人を褒める。
「褒められて伸びるタイプ」というフレーズをよく耳にしますが、実際に「褒める」といってもなかなか難しいですよね。
独立に役立つ心理学、今回心理学者の内藤先生に伺ったのは「褒め方」。
「褒められて伸びる」というのは、心理学的に裏付けされた事実であると、内藤先生は語ります。
今回は褒めることが心理学的になぜ効果があるのかを解説していただくとともに、効果の高い褒め方、逆効果になってしまう褒め方、そして人が必ず喜ぶ、極上の褒め方をご紹介します。
褒められて伸びない人はいない? 褒めることの重要性
今回のテーマである「褒め方」。
教育心理学はもちろん、ビジネス心理学やリーダーシップなど、心理学の世界でもさまざまな領域で褒めることの重要性について研究がなされてきました。
ノースキャロライナ大学のドーソン・ハンコック先生が行った実験をご紹介しましょう。
ハンコック先生は、実験参加者を2つのグループに分け、リーダーシップトレーニングと称して実験を行いました。
実験内容は、片方のグループのトレーナーは積極的に実験参加者たちを褒め、もう片方のグループのトレーナーは実験参加者たちを一切褒めない、というものです。
トレーニングが終わったところで、参加者には自宅で好きなだけやってよい課題が与えられました。
ところが、トレーニング中に褒められたグループは平均46.8分も課題に取り組んだのに、褒められなかったグループでは、平均34.7分しか取り組まなかったのです。
褒められればそれだけ嬉しく、平均12分も多く課題に取り組んでくれたのですね。
効果的な褒め方は評価基準を明確にして、行動したら即褒める
以上の実験からもわかる通り、褒めることは人のやる気を引き出します。
また有名な「ピグマリオン効果」(教育心理学における心理行動の1つで、教師の期待によって学習者の成績が向上すること。教師期待効果とも)にもあるように、褒めることはやる気だけでなく試験の結果の向上にも繋がります。
【褒めることによるメリット】
・やる気を引き出し、行動量が増える
・期待に応えようと、成果が高くなる
褒めることには、上記2つのメリットがあります。しかし、褒め方が悪いと、褒めることのメリットを最大限に活かせません。
より大きな効果をもたらす褒め方についても解説していくので、ぜひ実践してみましょう。
先程の実験を行ったハンコック先生は、褒め方には二つのルールがあることを明らかにしました。
【褒めの効果を最大化する褒め方のルール】
1.行動を起こした直後に褒める
2.事前に評価基準を伝えておく
一つ目は、相手が何か行動を起こした直後に褒めること。
時間が経ってから人に褒められても、やる気や結果を引き出しにくくなってしまいます。
例えば、1ヵ月前に上司に同行してもらった商談のことを「あの商談の〇〇という言い回しが良かった」と褒められても、自分が何を言ったのか忘れているでしょうし、実感も薄いですよね。
もう一つは、何をしたら褒めてもらえるか(評価基準)を、予め相手に伝えておくこと。
評価基準を事前に相手に伝えておくことは、極めて重要です。例えば、野球部の試合で「見逃し三振だけはするな!」と監督が言ったとしましょう。
たとえ空振り三振になってしまっても、見逃しをすることなくちゃんとバットを振ったなら「良いスイングだった!」と、評価基準に沿って褒めてあげる。つまり、評価基準をクリアしようと、行動したこと自体を褒めてあげるのです。
この2点をおさえた上で褒めると、より効果的なやる気や結果を引き出すことができます。
【極上の褒め方】安直な「褒め」は皮肉や嫌味に捉えられることも
では、逆効果になってしまう褒め方について解説しましょう。
逆効果になる褒め方とは、みんなが褒めるようなポイントを挙げて褒めること。やる気を引き出すどころか、皮肉や嫌味と捉えられ、相手のやる気を削いでしまうこともあります。
きれいな人に対して「君はきれいだね」と言っても、そもそも言われ慣れているので、心に響きません。自分では本心で褒めているつもりでも、相手からすると嫌味として捉えられてしまうことも。
また、性別の違いでも受け取られ方は異なるので、注意が必要です。相手の性別によって、褒め方を変えなければなりません。
褒められたとき、男性は比較的素直に受け取るのですが、女性は皮肉と感じるケースも多いです。
褒めたとき、相手の顔に一瞬「嫌悪」の表情(臭いものを嗅いだときの表情)が見えたら、すかさずフォローを入れてください。
皮肉や嫌味に捉えられないよう褒めるには、具体的なレベルにまできちんと落とし込んでから褒めると良いでしょう。
特に、女性を褒めるときは、下記のようにより具体的な褒め方をすることをおすすめします。
「いつも積極的な営業ですごいね」ではなく「たとえ断られても、諦めずに100回でも商談をしにいこうとする心構えがすごい」
「◯◯さんにはリーダーシップがある」ではなく「◯◯さんは10人もの部下を同時にマネジメントして、活躍させていてすごい」など、具体的な数字や事実をベースに褒めると、相手の心に響く褒め方ができます。
効果的な褒め方を駆使して、より円滑な人間関係を築いていきましょう。
心理学者。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。
大学院在学中より専門の心理学を活かした執筆活動を開始し、卒業後に有限会社アンギルドを設立。
ビジネス心理学を実践的に応用するアドバイスには定評がある。
新刊に、「リーダーのための「孫子の兵法」超入門(水王舎)
「身近にあふれる「男と女の心理学」が3時間でわかる本」(明日香出版)など。
講演会・セミナーの依頼は、システムブレーンまで。
システムブレーン(講演・セミナー情報問い合わせ先)
http://www.sbrain.co.jp/