個人事業主になると、会社員とは違い事業以外にも営業や経理処理なども自分でやらなくてはいけなくなります。毎日の経費は、きちんと計上しているでしょうか?経費が発生する度に、処理をすれば時間もかかりませんが、たまると厄介なのが経費処理です。
事業内容によって異なりますが、個人事業主でも業種によっては、日常的に会議費や交際費の出費があるかもしれません。
本記事では会議費の上限や、間違えやすい会議費と接待交際費、それぞれの上限の違いについて解説します。
個人事業主の食費は一部経費にできる!
個人事業主をしていると、クライアントと会議をしたり、打ち合わせを兼ねて食事をしたりなど、飲食費が発生することがあります。食事をしているからプライベートな出費なのかと思いつつ、「事業のための飲食だから経費で落とせたらいいな」と感じたことはないでしょうか。
個人事業主の場合、事業のために必要な飲食費であれば、経費として計上することが可能です。しかし、事業継続のために必要といっても、理由はさまざまですよね。必要性が認められるためには、どのような理由があるのかによって、経費としての勘定項目は「会議費」「接待交際費」「福利厚生費」「旅費交通費」の4つの区分に分類できます。
1.会議費
会議費とは、従業員や取引先と「会議」「打ち合わせ」「話し合い」をすることを目的として、食事をした場合の飲食費を区分する勘定項目です。なお、原則として、アルコールは会議費に含めることはできません。
2.接待交際費
接待交際費とは、接待や情報交換を目的として、取引先や従業員などの事業に関係のある人と飲食をした場合の費用を区分する勘定項目です。
3.福利厚生費
福利厚生費とは、忘年会や慰労会など、働く人全員で行う行事を行った際にすべての従業員のために事業主が支払う飲食をした場合の費用を区分する勘定項目です。基本的に従業員を雇用していない個人事業主の場合、福利厚生費が発生することはありません。
4.旅費交通費
旅費交通費とは、出張した際に泊まったホテルなどで発生した朝食や夕食などの食事代を区分する勘定項目です。ただし、通常の飲食費を旅費交通費に計上することはないため、旅費交通費は例外的な処理であると認識しておくと良いでしょう。
会議費とは?上限があるって本当?
会議費は、文字通り、会議・打ち合わせのための費用です。会議費には会議の際にかかる飲食費も含まれます。
会議費にできる費用と上限
・会議会場費(レンタル会議室、喫茶店の有料個室など)
・会議の弁当、お茶、お菓子費(社内、社外問わず)
・会議で使用するプロジェクターなど機材の借用費
・飲食店で会合した際の飲食費
・1人当たり、1回5,000円以下の接待交際費 など
会議費の上限とは、1人当たり5,000円以下であれば、接待交際が目的の飲食費も、会議費として計上することが可能です。
基本的に、会議の目的や時間などがわかる議事録があれば、問題なく会議費として計上できます。喫茶店や飲食店などで打ち合せを行い、議事録がない場合は、レシートに「年月日」「参加者名」などを記入しておくようにしましょう。
また、同席者がまとめて払い、後から割り勘にした場合などレシートがないこともあるでしょう。レシートがない場合は、出金伝票に「支払日」「支払先」「勘定科目(会議費)」、摘要欄に「飲食店名・所在地」「参加者」「金額」などを記入しレシートの代わりにします。
訪問先の時間調整や仕事目的で、1人でカフェやレンタルオフィスを使う場合も、会議費に計上することが可能です。
私用の飲食費と区別して、作業内容と時間(〇〇様見積作成や〇〇様訪問資料準備など)などをレシートに記入しておきましょう。
「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」(国税庁)
【会議費の上限とは?】会議費として認められない費用
1人当たりの上限を5,000円までとして、飲食費も会議費として計上できると説明しました。
会議費の上限5,000円とは、あくまで会議費の中に含まれる飲食費のことです。会議に必要なプロジェクターなどの機材や、会議会場費には上限はありません。
