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社会起業家からのメッセージ

NPO法人Tier Heim KOKUA(ティアハイム・コクア)/東京都渋谷区 代表理事

山田直美さん

千葉県生まれ。リラクゼーション業界の大手サロンにて、ハワイに古くから伝わる伝統的なヒーリング療法・ロミロミのセラピストとして活躍。2007年、「Aloha703」を設立し、現在もロミロミサロン、スクールを経営する。同時期より並行して、動物愛護活動を本格化。11年にNPO法人を設立、命の危険にさらされている犬の保護、里親を探す活動とともに、動物の終生飼養、適正飼育を図る啓蒙活動に尽力する。17年5月現在、Tier Heim KOKUAの卒業犬は100頭を超えた。

東京・原宿で保護犬シェルターを運営する「Tier Heim KOKUA」には、連日、犬の保護に関する問い合わせが10件ほど入る。その多くは「しつけができないから、もういらない」などといった飼育放棄だ。代表の山田直美は「環境省の最新発表によれば、犬・猫の殺処分数は年間8万頭台にまで減ったものの、悪徳ペット業者や身勝手な人間による飼育放棄、虐待は日常で行われている」と嘆く。規制なき生体販売もいまだやまず、いたずらなペット増加を背景とした負のループはなかなか断ち切ることができない。 山田たちの活動は多岐にわたる。命の期限が切られる動物愛護センターから、また飼育放棄や被災地などの現場から、行き場を失った犬たちをレスキューした後、シェルターで必要に応じた治療や精神的ケアを施す。その上で、新たな里親との縁をつなぐところまで責任を持つ。個性や事情の違う一頭一頭と向き合いながらの24時間体制の世話は、想像を超える大変さだ。それでも山田は、この社会問題の解決を自らの使命とする。目指しているのは、本当の意味での「犬や猫の殺処分ゼロ」。そして、人間と動物が共生できる愛情豊かな未来をつくることだ。

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株式会社エス・ピー・アイ(あ・える倶楽部)/東京都渋谷区 代表取締役

篠塚恭一さん(55歳)

1961年、千葉県生まれ。大手旅行会社の添乗員を経て、旅行専門の人材派遣会社に勤務、“人づくり”を担ってきた。91年、「エス・ピー・アイ」設立。98年、高齢者とその旅を支える人々が集う場として「あ・える倶楽部」を立ち上げ、介護旅行サービスを本格化。2006年には、広くトラベルヘルパーを育成することを目的に「日本トラベルヘルパー協会」を設立し、多くのプロを輩出している。教育、医療研究機関との連携も進んでおり、その活動は大きな広がりを見せている。

添乗員の育成、派遣を主事業とするエス・ピー・アイを設立したのは1991年。篠塚恭一が29歳の時である。当時、急速に進み始めた高齢化に伴い、旅行業界でもシニア市場の拡大が進んだが、その実、高齢者や健康に不安を抱える人に対するサービスは“空白”だった。高齢になったがために、体が不自由になったがために、旅のひとつもできないというのは 「おかしい」――強い疑問を抱いた篠塚は、90年代半ばより、旅を喜びとする全ての高齢者を支援する「介護旅行」事業をスタートさせた。以来20年以上、文字どおりパイオニアとして走り続けている。 担い手は、トラベルヘルパー(外出支援専門員)たち。介護技術と旅の業務知識を備えた介護旅行のプロで、国内・海外旅行はもちろん、買い物や食事などといった日常の外出支援も行う。この資格制度を設け、人材育成に努めてきた篠塚は、10年前に「日本トラベルヘルパー協会」を設立、広く一般に向けた講座や実地研修を通じて、プロの養成に力を注いでいる。ここから誕生したトラベルヘルパーは800名を超えた。これまで重ねてきた“種まき”が、「ようやく芽を出し始めた」と、篠塚は今、未来への手応えを感じている。

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2017年10月19日

NPO法人キッズドア/東京都中央区 理事長

渡辺 由美子さん(52歳)

1964年、千葉県生まれ。大学卒業後、西武百貨店に入社し、販売促進の仕事に従事。その後、出版社を経て、フリーランスのマーケティングプランナーとして活躍。2000年から1年間、イギリスで暮らし、「社会全体でこどもを育てる」文化に触れたことをきっかけに、07年、貧困家庭のこどもを支援する任意団体キッズドア(09年にNPO法人化)を創設。学習支援を行うボランティアには、大学生や社会人を中心に約2000名が登録、活動は大きく広がっている。

