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節税のポイントは国民年金? 開業に必要な税金と書類について、税理士が解説

節税のポイントは国民年金? 開業に必要な税金と書類について、税理士が解説

会社から独立・開業して個人事業主となる上で、避けては通れないのが届け出や税金などの様々な申請事項です。

独立するためには必ず必要であるのに、誰に聞いたら良いか分からない、とお困りの方も多いのではないでしょうか。

独立・起業の「お金」に関する悩みを、税理士の齋藤雄史先生に解説していただく「税理士が教えるお金と起業」シリーズ。

今回は、税理士が教える「個人事業主になる上で必要な書類と税金」をテーマに、齋藤先生に詳しく伺いました。

フリーランス同士で取り引きする際にも、申請が必要? 開業時の届け出書類を、税理士が解説!

こんにちは、税理士の齋藤雄史です。

税理士という職業柄、毎年多くの会社から独立する人を支援させていただいております。今回は独立する際に気をつけておくべきポイントをまとめてみました。

まずは開業の際に税務署に提出する書類について解説します。

①個人事業の開業・廃業等届出書

「個人事業主としてこれから独立・開業をします」という旨を税務署に意思表明する、最も重要な書類です。

手続きが複雑な株式会社と比べて、この書類1枚で簡単に立ち上げられるところが、個人事業主の強みですね。

またこの開業届は、会社員を続けながら副業などで事業を立ち上げられる方も、提出することができます。開業届出を出すことで、屋号入りの銀行口座が作れたりとメリットがあります。

また会社員時代に一度提出されている方は、独立時に出す必要はありません。

原則、事業開始から1カ月以内に提出しましょう。

②所得税の青色申告承認申請書

開業届とともに忘れてはならないのは、所得税の青色申告承認申請書です。

大きなメリットは、収入から経費を差し引いた後の利益から最大65万円を控除することができる点です。

その他には、赤字を翌年に繰り越せたり、家族への給与を経費にすることができます。

青色申告承認申請書は原則として、業務を開始した日から2カ月以内に提出しましょう。

所得税の青色申告承認申請書に関してはコチラ
確定申告(青色申告)を行うなら個人事業主でも開業届を出そう!

確定申告時に控除にもなる? 個人事業主が自分で支払うべき「3大税金・保険料」

続いては、開業後の税金について解説します。基本的にはいずれも会社員時代から支払っているものではありますが、個人事業主は全て自分で支払わなければなりません。

1つずつ見ていきましょう。

①国民年金

まずは国民年金です。会社員時代は厚生年金に加入しており、給与から天引きされる形で支払っていましたが、個人事業主として開業したあとは、毎月自分で支払っていく必要があります。

ちなみに平成31年4月現在、月額の国民年金保険料は16,410円です。

また、厚生年金から国民年金への切り替えは、自分で行う必要があります。

退職日の翌日から14日以内に住所地の市区役所または町村役場へ足を運び、年金手帳または基礎年金番号通知書と、退職証明や離職票などの退職日の分かる書類、身分証明書を準備していきましょう。

②国民健康保険

次は国民健康保険です。こちらも退職後(前の健康保険の資格喪失日から)14日以内に、各市町村の役所に届け出なければなりません。

「健康保険資格喪失証明書」と身分証明書を持参して行きましょう。

国民健康保険の金額は前年度の所得に応じて変わります。会社員時代の前年度の収入が高い場合、独立後の収入が減ったとしても国民健康保険の金額は高いままですので、注意しましょう。

また、国民健康保険は加入時期により異なりますが、基本的に6月中旬に納付書が届き、次の年の3月までに支払わなければなりません。支払い方法は、一括払いでも分割払いでも選択が可能です。

国民年金、国民健康保険ともに社会保険控除の対象になる(確定申告表の⑫)ので、支払った際の記録を取っておき、確定申告の際に忘れずに記入するようにしましょう。

※確定申告表の書き方を以前解説しました。そちらも御覧ください。
「副業している会社員」の確定申告を、税理士が分かりやすく解説します!

③住民税

最後は住民税です。

こちらも国民健康保険同様、前年の所得金額に応じて税額が決まります。仮に独立後で収入が少なくても、支払わなければならないので、注意しましょう。

また個人事業主の場合、住民税の支払いは通常4分割となります。

給与から天引きになっていた会社員時代とは異なり、そこそこまとまった金額を4カ月おきに支払わなければならないので、こちらも注意が必要です。ただし国民健康保険同様、1年分まとめて支払う方法もありますので、余裕のある方はそちらも活用してみてください。

そして住民税は国民年金、国民健康保険とは異なり、社会保険を含めた控除の対象ではありません。そのため所得税の確定申告の際に経費としても落とせません。

3カ月分をまとめて支払うので納税金額も多く感じる上に、控除にも経費にもできないので、少々厄介に感じてしまう住民税。

国民の義務ですので仕方ありませんが、面倒なことを避けるためにも、税金は滞納しないようにしましょう。

節税のポイントは、国民年金の払い時? 税金や法律と上手く付き合うのも個人事業主のスキル

その他必要なものとして、業種にもよりますが「許認可」などが挙げられます。

例えば飲食店なら、衛生管理や保健所の許可、事務所を設置する際には消防署に届け出ることなどが別途必要になってきます。

意外と多いのが、物販や中古品の売り買いといった古物商にも、免許が必要になる場合があります。

当然ですが、免許がないのにも関わらず営業をしていると、法令違反と指摘され、銀行から融資を受けられない可能性もあります。

自分の業種についての免許や法令に関しては、各自で必ずチェックしておくようにしましょう。

また今回ご紹介した税金を使った、節税方法について最後にお伝えしたいと思います。

ポイントは、国民年金の払い時です。

国民年金は20歳以上60歳未満の全ての方が加入する制度です。
多くの方が大学を卒業される昨今、20歳から大学を卒業するまでの国民年金を「学生納付特例制度」を使って納付を猶予してもらった、という方も多いのではないでしょうか。

国民年金の支払金額は社会保険控除の対象となるので、資金に余裕があるうちに、この猶予された国民年金の支払いまとめて支払っておくと、節税になります。また、2年分の前納制度もありますでの、こちらもまとめて先の2年分支払っておくと、節税になることがあります。

税金や法律、制度を理解して上手に付き合うのも、個人事業主としての大切なスキルです。まずは今回解説したポイントをしっかりおさえていきましょう!

<プロフィール>
齋藤雄史さん
税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。

高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。

合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。

ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。

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