ただし、利用した店舗の種類や場所によっては、飲食費を会議費として計上できないこともあります。
【会議費としての計上が難しいもの】
・カラオケ、スナックなど会議とは関係のない店舗の会計
・新年会や忘年会など、会議目的ではない飲み会
・会議目的以外で発生した飲食費
・1つの店舗での飲食費の合計が5,000円を超える場合 など
カラオケやスナックのように、一般的に会議目的で使われることがない店舗での飲食費は、1人当たり5,000円以内の飲食でも会議費として計上することは難しいです。同様に、新年会や忘年会のような社内で行う飲み会も、会議費として計上できません。
飲食費を会議費として計上できるのは、あくまで会議と簡単な接待を目的として飲食店を利用した場合と考えておきましょう。
会議費の上限は、経理方式により異なることも
飲食店の会計を会議費として計上する場合、消費税の取り扱いに気を付けて、上限に納まるか計算しましょう。自社の経理方式によって、消費税込みで上限5,000円なのか、消費税抜きで上限5,000円なのかが変わってくるからです。
経理方式が税込経理方式の場合は、税込み5,000円までの飲食が、会議費の上限となります。税抜経理方式の場合、税抜き5,000円までの飲食費が、会議費の上限となるため税込経理方式よりも会議費として計上できる飲食費は大きくなります。
自社の経理方式を把握していないと、会議費にしようと思っていた会計が上限の5,000円を超えてしまい、会議費として計上できないこともあるので、注意しましょう。
会議費にできる飲食費とできない飲食費
会議費などの経費にできる飲食は、事業継続のために必要性が認められたものに限られると紹介してきました。ただし、実際に飲食費を支払う場面にはさまざまなケースがあります。飲食費を支払う中で、時に処理に迷うようなケースもあるかもしれません。
ここからは、いくつか具体例を挙げながら、どのようなケースであれば飲食費を経費として挙げられるのか。また、勘定科目になるのかをみていきましょう。
【経費にできる】原稿作成のために喫茶店を利用した
自身の事務所を持たずに活動しているライターやエンジニアの個人事業主の方の中には、作業を行うために喫茶店を利用することもあるでしょう。このように事業にまつわる作業を進めるために利用した喫茶店での飲み物や軽食の代金は、事業に必要なものとしてみなされるため経費として計上できます。
ただし、あくまで仕事をするために必要な経費でなくてはいけないため、お酒代や高価な食事などは含まれません。
また勘定科目については複数人で打ち合わせをしていた場合であれば「会議費」になりますが、このように作業のために利用しているケースでは「雑費」となります。
【経費にできる】昼食を取りながら会議をした
ただ昼食を取っただけでは、経費としては認められません。しかし、従業員や取引先と会議をしながら昼食をしたのであれば、経費として認められ「会議費」の勘定科目のもと経費計上できます。
また、本来であれば会議費として認められにくいお酒を飲んでいたとしても、認められるケースもあります。しかし、昼間から会議でお酒を飲むことは社会通念上、一般的とは言えません。そのため、お酒を飲むのは避けるのが良いでしょう。またどんな状況であれ、会議の議事録などの記録を残しておくことをおすすめします。
【経費にできる】取引先と飲み会をした
取引先と飲み会をするなど事業上の関係者を接待することは、事業継続のために必要な経費になります。食事会や飲み会を開いて関係を深めることは、仕事をより多く受注できるようにするためにも必要と認められるため、経費となるのです。このような業務上の関係者との飲み会費用は、交際費の典型です。
時に、金額が大きくなってしまったり、単価が高くなってしまったりするケースもあると思います。しかし、それが原因で経費にならないということは交際費に関しては、ほとんどありません。
【経費にできる】オンライン会議の際に弁当を食べた
従来は、会議をするために一ヵ所に集まって話し合うことが、当たり前に行われていました。しかし、昨今では以前のような会議形態は減りつつあり、オンライン会議が行われる機会も増えてきています。