16・3%。これは2012年に厚生労働省が発表した「こどもの貧困率」だ。6人に1人のこどもが貧困状態にあることを示す数字で、OECD(経済協力開発機構)に加盟する約30カ国の平均値より3%“高い”。そして全国学力調査では、世帯収入とこどもの学力には相関があるとされている。 「長らくフタをされてきたこどもの貧困問題が、ようやく表面化した」。07年から、貧困に苦しむこどもたちの学習支援に取り組んできた、渡辺由美子の実感伴う言葉である。活動を始めた当初は、まだ社会的課題として認識されておらず、活動参加や寄付を募るにも容易ではなかった。「実態を知らせること」から始め、貧困環境にあるこどもたちにもフェアに学習機会を提供しようと、地道な活動を続けてきての今日だ。 具体的には、無料の高校受験対策講座「タダゼミ」、高校生の中退防止や大学受験をサポートする「ガチゼミ」の運営、1人親家庭の子ども学習支援などを展開。活動の主力となる大学生ボランティアとともに、こどもたちの学力の向上に尽力する。「日本のこどもたちの社会への扉を開ける」――渡辺の思いは、キッズドアという法人名に込められている。

貧困家庭のこどもにも、フェアなチャンスのある社会システムを。 それが、夢と希望を持てる未来への一歩になる

━ 活動を始めたきっかけは、イギリスでの生活体験だったとか。

15年ほど前、夫の海外赴任に伴ったのですが、確かにその時の経験が大きいですね。息子を小学校に行かせて分かったのは、イギリスには、私たちのような外国人家庭や現地の貧しい家庭のこどもたちも、分け隔てなく成長のサポートをする文化が根付いていること。地域、学校、保護者が連携し、皆で子育てを支えているのを目の当たりにし、感動したのです。 でも帰国してみると、様子が違う。例えば、シングルマザーで経済的に厳しい家庭のお子さんなんかは、ほかの友達のようにサッカー教室や塾などに行けないから、遊ぶ友達がいなくなって、孤立してしまうんです。休みの日でも、お母さんは仕事だから遊びに行けない。息子にね、「じゃあ、その子も誘って一緒に遊びに行こうよ」って。   振り返れば、ここが活動の始まりでしょうか。すごく喜んでくれるこどもたちを見ているうちに、もっとサポートしたい、そう考えるようになったのです。

━ それで、まずは任意団体を?

最初は、どこかでお手伝いをと思って相手を探したのですが、10年ほど前の話で、こどもの貧困問題に取り組む団体はほとんどなかったのです。でも問題意識は強かったので、自分で始めてみようと。 まずは、さまざまな体験機会を提供しようと考え、経済的に苦しい家庭の親子でも参加できる無料イベントや、格安コンサートなどを開催したんです。ですが、実際に訪れたのは相応のお金を支払えるような人たちばかり。何かが違うと思って調べてみると、本当に困っている人たちは、そもそもこどもを連れてイベントに行く余裕なんてないわけですよ。実態に触れ、模索を続けるなか、行き着いたのが無料の学習支援でした。   家で勉強をする環境がない、貧しくて塾に行けない、進学をあきらめざるをえない…聞こえてきたのは、そんな切実な声だったのです。

━ 無料でとなると、人も場所も、周りの協力が必要になりますね。

はい。心意気のある社長さんが、日曜日に会議室を提供してくださったり、勉強を教えるのが得意な大学生が集まってくれたり、皆さんの協力があってこその活動です。一口に学習支援といっても、こどもたちの学力レベルはまちまちですから、極力マンツーマンにし、また、レベルに合わせたテキストも作成するなど、数々の工夫は必要になりますが、ニーズは大きく、日々手応えを感じています。 でも最初の頃は、支援や寄付をお願いしに企業を訪問しても、「日本に貧困の子なんているの?」と、全然分かってもらえなくて。どこか“遠い国の話”なんですよ。一方では「働かない、努力不足」というバッシング的な見方を受けて、つらい思いもしました。助けてくれたのは、社会活動への理解がベースにある外資系企業でした。今も支援元としては外資系がメインですが、それでもかなり広がり、時代が動いたなぁと感じています。

━ 今後、注力していくことは?

うちのような学習支援だけでなく、例えば、こどもが1人で入れる「子ども食堂」のような民間支援も広がっていますし、給付型奨学金の創設などといった制度の動きも出てきました。重要なのは、やっと認知されるようになったこどもの貧困問題をブームに終わらせないこと。   そのためにも、より強い情報発信に努めたいですね。そして、キッズドアの自主事業を強化し、さらに門戸を広げていきたいと考えています。学習支援は1つの側面でしかないけれど、この社会問題にいろんなリソースを取り込んで、全てのこどもたちが夢と希望を持てる日本社会にする、それが私たちの願いなのです。

取材・文/内田丘子 撮影/刑部友康

NPO法人空家・空地管理センター/埼玉県所沢市 代表理事

上田 真一さん(32歳)

1984年、埼玉県生まれ。オハイオ州立大学卒業後、ベトナム大手旅行代理店に就職し、不動産事業の立ち上げに携わる。2010年、父親が経営する不動産会社に入社し、新規事業としてNPO法人空家・空地管理センターを設立。東京・埼玉を中心に1000軒を超える空き家に足を運び、管理、活用のノウハウを築く。15年、新宿に「空き家相談センター」を開設し、全国展開に向けて躍進中。著書『あなたの空き家問題』(日本経済新聞出版社)や講演を通じて、提言活動も積極的に行っている。

