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事業承継とM&Aの違いは?個人が事業承継を行う方法、メリット

事業承継とM&Aの違いは?個人が事業承継を行う方法、メリット 事業承継

「自分で会社を経営したい」という意思はあっても、資金面などの問題で一歩踏み出せないという人が多くいます。一方で、少子化に加え、価値観の多様化に伴う後継者不足から親族への事業承継が難しいと感じている経営者・事業主は増えています。本記事ではM&Aで事業承継を受ける方法やメリットを紹介します。事業承継とM&Aの違いについても解説します。

事業承継とM&Aの違い

M&Aは事業承継をするためのひとつの方法です。近年の少子化や価値観の多様化もあり「体力的に誰かに引き継ぎたいが、事業の後継者が見つからない」と頭を悩ませる経営者・事業主は多いでしょう。M&Aを上手く活用できれば、社外からやる気や能力のある人材を見つけ、事業を託せる可能性があります。

また、起業を考えている人にとっても、M&Aを上手く活用して事業承継することで、新しく事業を開始するよりもリスクを下げて起業できるかもしれません。

ただ「事業承継とM&Aの違いがいまいちピンと来ない」という方も多いでしょう。それぞれの概要について解説します。

事業承継とは?

事業承継とは、会社の経営権や(知的)資産を後継者に引き継ぐことです。M&Aは事業承継のひとつの方法であり、M&A以外の事業承継方法には次のような選択肢があります。

【M&A以外の主な事業承継方法】
・親族内承継
・従業員等への承継

簡単にいえば『ビジネスオーナーが自分の代を幕引きして、後継者に事業を託すこと』が事業承継です。単なる社長交代と異なるのは、事業の後継者を社内外から探す点、自社の株や経営者の個人保証も引き継げる点などです。

M&Aとは?

M&Aは、買収や合併による会社・事業の引き継ぎを指します。『Merger and Acquisitions』の略称であり、Mergerは合併、Acquisitionsは買収の意味です。

事業承継のほかにも、次のような目的で行われることがあります。

【M&Aの目的】
・自社に足りない要素を補い合うことによる相乗効果
・スピーディーな新規事業の立ち上げ、拡大(買収側の目的)
・資金回収や後継者の選定(売却側の目的)

大企業の場合は『企業同士の相乗効果』を狙ったM&Aや、他社の事業を買収することで『スピーディーに事業を立ち上げたり拡大したりすること』を目的としているケースが多いです。

一方、個人や中小企業のケースでは事業承継を目的とすることが多いといわれています。

4種類のM&A

事業承継とM&Aの違いは?個人が事業承継を行う方法、メリット

M&Aには『株式譲渡』『事業譲渡』『会社分割』『合併』などの方法があります。これらの方法はそれぞれ、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。ひとつずつ紹介します。

株式譲渡

株式譲渡は、売却側企業の株式を買収企業が買い取ることで、経営権を譲渡する方法です。4つの方法の中でもよく取られる方法で、売り手側には「売却益にかかる税金を抑えられる」「株主総会の承認が不要なため、手続きが簡単」などのメリットがあり、買い手側にも「迅速な手続きによりスムーズな営業開始が見込める」「“のれん”の獲得による事業拡大が見込める」などのメリットがあります。

ただ、中小企業の場合は「株主名簿がなく、誰が株主なのか把握しきれなかったり、株主と連絡が取れない状態になっている」などのケースもあり、そういった場合は手続きが煩雑になるというデメリットが買い手側にとって存在することも多いです。

事業譲渡

事業譲渡は、会社の事業の全部もしくは一部を譲渡することによるM&Aです。一部の事業のみを譲渡するケースが多く、事業承継を目的としたM&Aではあまり取られることはありません。大企業が行う『相乗効果を狙ったM&A』に多い方法です。

「譲渡する事業を指定できる」などが、売り手側/買い手側双方で享受できるメリットといえます。買い手側が受けるデメリットとしては「株式譲渡に比べて手続きが複雑で、時間もかかる」「競業避止義務により、同じ市区町村内で同じビジネスができない」などが挙げられます。