このようなオンライン会議にて、弁当を各々が買ってきて食べた場合、その弁当代は会議で必要な経費とみなされ会議費になります。ただし、勝手に1人だけ食べたという状態だと会議費とは認められません。あらかじめ会議の参加者全員に同じお弁当を手配する、もしくは同額程度のお弁当を購入するようにしましょう。
【経費にできる】出張中に従業員と食事に行った
出張中に従業員と食事に行った際の費用は、経費にできます。しかし、出張中の飲食代の経費計上は、やや複雑であるため注意が必要です。
はじめに、ホテルの予約を朝食付きで取った場合、その朝食代については宿泊費と含めて経費として計上できます。この場合の勘定科目は、「旅費交通費」です。
他にも、出張先で一緒に出張をしている従業員と夕食を取るようなこともあるでしょう。この場合、従業員全員が出張に一緒に来ているのであれば、「旅費交通費」ではなく「福利厚生費」として経費にすることも可能です。
さらに、原則として夕食を取ることは出張であろうがなかろうが日々、行う行為です。そのため、事業継続に必要な支出とは言い難いです。ただし、その日の出張先での成果などを食事中に話し合うのであれば「会議費」にすることができます。さらに、取引先の担当者も交えての食事である場合、勘定科目は「交際費」になる場合もあります。
【経費にできる】従業員がいつでも飲める飲み物を購入する場合
事務所を構えている個人事業主の方の中で、いつでも従業員が飲めるように、事務所内にペットボトルの飲み物を購入しておく方もいるかもしれません。また、ウォーターサーバーを設置しておき、いつでも利用できるようにしている方もいるでしょう。
このように従業員のために企業側が用意している飲み物代については、すべて経費として計上することができます。これらはすべての従業員が対象となる経費であるため、勘定項目は「福利厚生費」になります。
【経費にできる】会議のための飲み物
個人事業主の方の中には、会議や打ち合わせのために飲み物を購入して用意しておくこともあるでしょう。長丁場の会議になると、夏場は特に水分補給が必要になります。昼食が取れないということがあっても、飲み物があると長時間の会議も乗り切れるでしょう。
会議のための飲み物代については、すべて経費として認められます。そのため、「会議費」の勘定項目のもと経費として計上します。
その他にも、喫茶店などで打ち合わせや会議を行い、そこでの飲み物代を支払うこともあります。この場合、飲み物代は「会議費」として認められます。
【経費にできる】来客用に飲み物を準備しておく場合
個人事業主の中には来客があった時の、おもてなし用に、飲み物を準備しておく方もいるかもしれません。
このように来客用に用意している飲み物代も経費にできます。勘定科目は「交際費」となります。ただし、来客の目的が会議や打ち合わせのためであることが主な理由であれば、「会議費」として経費計上した方が良いかもしれません。
【経費にできない】仕事中に弁当を買って食べた
昼食用のお弁当をコンビニエンスストアで買ってきたような場合は、仮に仕事中の食事であっても経費にすることはできません。食事は誰もが行う行為であり、事業のために行うわけではありません。
したがって、ランチミーティングのためにお弁当を用意するなどの理由ではない限り、お弁当を買うことは生活費で払っていることと変わりなく、経費として処理することはできません。
個人事業主は会議費を計上できる?条件や認められる事例を紹介
また、個人事業主の経費に関して動画で詳しく解説していますので合わせてご確認ください。
会計の基礎知識。経費の仕訳は節税の基本です。
会議費と接待交際費の違い
接待交際費は、取引先や得意先の外部事業関係者に対して、接待目的に使用する費用のことです。接待交際費と会議費の違いは、主に顧客・取引先との接待のための費用か、会議・打ち合わせのための費用かという点です。接待交際費と会議費は、目的によって使い分けます。
接待目的であっても、1人1回5,000円以下の飲食費は会議費として計上することが可能です。