ここ数年、空き家問題がクローズアップされている。全国の空き家数は約820万戸(2014年総務省調べ)で、今後も急増、33年には2000万戸を超えるとの予測がある。率にして3割。つまり、3戸に1戸が空き家になるという時代を迎えるわけだ。なかでも、社会問題として深刻化しているのが「放置空き家」で、管理不足による草木の繁茂や、シロアリをはじめとする害虫発生、劣化した住宅部材の落下などが近隣地域に悪影響をもたらしている。 「空家・空地管理センター」の代表を務める上田真一は、そうした社会問題の解決に挑むパイオニアだ。13年、低額の月極め空き家管理プランを開発し、事業をスタート。当初は手探りで大変なこともあったが、高まる需要に応える格好で、その活動範囲は大きく広がってきた。最近では管理だけでなく、相続トラブルや税金問題、空き家の活用に関するさまざまな相談事にも、構築した協力会社とのネットワークを生かし、ワンストップで対応している。上田が理念に掲げているのは、「放置空き家ゼロ」。昨年からは、対応エリアを全国に広げて活動を加速させており、不動産業界に新たな風を起こしつつある。

空き家ビジネスを通じて、この社会問題の深刻さを喚起していく。それが、根本的な解決につながる道となる

━ なぜ、空き家ビジネスを?

父が不動産会社を営んでおり、継ぐ前提で入社したのが28歳の時。それまでにも不動産業には携わってきたので、業界を取り巻く時代の変化は感じていました。人口減少による住宅需要の落ち込みや、不動産投資の市場縮小など、「このままいくとジリ貧になる」という危機感が、まずあったんですね。「何か新規事業を」と思って、不動産業を細分化し、分析してみると、明らかに衰退する市場、伸びる市場が見えてきたんです。 そこで注目したのが、空き家の急増。 なかでも放置された空き家は、危険性や景観の乱れなど深刻な問題を抱えていて、放っておけないと。住宅の専門知識を持ち、加えて司法書士、弁護士などの専門家や建築業界とのネットワークがある不動産業界が、先んじて取り組むべきビジネスだと考えたのです。

━ 空き家管理を始めた当初は、苦労もあったと聞いています。

管理に入った空き家の隣人から、「大変なシロアリ被害に遭った。どうしてくれるんだ」と延々クレームを聞かされたり、時には台風のなか、劣化した屋根が飛ばないよう必死で作業したりと、けっこうヘビーな案件が続きまして。今ならノウハウがありますけど、最初は「どこまでやるか」の線引きができていなかったから、心身共にきつかったですね。 現場では、空き家の所有者が抱える種々の問題にも直面します。よく「空き家なら売ればいい」と言われるんですけど、実際は、そんな簡単な話ではないんですよ。所有者間での権利関係が複雑、相続でもめる、遺品整理に時間がかかるなど、空き家を活用しようにもできない事情は多々あるのです。活動を続けて分かってきたのは、この問題を根本的に解決するには管理だけではダメで、所有者が抱える諸問題をサポートする体制づくりが重要だということです。

━ それで「空き家相談センター」を開設し、活動を広げてこられた。

「空き家を相続したが、どう対処すればいいのか」といった相談が急増するなか、それらを受け止める窓口って、ほとんどないのが現状です。手間も時間もすごくかかるビジネスなので、誰もやりたがらない。だからこそ、そこに着手する意義があるし、先々、市場も取れるだろうと考えています。 相談センターの窓口業務には、当社の資格試験である「空家空地管理士」に合格した人が就き、より具体的な相談となれば、各分野の専門家や、造園、建築などの協力会社につないであらゆる相談に応じています。でも、十分なスキルを持つ人材はまだ圧倒的に不足しているので、現在は、その育成に力を入れているところです。

━ 全国の放置空き家ゼロを目指して、今後はどのような活動を?

まずは、名古屋、大阪、福岡と、相談センターを順次開設していきます。地域のことを一番分かっているのは地場の不動産会社ですから、対応エリアの全国展開には、協力会社の拡大が必須になります。ただ、空き家ビジネスは、手間や時間からすれば収益性は低いので、「地域や困っている人の役に立ちたい」という思いがなければ続きません。いたずらな拡大ではなく、“質”を大切にしたいです。 あと、重要なのは啓蒙活動。空き家問題は、もはや人ごとではない事態なのですが、そういう意識を持つ人がまだまだ少ない。何となく現状放置すれば資産価値は下がるし、地域にも迷惑がかかる。あげく壊すとなれば、大量の産業廃棄物も出る。どこを取ってもいい話ではないでしょう。皆が当事者意識を持たないと、放置空き家をなくすことはできないんです。私たちの事業や情報発信が、社会を動かすきっかけになれば――そんな思いで走っている日々です。

取材・文/内田丘子 撮影/刑部友康

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