会社分割

会社分割は別の会社に事業の一部もしくは全部を引き継ぐことで事業承継をする方法です。既存の法人に事業を移す『吸収分割』と、会社を新設し、そこに事業を引き継ぐ『新設分割』の2種類があります。

分割先の会社に株式を譲渡する場合は『分社型分割』、分割先の会社の株主に譲渡する場合は『分割型分割』と呼ばれます。

「株式で譲渡を行うため、現金の用意が不要」「分割する事業を選べる」などといったメリットを、売り手側/買い手側共に享受できるところが特徴です。買い手側が被るデメリットには「簿外債務まで引き継ぐかもしれない」「株式が非公開な場合、現金化しにくい」などが挙げられます。

合併

合併は、複数の会社を1つの会社にまとめることにより、組織を再編する方法です。1つの会社のみを残してほかの合併会社は消滅する『吸収合併』と、すべての会社が消滅して新しい会社となる『新設合併』があります。

新設合併では新しい会社を起こすため「会社設立の手続きが煩雑になりやすく、登録免許税も高くなりやすい」などの買い手側のデメリットはあります。しかし、吸収合併には「会社の設立を伴わない」という、手続きや税金面でのメリットがあります。

どちらの方法を採るとしても、ほかのM&Aの方法と比べると手続きが煩雑ではあります。後継者を社外から探して事業承継したい場合には有効な方法です。

M&Aで事業承継を行うメリット

事業承継とM&Aの違いは?個人が事業承継を行う方法、メリット

少子高齢化や価値観の多様化により、親族に事業承継させる会社は少なくなっています。そんな会社の事業承継に有効なのがM&Aといえるでしょう。事業承継をM&Aで行うことで買い手側が得られるメリットには、次のようなものがあります。

【M&Aによる事業承継で売り手側が得られるメリット】
・事業承継先の幅が広がる
・事業承継後も収益を得られるかもしれない
・株式譲渡を選べば税金を抑えられる

親族や社内の候補者の中から事業承継先を選ぶ場合、選択肢はどうしても少なくなります。親族への事業承継を前提として教育してきた場合や、社内に優秀な候補者がいる場合は別ですが、社外にも目を向けた方が、事業承継後もビジネスが上手くいく可能性は高いでしょう。

親族や社内候補者に事業承継をしても、利益は発生しませんが、M&Aなら会社や事業の売却益が得られます。株式譲渡を選べば、事業承継にかかる税金も抑えられるため、利益を大きくしやすいでしょう。

【M&Aによる事業承継で買い手側が得られるメリット】
・“のれん”を引き継ぐことができ、知名度を維持したまま事業を開始できる
・節税対策になる

新規事業を立ち上げる際、『集客』に苦心したり、『技術開発』に多額の資金と時間の投資が必要になったりする、といったケースが多いです。しかし、M&Aによって事業承継の実現した場合、すでに完成している状態の事業や企業を買収することとなり、その“ノウハウ”や“ブランド力”も承継することが可能になります。

また、売り手側が赤字を抱えていた場合、場合によってはその負債も共に引き継ぐことになります。赤字は発生した年から7年間は繰越可能で、翌年に繰り越された赤字は「繰越欠損金」と呼ばれます。繰越欠損金は自社の黒字売上と相殺でき、M&Aによる事業承継が節税対策になるケースもあるのです。

M&Aで事業承継を行うデメリット

事業承継とM&Aの違いは?個人が事業承継を行う方法、メリット

事業承継をM&Aで行うことには『事業承継先の選択肢』『売却による利益』『節税』『ブランド力・ノウハウの維持』など、さまざまなメリットがあります。しかし、親族や社内の候補者に事業承継するときにはなかったデメリットが生じることもあります。またM&Aで事業承継を行うことで買い手側に生じるデメリットも存在します。