免税事業者で税込会計処理をしている場合は1人1回税込み5,000円まで、課税事業者で税抜会計処理をしている場合は1人1回税抜き5,000円まで、会議費にできます。
個人事業主の場合、取引先への接待だけでなく、ビジネスの関係上、出席しなければならない業界の懇親会や旅行も接待交際費になります。
接待交際費にできる費用
・接待目的の飲食費(1人1回5,000円以上)
・仕事上の懇親会や旅行費
・取引先へのお土産の購入費
・お中元・お歳暮の購入費
・車費
・接待目的のゴルフのプレー費、交通費、飲食費
・記念祝賀会の参加者へのお土産費
・冠婚葬祭の慶弔費 など
税務上、接待交際費は「得意先や近いうちに得意先になる見込みのある人との飲食で利益を出すために必要な支出」であるかどうかが重要なポイントになります。接待交際費を使った場合は、必ずレシートに「接待目的」「参加者」「人数」を記入しておきましょう。
人数を記入するのは、1人5,000円までの会議費の上限に納まるどうかを判断するためです。
会議費や接待交際費の上限は、法人と個人事業主で異なる
法人と個人事業主では、接待交際費で使える経費の限度額が異なります。
個人事業主では金額の制限はありませんが、法人の場合は税法上の経費(損金)と認められるのは、下記の範囲と限られています。
【資本金1億円以下の法人の場合】
決算年次の1年間の接待交際費のうち、下記のいずれかで、より多くなった金額まで経費(損金)にできます。
接待飲食費以外の接待交際費は経費(損金)にはできません。
1.年間800万円まで
2.接待飲食費の50%
税法上の経費(損金)に認められなくても、会社の経費にできないわけではありません。しかし、決算後の税務申告時に経費に認められない交際費の金額が利益に上乗せされて、法人税を支払うことになります。
接待交際費の総額には上限があります。会議費には、1人1回5,000円までの上限はあっても、総額の上限がありません。
法人の場合は、経費(損金)に認められる接待飲食費以外は課税対象となるので、1人1回5,000円までの接待飲食費を会議費に計上できる制度を積極的に利用すると節税になります。
個人事業主の場合、制限はありませんが、将来、法人化を検討しているのであれば、上記の交際費と会議費の違いを理解し、使い分ける習慣を付けておくと良いでしょう。
会議費の上限5,000円は、会議中の飲食費にのみ適用される
個人事業主の場合は法人と違い、接待交際費の上限はなく、1回当たりの金額の制限もありません。
家族や単なる友達との交際費は事業の経費にできませんが、仕事先の紹介につながるような懇親会や会合なら、接待交際費として事業の経費にできます。
一番、注意しなければならないのは、家族・親戚との飲食費や旅行代、日常の食品・嗜好品など私用の生活費や交際費を個人事業主の経費に混在させないことです。
しかし、会議費と接待交際費の項目で説明したように、個人事業主の1人での飲食や旅行なら経費にできる場合もあります。
事業経費にかかる費用の出費については、必ずレシートに「接待目的」「出席者」「人数」を記載し、私用の出費と明確に区別する習慣を付けましょう。
また、クレジットカード払いの際も、個人用と事業用を分けておくことをおすすめします。
村上 年範さん/クレディ・テック株式会社 代表取締役
金融商品や不動産を活用した経営コンサルティングを得意とし、前職のプルデンシャル生命保険株式会社在籍時より担当したクライアント数は年間200社にのぼる。2013年クレディテック株式会社設立。金融と不動産を軸とし、税務・法務の観点から知識提供を行う、資産形成および財務のコンサルティングサービスを展開。海外不動産についても強いコネクションと発信力を持ち、これまでの取扱高は150MM以上。現在、「幻冬舎GOLD ONLINE」にて、幅広い資産形成ノウハウを連載中。【村上年範 運営】金融・不動産にまつわるYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCDq3bojqCvTnRXKu7Aur_Kg
<文/ちはる>