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前年度の調査実績は43万件以上!? 税務調査の備え方と当日の流れを、税理士が解説!

前年度の調査実績は43万件以上!? 税務調査の備え方と当日の流れを、税理士が解説!

コロナ禍で一時ストップしていた「税務調査」が10月より再開しました。

「税務調査」とは、納税者が提出した申告書の内容を税務署などが会計帳簿や領収書などで確認し、納税金額に誤りがないかどうかを確認する調査手続きのこと。

私の顧問先でも10月以降になって「税務調査」による実地調査が入りますよというお知らせが、税務署から数件くるようになりました。

「税務調査は法人に来るもの。個人事業主の私には関係ないよ」と、思っていませんか?
実はそうでもありません。

そこで今回は個人事業主にどれくらいの割合で税務調査がやって来るのか、また実際の税務調査がどのように行われるのか、私の体験談も交えながらお伝えしていきたいと思います。

税務調査の実施割合は全体の1%程度。しかし、“ある業界”の人は特に注意が必要?

結論からお話しすると、個人が所得税の申告をする場合、およそ100件の申告に対して1件の割合、つまり約1%の確率で税務調査が入ります。

フリーランスの方が確定申告などして納める「所得税」について、前年度では43万1000件(前々年度では 61万1000件)で調査がありました。

では本年度はというと、コロナ禍の影響で調査件数そのものは前の年より減っている印象です。

しかし税務調査が入ったうち、実に半分もの案件で無申告等により追加で税金を納めるべき指摘がなされています。

税務署によると、特に最近では『シェアリングエコノミー等の新たな分野の経済活動をはじめ、インターネット取引を行っている個人に対しては、資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施しています』と公表されています。

※シェアリングエコノミーの例)「Airbnb」といった民泊や「Anyca」といったライドシェアリングなど

税務調査の対象先選定には、様々な基準があります。

税務署からみて税金を取りやすそうなところ(利益が出ている、消費税の課税事業者である)はもちろん、そもそも所得税の確定申告をしていない無申告の方、税理士をつけず納税者が自分で申告をしていて明確な誤りが発見できる場合に狙われやすいです。

シェアリングエコノミーに限らず「メルカリ」などで物販をして収益を上げている方や、最近コロナ禍の影響もあり「Uber Eats」の配達員として収入を得た人が、確定申告をせず無申告で調査が入る、というケースも珍しくありません。

無申告の方は言わずもがな、確定申告をしている方でも、比較的新しい領域で経済活動をされている方は特に注意が必要だと言えるでしょう。

調査の告知は電話から! まず「税務調査」か「行政指導」かを確認しよう

ここからは、実際に税務調査が行われる場合を想定して、お話を進めていきます。

税務調査が入る場合、まず税務署から「事前通知」により調査が行われる旨の連絡があります。

事前通知……税務署の職員から会社や個人あてに電話があり、口頭で調査内容、対象期間、税目が伝えられることです。

ただし、証拠隠滅される可能性がある場合などには、予告なしで調査が入ることもあります。

顧問税理士がいる方は、顧問税理士にも税務調査の事前通知がいきます。

調査場所や日時については、事前通知の際に説明があります。

通常の調査では、相談の上で日程を決めることができますので安心してください。

そして「税務調査」といってもいくつかの種類があります。

実地調査(特別調査・一般調査)とは、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うもので、特に、特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人を対象に、相当の日数(1件当たり 10 日以上を目安)を確保して実施しているものです。

実地調査(着眼調査)とは、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査です。

簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものです。

出典:令和元事務年度 所得税及び消費税調査等の状況 令和2年11 月 国税庁

上から順により負担の多い調査となり「実地調査」では数カ月かかることもあります。

一方「簡易な接触」ですと税務署に来所することにより、1日程度で終了するものもあります。

「税務調査」以外にも税務署から連絡がくることがあります。

それは「行政指導」というものです。税務署から連絡がきた場合は「税務調査」か「行政指導」が冷静に確認しましょう。

行政指導……申告書の誤りや転記・記載誤りがあると思われる場合に自発的に見直し申告書の修正を要請することを言います。
その場合、電話や手紙でその旨の連絡が税務署より来ます。
税務調査は、特定の納税者の方の課税標準等又は税額等を認定する目的がありますので両者は目的に違いがあります。

実際の税務調査の事例を紹介! 調査当日の流れをつかもう!

調査は自宅で行われることや、必要に応じて職場で行われることもあります。“税務署からの呼び出し”ということもあり、多くの方は緊張されることでしょう。

調査の内容によりますが、平均すると税務調査は1~3日で行われるケースがほとんどです。そして税務署の職員である調査官は基本的に2名でやってきます。

ここからは、ある調査の1日の例を見ていきましょう。

午前10時

時間ぴったりに調査場所である自宅のチャイムが鳴ります。ドアを開けると2名の調査官が。50代位の方と、20代位の方の2名です。

自宅の4人掛けのダイニングテーブルにて、2名の調査官と向かい合って座ります。まず調査官は身分証明書を開示します。

そして調査が開始されると、資料や会計帳簿をチェックされるのかと思いきや、事業内容、事業の始めたきっかけ、家族構成についてなどを聞かれることがあります。

FacebookやInstagramで投稿した内容についても、事前に調査官が調べていたようで「お子さん、かわいいですね」などといった世間話から始まることも。

「奥さまは仕事を手伝うことがあるのですか?」といった内容の会話や、事業での苦労や取引先とのトラブルや雑談を交えつつ、気がつけば、なんだか知人と話しているような空気感に変わっていきます。