【事業承継にM&Aを選ぶデメリット】
・コストがかかる
・既存の社員や取引先に迷惑がかかるかもしれない
・個人使用していた会社の資産が使えなくなるかもしれない

M&Aで事業承継をすれば売却益が発生し、株式譲渡を選べば税金を抑えられるのも事実です。しかし、親族や社内の候補者に事業承継する場合には発生し得なかったコストが発生することもあります。例えばM&Aのコンサルティングや仲介会社に支払う依頼料、新しい経営者に自社の事業のレクチャーをする手間などの、金銭的・時間的コストです。

事業承継先となる新しい経営者が自社についてよく理解していなかったり、既存の従業員を大切にしてくれなかったりすると、社内で不満が膨れ上がり、せっかく育てた会社が傾いてしまうかもしれません。今までのやり方や理念を上手く踏襲できず、取引先に迷惑がかかる可能性もあります。

経費で購入した車を私用しているような場合は、事業承継後、今まで通りに使えなくなることもありえるでしょう。『実質私用の会社資産』があるなら、M&Aの前に売却しておくのがおすすめです。

【M&Aによる事業承継で買い手側が被るデメリット】
・簿外債務を引き継ぐ可能性がある
・投資以上の利益を出すことができない可能性がある

貸借対照表に載っていない『簿外債務』や将来的に、経営に不利益をもたらす『偶発債務』を継承してしまう可能性もあります。M&Aによる事業承継の場合、事業承継以前から企業の内情を知ることは難しく、書類では見つけられないリスクに気付くことが難しくなります。事前にしっかりと財務状況も含めた調査を行う必要があります。

また、買収金額は売り手側の『のれん代』も含めた企業価値によって算出されます。のれん代が多額であったにも関わらず、事業統合後の利益が思ったよりも伸びなければ『のれんの償却』によって利益がマイナスになってしまうのです。多額の『のれん代』によって、経営が困難になるケースも存在します。「事業統合後、本当に利益が伸ばせるか」といった統合後のシナジーも含め、適正な買収金額で取り引きできるようにしなければなりません。

少子高齢化の進んだ現代において、M&Aによる事業承継は有効な手段

事業承継とM&Aの違いは?個人が事業承継を行う方法、メリット

少子高齢化や価値観の多様化により、親族に事業承継するのは難しくなりました。社内に有力な候補者がおらず「自分の代で会社を畳んでしまおうか」と考えている経営者も多いでしょう。そして「自分で経営をしてみたい」と思っていても、資金面などの問題により、その夢を断念せざるをえない人が依然として多数いるのも事実です。

そんなときに有効な選択肢が『M&Aによる事業承継』です。M&Aというと『他社と合併したり、吸収されたりするもの』というイメージがあるかもしれませんが、今は個人M&Aも盛んになりました。

個人M&Aなら、自分の会社の名前や文化を残したまま、新しい経営者を迎え入れることもできるでしょう。買い手側にとっても『地元の方に愛されてきたブランド』を引き継いでビジネスを始められる、というのは自分で全く新しい事業を始めるのとは違ったやりがいがあります。 

しかし、副業感覚でM&Aに取り組む個人も多いです。副業で取り組むこと自体は問題ありませんが、気持ちや準備が十分でなかったために、引き継いだ会社を潰してしまう人もいます。

副業で取り組むとしても、M&Aや買収する事業のことや市場のことをよく知り、しっかりと準備しておく必要があります。そのためには、M&Aやビジネスについてだけでなく、引き継ぎ先の企業や地元の文化など、深く学ぶ必要があります。また、会社を引き継ぐ側もM&Aやビジネスについて学びなおし、しっかりした後継者を見定める目を育てなくてはなりません。

アントレでは、フランチャイズビジネスやM&Aなどの『個人が独立するために必要な知識』を継続して伝えてきました。

『個人が会社を買って独立を目指す』ことを目的とした、事業承継実践プログラムも行っており、定期的に参加者を募っています。2021年12月までに2期生までが参加し、それぞれ自分のビジネスを成長させるために奮闘中です。興味のある方は、下記特設ページも覗いてみてください。

<文/赤塚元基>

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