以前私が使っていたテレビは画質も良く、安定していて、一度も壊れなかったのでなかなか買い替えるタイミングがありませんでした。
ここにきて「人生最後の買い替えだ」くらいの意気込みで、思い切って念願の大型テレビを購入したわけですが、画面の大きさや画質のきめ細かさに圧倒された以上に、私の行動パターンに大きな変化が起こってしまったのです。
そしてこれは私に限った話ではなく、多くの人が経験しているようで、最近のテレビでは「よくある話」だといわれています。
それでは解説します!
20年前どころか、10年前に出たものと比べても、最近のテレビは画質や機能、薄さを含めた利便性もどんどん上がっています。当然ながら、それは他の家電製品でも起こっている製品としての進化でしょう。
それ以外の大きな変化として、新しいテレビにはこれまでと違う大きな物理的特徴がありました。それは、ボタンが増えているのです。
何かというと、「動画配信サービス」が見られる便利なボタンです。
具体的には、「Netflix」「Hulu」「U-NEXT」「ABEMA」「Amazonプライム」「YouTube」といったサービスへとすぐに飛べるボタンがついています。私が購入したものは、それに加えて「Disney+」がついており、機種やメーカーによっていろいろ違いはあるようです。
それによって何が起こったのかというと、テレビ画面でインターネットを見る時間が格段に増えたのです。
テレビをつけて、「ちょっとつまらないなー」と思ったら、別のチャンネルに変えるくらいの感覚でいろんな動画配信サービスを見るようになってしまいました。そして、それがすごく便利で楽しいのです。
変わったのは「ボタンがあるか、ないか」だけ
1つ大事なことがあります。
私は買い替える前のテレビでも、「Fire TV Stick」を使ってYouTubeやNetflixなどの動画配信サービスをよく利用していました。ちなみにFire TV Stickとはテレビモニターに挿すだけで簡単に動画コンテンツが見られる便利なデバイスです。
つまり、環境としてはテレビを買い替える前と後では実は何も変わっていないのです。それにも関わらず、インターネットを見る時間が増えた。それはひとえに、リモコンにボタンがあるからです。
ボタンを押せばすぐに見られるのはものすごく便利で、それが一度習慣化してしまうと、なかなか抜け出すことは難しそうです。読者の皆さんの中にもそういう方は多いのではないでしょうか。
実際のところ、動画配信サービスを提供する各社では、リモコンにボタンがあるかないかで会員の獲得比率が全然違う…なんて話もあるようです。
これはいわゆる「ラストワンマイル」という話で、要はサービスを届けるための最後の手段となるボタンの存在が、その商品を選ぶに至る決め手となっているということですね。
実際に体験してみて、分かること
「お金を払ってでもボタンを入れたい」と、リモコンのスペースの争奪戦が繰り広げられている話は以前から聞いてはいましたが、ユーザーとして実際に体験して大いに納得しました。
ボタン1つが世界を変える、なんていうと大げさですが、本当に人の習慣まで変わってしまうんだなあと実感した次第です。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「インターネットを見る時間が増えた」でした。ちなみに、簡単に動画配信サービスが見られるようになると、画面上での検索入力が面倒だなあと最初のうちは思っていたのですが、それもリモコンについているマイク機能により一発で解決しました。音声入力です。どんどん便利になるかわりに、どんどん自分が退化しているような気がしてなりません(笑)
構成:志村 江