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企業の事業承継に対する金融機関による支援とは?

独立ノウハウ・お役立ち

経営者の高年齢化が進み後継者難に陥る中小企業が増えるなか、金融機関が事業承継支援に乗り出す事案が増加しています。

ここでは、企業の事業継承に対する金融機関の支援について解説します。

事業承継の現状について

国内の中小企業で経営者の高年齢化が急速に進んでいるなか、後継者が決まっていない企業が多数あります。

具体的には、中小企業庁の調査で「今後5年間で30万人以上の中小企業経営者が70歳以上になるにもかかわらず、6割の中小企業が後継者を決めていない」ことが明らかになっています。

事業承継が円滑に進まないことが、技術力やノウハウを有した中小企業の廃業を引き起こし、そのことが今後の日本経済の衰退につながる懸念が生じているのです。

金融機関が事業承継を支援する意義

事業承継を行えず中小企業が廃業することで、金融機関は取引先を失います。

とりわけ、地域に根差した活動を行っている地方の金融機関に関しては、中小企業の廃業が地域経済の衰退につながります。

そして、これは金融機関の今後の経営に大きなダメージを与えてしまうのです。

このことより、地方の金融機関を中心として中小企業に対する事業承継支援を行う取り組みが広がっています。

金融機関における事業承継支援の内容

金融機関による事業承継支援の内容は多種多様です。

金融機関は、支援を行いたい中小企業の経営体制や経営環境、地域の特性などを考慮した上で支援する内容を決定しています。

現在行われている金融機関による事業承継支援には、次のようなものがあります。

・セミナーの実施
・コンサルティングの実施
・株式承継に対する支援
・M&Aに対する支援

セミナーの実施

事業承継を円滑に進めていくためには、経営者が事業承継に関する正しい認識をもつ必要があります。

中小企業の経営者を対象とした事業承継に関する知識やノウハウを習得するため、金融機関が主催となったセミナーが行われています。

後継者を対象とした、経営に関する知識を学ぶためのセミナーが行われることもあります。

コンサルティングの実施

事業承継は、長い時間をかけて計画的に進める必要があります。

加えて、事業承継後の経営の安定化が図られなければなりません。

そのことに対して、金融機関が外部の専門家を交えた事業承継支援チームを結成し、事業承継が必要な中小企業に対する「事業承継の進め方や事業承継後の経営に対するコンサルティング」「事業計画書の作成」などの支援を行っています。

株式承継に対する支援

中小企業における事業承継の課題の一つに、後継者がほかの株主による影響を受けない経営を行うためにする“株式の移転”があります。

株式が分散化してしまうと、経営方針がまとまらないことによる経営の不安定化を招くことがあるからです。

そのことに対して、金融機関が、後継者が経営者から株式を買い取るための資金や贈与税・相続税を支払うための資金を融資する形で、支援を行っています。

さらに、複数の金融機関が既存のファンド会社に出資し、中小企業に対する投資を行うことで、株式の分散化の防止や事業承継後の経営の安定化を支援する取り組みも行われています。

M&Aに対する支援

経営者に「事業承継を行いたい」という意思があった場合でも、社内に承継後の経営を任せることのできる人間が存在しないために事業承継が進まないことがあります。

そのような場合、M&Aによる事業の売却を行うことで事業を存続させるという選択肢があります。

金融機関が事業の買収を希望する企業との仲介役を務め、交渉をスムーズに進めていくためにアドバイスするなどの支援が行われています。

金融機関が事業承継支援を行う際の課題

金融機関が事業承継支援を行う際の課題は「金融機関にとってのリスク」や「支援企業の経営」に起因する場合が多いです。

具体的には、次のことが課題となることがあります。

・融資に対する個人保証
・支援企業の経営内容

融資に対する個人保証

金融機関は、中小企業に対して、経営者自身の個人保証を背景に融資を行うことが一般的です。

事業承継が行われた場合、金融機関にとって望ましいのは「後継者が個人保証を引き継ぐこと」ですが、現実的には後継者に資産がないため「個人保証を引き継ぐことができない」「個人保証を前提とすることで、事業を引き継がせたい人間が事業承継を拒む」という事態が生じることがあります。

このことが、金融機関が事業承継支援を行う上での課題となりうるのです。

支援企業の経営内容

事業承継は経営体制を刷新することでもあり、それを機に経営の改善が図られる事案も少なくはありません。

このことが期待できる企業に対しては金融機関も前向きな支援を行いますが、事業承継を行った後も経営の改善が期待できない企業に対しては、金融機関が支援を行うことを躊躇してしまうことがあります。

さらに、現経営者と後継者との経営方針が異なり、対立してしまう場合もあるでしょう。

それにより今後の経営の安定化に対する懸念が生じ、金融機関が支援を行うことを躊躇してしまうことも想定できます。

上記が、金融機関が事業承継支援を行う上で想定される課題です。

まとめ

中小企業にとって、財務面の安定化に対して力を貸してくれる金融機関は最も身近な存在の一つです。

事業承継への対応に関して、金融機関からの支援を活用することは有用な選択肢となります。

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PROFILE
大庭真一郎

大庭経営労務相談所 代表
東京生まれ。
東京理科大学卒業後、民間企業勤務を経て、1995年4月大庭経営労務相談所を設立。
「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心として、企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。中小企業診断士、社会保険労務士。

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