緊張も徐々にほぐれ、調査官と打ち解けてきたかと思うと、いつの間にか午前12時を知らせる時計のベルが鳴ります。

午前12時

調査官に「また午後1時から再開しましょう」と告げられ、ここでお昼休憩に入ります。

調査官はこの間もお昼ご飯を取りながら、午後の作戦を立てているようです。

午後1時

再び自宅のチャイムが鳴り調査官が戻ってきました。

午後は「会計帳簿3年分と領収書や請求書、銀行の預金通帳をみせてください」と言われ、事前に用意していたものをテーブルのうえに並べます。

1人の調査官は、黙々と売り上げ関係の会計帳簿や請求書をめくり、何かを調べているようで先ほどまでの和やかさが消え、プロの仕事人のような雰囲気がします。

もう1人の調査官は、手許にある売り上げや経費の3期分の数字が書かれた表を見ながら、いろいろと質問してきます。

「自宅ではどれくらいの時間、作業されますか?」「現金で受け取った収入はありますか?」などといった具合に、仕事や売り上げ関係の話について聞かれます。

そしてある1枚の領収書を取り出し「こちらのお店にはどなたと行かれましたか?」と問われました。

「この領収書は、家族と食事にいったときのものです」と答えると「それは経費にすることは難しいですね」と指摘されました。

午後3時

調査官から、もうまもなく税務署に戻る旨を告げられました。

その上で「預金通帳のコピーや、交際費の領収書のコピーを取って署に持ち帰ってよいか」と聞かれます。

そして今回は、プライベートな支出が経費として入っていること、収入の集計漏れによる計上漏れがあったので修正が必要と指摘されました。

こうしてあっという間に調査の1日が終わります。

翌週になると、税務調査の結果について電話で告げられます。

やはり収入の計上漏れや経費の誤りの部分は修正すべきなので、「修正申告書」を提出してくださいとのことを伝えられました。
国税庁:修正申告書

指摘があった後はどうなる? 修正申告手続きから税務調査終了まで

今回のケーススタディでは、残念ながら確定申告の誤りが発見され、指摘されてしまいました。

では調査官から指摘された場合、その後どうするのか。気になるところかと思います。

その場合、正しい申告になおす「修正申告」という手続きをとり、納税して頂くことになります。

税務調査終了のタイミングは、調査官が自宅など現地等での調査をもとに報告書を作成、署内で問題ないと判断された時です。

税務調査官が署に戻れば終了というわけではないため、その点はご注意ください。

このように調査の結果に問題があるケースでは、調査官は納税者に指摘事項を伝えます。そして納税者は、修正申告書の提出の後、追加の税金を納めます。

否認事項がきちんと修正された時点で、税務調査は終了となります。

税務調査前に備えておきたい3つのこと

事例を交えてお話しましたが、税務調査時のイメージがわきましたでしょうか?

調査前の準備も大事ですが、何より毎年の確定申告時の時からきちんと税務調査を見据えて準備をすることが大事です。

最後に税務調査時に慌てることないよう、普段の確定申告の時から備えるべきことを3つお伝えします!

<税務調査に備えるべき3つのこと>

1「領収書等の証拠がない、捨ててしまった!」に備える

領収書等がない場合、最悪経費として認めてもらえない可能性あります!

領収書がなくても、支出した事実を間接的に証明できるものを残しておくのもひとつです。例えばメールでの取引のやり取りを印刷しておいたり、ネットで購入したものでれば購入履歴を残しておきましょう。

普段から領収書は取っておく癖をつけ、1年分の領収書はまとめて1か所に保管しておきましょう。

2「取引内容がわからない!」に備える

よくあるのが、税務調査官に聞かれた事に対して、適切な預金通帳の摘要欄を見ても何の取引が思い出せないケース。

全ての取引や出費に対してすぐに思い出せないことはあったとしても、あまりにその回答が出来ない項目が多い場合は「不正を隠しているのではないか?」と思われたり、帳簿の信頼性を疑われてしまう可能性があります。

特に現金商売の方や、現金での取引が多い方は要注意です!

領収書や通帳に直接メモする、ノートにまとめておく、会計帳簿の摘要欄に内容を記載しておきましょう!

3「税務判断や適用の誤り」に備える

多くの税理士や調査官の方、いわゆる“本職”の人から見れば「税務・会計知識がない方が作成した申告書」は、やはりすぐに分かってしまいます。

転記ミスや記載誤り等の形式的な所や、「ここにこの数字が来ることはあり得ない」というように、異常な数値の記載があるとすぐにミスが判明してしまいます。

税務調査で指摘され追加で税金を納めることとなると、本来の税額に加えて、加算税等のペナルティがつきます。

特に税法は複雑で毎年変わりますので、普段から相談できる税理士を見つけておくことが大切です。適正な納税に努めてコロナも税務調査も乗り越えていきましょう!

文=齋藤 雄史
編集=内藤 祐介

<プロフィール>
齋藤雄史さん
税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。

高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。

合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。

ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。

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